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日本を未来へと導く者 ~陸上自衛官、江戸に立つ  作者: はぐれ火星人
徳川家宣政権…翔馬、伸び伸びとやりたい放題する

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ルーシのチュクチ拠点 アナディルスク砦攻略

アナディル川を遡り始めてから、すでに十二時間が過ぎていた。川幅は広く、水量も十分ではあるが、蛇行の多い川筋は、まるで巨大な蛇が横たわっているようで、前に進んでいるのに、さっきすれ違った景色がまた見えてくる。

船団はカーブで減速し、加速の遅い貨物船の速度に合わせ、一向に速度を上げられない。…普段のウォータージェットからすれば、まるで散歩のような遅さだ。


「アイヴァン、このあたりに村があると聞いたのだが、知らぬか?」

「俺は村から出たことないが、仲間が言うには、大きな川との合流のところに村があるという。ちなみに今半分くらいだな。あと半日はかかるはずだ…」


遠くには、果てしなく続くツンドラとタイガの森。北風が吹くたび、船首は軽く揺れ、初夏だというのに肌に刺すような冷気が吹き込む。彼らは途中、その小さなチュクチの集落に立ち寄った。


火を囲む集落の人々に、アイヴァンはゆっくりと言葉を伝える。

「これから、アナディルスクの砦を潰しに行く。ルーシの支配は終わる。これからは、日本が我らチュクチの後ろ盾になる。」


老人たちは長い沈黙のあと、小さく頷いた。

「日本というのか…どうせルーシよりは良かろう。お前は日本人の娘を嫁にしたのだろう? ならば、その国は悪い国ではあるまい。わしは、孫が人質として取られ、悔しい思いをしておる。もし孫と会うことがあれば、どうか、連れてきてはくれぬか… 名前はクウル。歳は20前後の娘じゃ。」


アイヴァンは朗らかに笑った。

「ああ、わかった。話を広めてくれ。これから変わるチュクチの未来のために。」


その日は村に野営させてもらい、翌日の朝、まだ薄暗い頃に出航する。

船を出す時、集落の若者たちが飛び出てきて、焚き火の灯りに照らされながらいつまでも手を振っていた。


低い太陽の光が傾くころ、アナディルスク砦が視界に入った。

以前カムチャツカで見た砦と似ていた。粗く組まれた木柵、無骨な櫓、周囲に乱雑に散らばる物資置き場。

だが、そこに百名以上の兵がいるとなれば、正面突破などは論外だ。


川幅は十分に広い。攻撃艇が川面を行き交い、ぐるぐると円を描くように巡回する。いわば水上の封鎖線。

その背後…陸地には、四百名の兵士がすでに展開し、半包囲を築いていた。

迫撃砲班が三ヶ所に分散、狙撃班は周囲の高所を占拠、チュクチ戦士二百名が伏点についた。

完全包囲。


「逃がす気はないよ…」

アイヴァンは静かに息を吐いた。


まるで牙をむく巨大な蜘蛛が、巣の中心に獲物を追い込んだようだった。


砦から数名が様子見で姿を現した。小銃を抱えたコサック兵たちが、見たことのない船を目を丸くして眺めている。


翔馬は拡声器を握りしめ、怒声を放つ。

「ルーシの野蛮人の皆さん! ここはチュクチ人の土地だ。彼らは正式に日本への併合を決めた。よって、ここは日本の領土となる!不法占拠は許されない。すぐに投降せよ」


兵たちが動きを止める。

「ここへは警告に来たんじゃない。君たちを駆除に来たんだ。死にたくなきゃ武器を捨てて外へ出ろってことだ。二度は言わない!」


砦から十数名が小銃を抱え外へ出てくる。

その数名が、挑発するように銃口をこちらへ向けた。

「ルーシの残念な方々。それが答えか。なら…みなさん、地獄へどうぞ。」


三隻の攻撃艇が一斉に火を噴いた。

12.7ミリ機関砲の火花が雨のように降り注ぎ、外にいた兵士たちは、次の瞬間には逃げる間もなくひき肉となって飛散した。

砦の外壁には、迫撃砲弾が連続して落ちる。


ドォォォンッ!

ドガァァァンッ!


