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日本を未来へと導く者 ~陸上自衛官、江戸に立つ  作者: はぐれ火星人
徳川家宣政権…翔馬、伸び伸びとやりたい放題する

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アイヌモシリと北方四島・千島

ピリカレラを江戸に送り、そのままの足で翔馬はモシリへ戻る。

やる事が多すぎてオーバーワーク気味であるが、気分は悪くない。

特別なことを成し遂げているという充足感で溢れている。半月~一カ月ほどの間隔で江戸とモシリを往復する。


苫小牧を中心とした「モシリ十五支庁構想」は、翔馬が最初に本格的な地方行政区画として打ち出したものだった。

21世紀の14振興局にプラスひとつしているのは、北方四島にも支庁を置くためだ。


役場と公正取引市場をそれぞれに置き、漁・林・農・商の流通を公正に管理する。幕府の新たな支配というより、「共存のための約束」を形にしたものに近かった。


支庁の立地を決めるにあたり、翔馬は幕府役人の地理調査報告をひとつひとつ広げた。

船が接岸しやすく、アイヌのコタン(村落)にも近い場所を探すと、自然と二百年後に「都市」として知られる町の名前が浮かび上がってくる。


「街が発展する立地は地理的に決まってるんだな…」

地図を指でなぞり、思いにふける。

函館の砂嘴立地を北上すると、噴火湾がある。そこを越えると霧の多い室蘭の断崖があり、さらに東へ行けば厚岸の湿原と冷たい潮流が交わる。

北は、広大な原野と低い丘陵が続く。旭川にあたるカムイコタンは神の住む渓谷と呼ばれ、春になれば氷が割れ、川は雷鳴のような音を立てて流れ出す。


だが、いまのモシリには都市など存在せず、あるのは点々とした、百人にも満たぬ人々の営みだけだった。


翔馬はその地図を指でなぞりながら、北東の海原に目をやる。

北方四島…松前藩時代には直接の支配地ではなかったが、交易という名の搾取が行われていた。


実際には、道東のアイヌを仲介に物資を取り立て、人質を差し出させることで服従させていたのだ。

史実では、この80年後ほどに、国後島クナシリを舞台に大反乱がおき、島に在住していた交易所の和人71人が皆殺しにされ、鎮圧には他の藩も巻き込み、結果村の住民も30人以上が死刑になった。


謀反に使用された武器はルーシからの流れ物を含み、明らかに北方の策謀を感じる。

それほどの抑圧の中に置かれていた土地で、早期のうちに引き入れないと北方から来るルーシ人にも影響されるのは目に見えている。


幕府の役人が現地から戻ってきて語った言葉は重い。

「松前藩がなくなったと知って、島の人々は大喜びでした。しかし、幕府の支配は望まないと……彼らは“もっと酷くなる”と怯えていました。」


苫小牧の港では、港湾工事が急ピッチで進められている。

造成で出た土砂を運び、砂浜を埋め立て、いずれは大型船を繋げる港湾都市を築こうとしている。


だが翔馬の視線は、さらに北…霧の海の果てへと向けられていた。

カムチャックカ半島(今のカムチャツカ)南端。そこから南下するルーシ人が、まもなく千島列島を「発見」し、領土を主張することを彼は知っていた。

1711年。来年の夏だ。


その前に、最北の占守島シュムシュを含む島々を、アイヌの自発的な意思として「日本の仲間」として迎え入れねばならない。

それが今回の渡モシリの真の目的だった。


翔馬は二日ほど苫小牧に滞在し、国後担当の役人を伴って船に乗り込む。

港を離れると、背後に新築されたばかりの議事堂の屋根が、秋の光を反射して白く輝いていた

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