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甘譚の喩愛  作者: 手嶋田 過完
私立四十九院大学附属高等学校襲撃事件

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5/9

04.5 証拠隠滅-1

「ふざけてんじゃないですか!?」

「これしか方法ないんだってば!」

ああ、なぜ自分が校舎の壁に張り付くことになっているのだろうか。(のべる)は固く決意した。この奏音(そうと)のとんでもない無茶振りを、絶対に愉愛(ゆめ)に伝えると。






そもそもどうして、この人と二人きりでこんなことをしているのか。今から一時間ほど前に遡る。

「………………」

「……愉愛(ゆめ)先輩?」

背負っている愉愛(ゆめ)が急に静かになる。

「うわっ!?こいつ気絶してる!」

奏音(そうと)は白目を剥いた愉愛(ゆめ)の顔を見て驚く。

「し、死んでないですよね!?」

奏音(そうと)が素早く容態を確認する。

「脈はある。呼吸も正常……。でも、これは素人判断に任せたら駄目だ。とにかく病院に連れて行かないと……!!」

テイザーガンや煙幕弾の入ったリュックを一旦奏音(そうと)へ渡し、愉愛(ゆめ)を背負ったまま素早く梯子を下りる。なるべく揺らさないように、且つ最速で走る。


「先生!!救急車呼んで!!!」

愉愛(ゆめ)を背中から下ろして床に寝かせる。力が全く入っていない。先ほどとは違い、瞼が閉じ切っている。顔がどんどん青くなっていく。それと対照的に頭からは赤い血がどくどくと流れている。

「もう呼んでるに決まってるだろ!!!」

(のべる)の叫びに教師が語気を荒くして応える。


「お前らどけ!速くどけ!!!」「先輩!!!」

月下(つきした)!」「タオルと氷持って来い!」

「無茶しやがってよ……!」「顔色ヤベーって!」

「持って来たぞ!早く圧迫しろ!」「愉愛(ゆめ)!返事しろ!」

そこら中から人が駆け寄って来る。愉愛(ゆめ)のクラスメイトや友人と思われる生徒たちが必死で呼びかけ、先生が行っている応急処置を手伝っている。


それを見届けた(のべる)は、ようやく梯子から下りて来た奏音(そうと)のもとへ駆け寄る。

「はぁーっ……はぁーーっ……」

「先輩?」

「ひゅっ……あっ……ああっ…………」

様子がおかしい。


「……また……?…………僕が……のせいで……愉愛(ゆめ)…………?」

「先輩」

明らかに支離滅裂な言葉を口にしている。目の焦点が定まっていない。まるで狂気に呑まれているかのようだ。


「……あ…………頭……が……何……これ…………?」

頭を押さえて苦しそうにしゃがみ込む。これ以上はまずいと(のべる)の直感が告げて来る。


「……奏音(そうと)先輩っ!!!」

「……?……あっ」

(のべる)の呼びかけに奏音(そうと)はようやく気がついたようだ。

「……僕、何してた……?」

「なんかすごく変でした。戻って来たみたいでよかったです」

「…………ごめんね」

異常なほどに取り乱していたからだろうか、(のべる)奏音(そうと)が素直に謝罪の言葉を口にして来たことに少し驚いた。


「そんなことより!やらなきゃいけないことがあるでしょ!!」

「うん。とりあえず、場が混乱している間に電極針と監視カメラの回収を終わらせよう」

「了解っす!」

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