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ゴミ箱に転生した俺、世界を食って最強になる  作者: haruz
第6章:崩れゆく世界の理
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第40話:先にいた者

誰かが先に通った道は、安全とは限らない。

むしろ、その先に何があるかを知っているからこそ、戻ってくる者もいる。

進むことと、留まること。

どちらが正しいかは、最後まで分からない。

崩壊した街の外れ。

辛うじて形を保っている場所で、三人は立ち止まっていた。

さっきまでの戦闘の余韻は、まだ空気に残っている。

だが、それ以上に――

違うものがあった。

静けさ。

重い沈黙。

リナは言葉を探していたが、結局何も言えずにいる。

アッシュは空を見ている。

裂けた空の向こう。

“さらに上”。

もう、ぼやけていない。

はっきりと“道”のようなものが見えている。

「……行けるな」

ぽつりと呟く。

ゼルはその言葉に、少しだけ反応する。

「見えているのか」

「ああ」

アッシュは視線を外さない。

「最初からあったみたいに見える」

その言葉に、ゼルはわずかに目を細める。

「……そうか」

短い返事。

だが、その中に何かが含まれている。

リナが恐る恐る口を開く。

「ゼルさん……」

ゼルは視線を向ける。

「なんだ」

「さっきの……アッシュさんの状態……」

言葉に詰まる。

うまく表現できない。

「……あれ、普通じゃないですよね……?」

ゼルは少しだけ沈黙する。

そして――

「ああ」

はっきりと肯定する。

「普通ではない」

アッシュが笑う。

「今さらだろ」

だが、ゼルは続ける。

「だが、お前はまだ“途中”だ」

アッシュの目がわずかに細くなる。

「……どういう意味だ」

ゼルはゆっくりと言う。

「俺も、そこを通った」

空気が止まる。

リナが息を呑む。

「え……?」

アッシュはゼルを見る。

「お前……」

ゼルは淡々と続ける。

「位置を捨て、境界を曖昧にし、外側に触れる」

「同じ段階だ」

アッシュはしばらく何も言わない。

そして――

「……じゃあ、なんでお前は戻ってる」

その一言。

ゼルは少しだけ視線を逸らす。

ほんの一瞬。

だが確実に。

「戻ったわけじゃない」

低い声。

「止まっただけだ」

リナが首を振る。

「意味が……」

ゼルは続ける。

「進みすぎれば、“内側”に干渉できなくなる」

「だから、そこで止めた」

アッシュは眉をひそめる。

「……それが正解だったのか?」

ゼルは答えない。

代わりに、アッシュを見る。

その目はいつもと同じはずなのに――

どこか、違う。

「お前はどうする」

静かな問い。

アッシュは少し考える。

そして――

笑う。

「決まってるだろ」

空を見る。

“上”を。

「行けるなら行く」

ゼルは目を閉じる。

小さく息を吐く。

「……そうか」

リナが慌てて言う。

「待ってください!」

二人の間に入る。

「そんな簡単に……!」

声が震える。

「戻れなくなるかもしれないんですよ……!?」

アッシュは少しだけ視線を落とす。

リナを見る。

そして――

「もう半分戻れてねぇだろ」

軽く笑う。

その言葉に、リナは言葉を失う。

確かに。

さっきの戦い。

あれはもう、“普通”じゃなかった。

ゼルが言う。

「完全に進めば、“こちら側”には干渉できなくなる」

「存在の階層が変わる」

アッシュは肩を回す。

「いいじゃねぇか」

「その方が話早い」

ゼルは首を振る。

「単純な話じゃない」

一歩近づく。

「上に行けば行くほど、“個”が薄れる」

「自分という形を保てなくなる」

その言葉は重い。

リナが小さく言う。

「じゃあ……最後には……」

ゼルは言う。

「何も残らない可能性もある」

空気が止まる。

アッシュはしばらく黙る。

そして――

笑う。

「それでもいい」

迷いがない。

ゼルの目がわずかに細くなる。

「……本気か」

「当たり前だ」

アッシュは前を見る。

「ここまで来て止まる方が無理だろ」

ゼルはしばらく何も言わない。

やがて――

小さく頷く。

「……なら、止めない」

リナが叫ぶ。

「ゼルさん!?」

ゼルはリナを見る。

「止めても意味がない」

そしてアッシュに視線を戻す。

「ただし――」

少しだけ間を置く。

「選べ」

その一言。

アッシュが眉をひそめる。

「何をだ」

ゼルは言う。

「“何を残すか”だ」

その言葉の意味は、すぐには分からない。

だが――

重要なことだけは分かる。

アッシュは少しだけ考える。

リナを見る。

崩れかけた街を見る。

そして――

空を見る。

「……考えとく」

短く答える。

ゼルは頷く。

「それでいい」

風が吹く。

崩れかけた世界の中で。

三人は、次へ進む。

それぞれの選択を抱えたまま。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

今回はゼルの立ち位置と過去の一端を明らかにし、主人公との対比構造を強める回となりました。

特に「進みすぎれば戻れない」という要素と、「何を残すか」という選択が、今後の物語の核となっていきます。

物語はここから最終局面へと近づき、主人公の選択が世界そのものに影響を与える段階へと進んでいきます。

引き続きお楽しみいただければ幸いです。

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