木柵は爆発で粉砕され、立ち上る黒煙にまぎれて悲鳴があがる。火災が走り、砦は混乱の中にある。チュクチ人の人質や無理やり連れてこられた者達がいるため、砦内への直接砲撃は避ける。


チュクチ戦士たちが伏点から立ち上がり、飛び出す兵を弓矢で仕留めていく。銃を撃とうとする者は、日本兵が狙撃で沈める。


ほんの数分の出来事だった。


砦は、一気に制圧され、50名ほどが投降し、敵対するものは躊躇なく排除された。

砦の中には、多数の人質もおり、その中に先の村で聞いていた「クウル」もいた。


アイヴァン「君がクウルか。お前の爺さんから託されてよ。これで無事に村に帰れるから安心しろよ」

クウルの後ろには、母親に隠れるように小さな混血の子が五人もしがみついている。


「全部お前の子なのか?」


喜びに涙を流しながら彼女は答える。

「いいえ、私は十二の頃に連れてこられ、ここで三人を生みました。この子ら三人が我が子。こちらのふたりは、友達の子です。彼女はもう亡くなりましたが…私が母代わりに育てています。」


年頃の娘を連れてきては、次から次へと子を産ませ、その混血児に言葉や文化を教え、通訳や文化侵略の駒として利用している。

二十歳の子が、六歳くらいの子を連れている…この意味を知った時、翔馬は腹の底から怒りがこみ上がってきた。


翔馬は息をつき、記録係に振り返る。

「おい記録、一瞬たりとも逃すなよ。これが歴史のひとコマだ。」


この砦から十キロ先には、さらにもう一つの入植地…マルコヴォがある。

船団は進路を変え、再び川を遡る。


マルコヴォは、防御砦と言うよりは、集めたヤサク(毛皮)を管理する倉庫としての役割が充てられているようだ。戦闘員は少なく、役人が多く含まれる。

でも、同じ包囲戦が展開された。こちらは幸いにも最初の威嚇射撃でほぼ無傷で全員が投降し、そのまま砦はチュクチ人のものとなる。

翔馬は二つの砦に、それぞれ日本人とチュクチ人を残し、輸送船に乗っている資材と大量の食料、捕虜の管理設備を置いた。


この展開を見越して、河川貨物船には拠点づくりセット(砦バージョン)が積まれていた。

隊員らは、手慣れた手順で、川砂を集め生コンを練り、基礎を作りあげていく。


牢屋は、絶対に逃げられない作りにし、採光のための、はめガラスの小窓だけつけた。窓が大きすぎても寒いから、せめてもの優しさだ。

扉は分厚い多層構造の風除室つき二重扉。外気は遮断できるはずだ。

一応は、暖房の配管まで通してあげる。


3日ほどで生コンがほぼ固まったので、その上に手際よく砦建物、石炭庫、食料保存庫も設置し、大型の暖炉を2台備え付ける。暖気の配管は建物内を巡回し、家全体を温める仕組みだ。


この地は、冬になるとマイナス50度という途方もない寒さに襲われる極寒の地だ。夏を迎えた今でも、江戸の真冬のように寒い。


それなりの快適さを与えるのは義務であろう。あと、忘れちゃいけないのが、氷を切り出す道具と屋内の水タンクだ。すべてが凍り付くと、水に戻すのには相当なエネルギーが必要になる。アバチャで嫌と言うほど思い知らされた。


川が凍りだす秋前には、交代要員と補給を送る。あと、新たな捕虜の回収と。


「制圧前に各地に毛皮の徴収に出かけたルーシ人は、まだ帰ってきていない。3組だ。彼らを絶対に生きて返すな。」

そう言いながら、翔馬は砦の入り口に看板を書いている。見慣れないルーシの言葉で。

「おかえりなさい!同士よ。マルコヴォ・ホイホイ砦」

看板には、下手くそな女の絵とウォッカの瓶のコミカルな絵を描いた。


新規で西から来る者、採取から戻る者… 一変した光景に驚くだろうが、ルーシ語の看板を見て安心して寄ってくるだろう。ホイホイの罠はこれでOKっと。


砦が完成するまでのしばらくの間に、さらに上流の航続距離が足りる村へは人質を返したが、話を聞くと、人質は数百キロもの山を越えた場所だったり、もっと西のサカとの境界からだったり、現状、物理的に行けない場所が多かった。

砦で生まれ育ち、行先の無い混血成人もかなりいる。


彼女らは、ひとまずアナディルの町に連れ帰り、今後のことはそれから練ろう。


ーーー


「あぁ、みんな行っちまったよ…」

船の乗員は、残される彼らに精一杯手を振る。


この戦いにより、ルーシ人は東チュクチから一掃されただけではなく、カムチャッカの太平洋岸すべてで勢力を失った。このことは、まだ本国には知られていないであろう。なぜなら、知るもの全員を監禁、もしくは殺害したからだ。

知られたところで、シベリアの中心拠点イルクーツクまでは1年はかかる。

翔馬は次の青図を描き、既に頭は次の展開へと駒を進めていた。


アナディルの空は澄み渡り、氷の風があたりを吹き抜ける。

チュクチの地は、長き支配者を失い、静かに新しい時代を迎えようとしていた。

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