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日本を未来へと導く者 ~陸上自衛官、江戸に立つ  作者: はぐれ火星人
徳川家宣政権…翔馬、伸び伸びとやりたい放題する

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チュクチへの道

モシリで半ば放置していたアイヴァン一行を訪ねたのは、春の気配が濃くなった頃だった。

驚いたことに、彼らはすっかり日本語を身につけ、片言どころか十分に意思疎通できるレベルに達していた。アイヌの子どもたちが通う日本語学校に入学し、毎日「ア、イ、ウ、エ、オ」からやっていたらしい。


モシリの生活がよほど楽しかったのだろう。身も心もすっかり日本仕様になっていた。服装も今風のアイヌ文様入り和服に、襟元はチュクチの毛皮のモフモフ付き。知らない人が見たら「ちょっと変わった日本人」くらいにしか見えない。

(なかなかカッコいいなぁ。毛皮のこんな使い道もありだな…)


そして極めつけに…世話係の娘と恋仲になっていた。

(……お父さん(村長)が見たら卒倒するんじゃないか?)

翔馬はそんな想像をしながら声をかけた。


「やあ、アイヴァン。久しぶりだな。しばらく見ないうちに日本に染まっちまって…(笑)」


「ショーマさん。おいら、この国が天国みたいに感じてさ……正直、ずっとここにいたい気持ちもある。でも、それじゃ駄目なんだよな。親父には言いたいこと、ぜんぶまとめてある。国に帰って話すよ。あ、でも……この子は、一緒に連れて帰ってもいいかな? ふたりで話し合って決めたことなんだ」


その娘…えつは、東北の寒村で飢饉の際に親を亡くし、他の村人と共にモシリへ流れ着いた少女だった。アイヴァンの国へ嫁ぎたい、と目を輝かせている。


「俺にふたりの仲を裂く権力も資格もないさ。好きにしろ。ただし……親父さんに報告するときは覚悟しとけよ。国が滅びかけてる時に何してた!って槍持って追いかけ回されるかもしれんぞ」


「ひえっ……!」

ふたりは息をそろえて深々と頭を下げた。


所用を済ませ、モシリ議会にも顔を出し、氷が解け始める5月に入ると、翔馬はチュクチへ向けて出発した。今回も単艦航行だが、アバチャには新造艦が試験航海として寄港していた。その艦と合流し、ついでに“ホイホイ砦”へ立ち寄る。


名のとおり、ホイホイのようにルーシ人が捕まる砦だ。昨夏に探検隊を殲滅して以降、時々小グループが来ては、こちらに“吸い込まれる”ように捕縛されていった。秋には「さすがにおかしい」と思ったのか、二十名ほどの船団が来たが、そのほとんどがホイホイ。逃げ延びた者はなし。

冬には松明の灯りすらほぼゼロで、砦は空っぽ同然。まさに絶好の狩場だったがもう弾切れのようだ。そろそろカムチャッカ砦を制圧しようかね。

ここを制圧したら、半島からひとまずルーシを9割がた排除したと言ってもいい。


「アイヴァン、ルーシの砦、ひとつぶっ壊すからな。よく見とけよ」

ウォータージェット艇と新造艦に隊員が乗り込み、砦の正面に陣取る。


翔馬は拡声器を使って宣告した。

「あー、あー、ルーシ国の諸君、君たちは日本の領土を侵害している。すぐに武装解除して出てこい。1分待つ。出てこなければ…残念ながら君たちは天に召される。」


木の塀で中は見えないが、何やら叫ぶ声は聞こえる。隊員は遠巻きに包囲を固め、翔馬は静かにカウントダウンを始めた。

「3、2、1…撃て!」


新造駆逐艦が唸りを上げ、76ミリ速射榴弾砲を連射。木柵は一瞬にして粉砕され、火の海と化した。


防御柵は簡単に焼け落ち、丸裸になった砦から、数名のルーシ人がよろよろと姿を見せた。白旗代わりに両手を挙げて。彼らを捕虜として拘束し、生存者の確認を徹底する。

砦の内部には、現地で誘拐した女性や、その混血児、有力者の人質など、が身を固めて縮こまっている。


翔馬はアイヴァンの肩をぽんと叩いた。


「いいか、アイヴァン。ルーシにはこうやって対応するんだ。よーく、目に焼き付けとけ」

「…………はい」

アイヴァンは真っ青になっていた。


“日本と敵対するなんて、絶対にやってはいけない”

その事実を、骨の髄まで思い知らされた顔だった。


カムチャッカ砦を掃討した後、人質を村へ送り届けるためにウォータージェット艇で川を遡上する。

内陸にも小さな砦があり、制圧するまでに一時間とかからなかった。去年からの下準備を考えれば当然なのだが、あまりの呆気のなさに翔馬は逆に困っていた。

(……これじゃアピールにならんのだよなぁ)


一年ほどで国軍を正式に布告する。その大義名分として「北方で侵略してくるルーシと命懸けで戦っている」姿を示す必要がある。

しかし、敵が弱すぎて素材にならない。困ったものだ。


「……もう、やるしかないよな」

翔馬は記録係に指示した。


「写真、撮りまくれ。捕虜に演技させろ。“侵略者を撃退する日本軍”って構図を…大量にだ」

破壊した砦を背景に、村人が喜ぶ写真も撮らせた。完全な演出だが、国のためには仕方がない。隊員には厳しいかん口令を敷いた。


「もし、漏らそうものなら…」

列を組む隊員は、真顔でブルブルと顔を振る。

そうして寄り道しながら二週間。氷がすっかり消えた5月も中盤を過ぎた頃、ようやくアナディルに到着した。


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