04.5 証拠隠滅-1
「ふざけてんじゃないですか!?」
「これしか方法ないんだってば!」
ああ、なぜ自分が校舎の壁に張り付くことになっているのだろうか。叙は固く決意した。この奏音のとんでもない無茶振りを、絶対に愉愛に伝えると。
そもそもどうして、この人と二人きりでこんなことをしているのか。今から一時間ほど前に遡る。
「………………」
「……愉愛先輩?」
背負っている愉愛が急に静かになる。
「うわっ!?こいつ気絶してる!」
奏音は白目を剥いた愉愛の顔を見て驚く。
「し、死んでないですよね!?」
奏音が素早く容態を確認する。
「脈はある。呼吸も正常……。でも、これは素人判断に任せたら駄目だ。とにかく病院に連れて行かないと……!!」
テイザーガンや煙幕弾の入ったリュックを一旦奏音へ渡し、愉愛を背負ったまま素早く梯子を下りる。なるべく揺らさないように、且つ最速で走る。
「先生!!救急車呼んで!!!」
愉愛を背中から下ろして床に寝かせる。力が全く入っていない。先ほどとは違い、瞼が閉じ切っている。顔がどんどん青くなっていく。それと対照的に頭からは赤い血がどくどくと流れている。
「もう呼んでるに決まってるだろ!!!」
叙の叫びに教師が語気を荒くして応える。
「お前らどけ!速くどけ!!!」「先輩!!!」
「月下!」「タオルと氷持って来い!」
「無茶しやがってよ……!」「顔色ヤベーって!」
「持って来たぞ!早く圧迫しろ!」「愉愛!返事しろ!」
そこら中から人が駆け寄って来る。愉愛のクラスメイトや友人と思われる生徒たちが必死で呼びかけ、先生が行っている応急処置を手伝っている。
それを見届けた叙は、ようやく梯子から下りて来た奏音のもとへ駆け寄る。
「はぁーっ……はぁーーっ……」
「先輩?」
「ひゅっ……あっ……ああっ…………」
様子がおかしい。
「……また……?…………僕が……のせいで……愉愛…………?」
「先輩」
明らかに支離滅裂な言葉を口にしている。目の焦点が定まっていない。まるで狂気に呑まれているかのようだ。
「……あ…………頭……が……何……これ…………?」
頭を押さえて苦しそうにしゃがみ込む。これ以上はまずいと叙の直感が告げて来る。
「……奏音先輩っ!!!」
「……?……あっ」
叙の呼びかけに奏音はようやく気がついたようだ。
「……僕、何してた……?」
「なんかすごく変でした。戻って来たみたいでよかったです」
「…………ごめんね」
異常なほどに取り乱していたからだろうか、叙は奏音が素直に謝罪の言葉を口にして来たことに少し驚いた。
「そんなことより!やらなきゃいけないことがあるでしょ!!」
「うん。とりあえず、場が混乱している間に電極針と監視カメラの回収を終わらせよう」
「了解っす!」




