第34話 「見学席の無能と、歪む空間」
さて。
私は現在――
堂々と、見学席にいる。
なぜか?
簡単だ。
「セイラ・アシュラは光属性のみ。実技は見学とする」
教官の一言で終了である。
はい、出ました。
いつものやつ。
光属性=照明係。
魔力少=戦力外。
加護なし=無能。
三拍子そろった私は、本日もベンチ要員だ。
「ほら見ろよ、英雄様」
「ダンジョンは偶然だったんじゃないの?」
「光しか使えないもんなぁ」
くすくす笑い。
……うん、慣れてる。
慣れてるけど、地味に刺さる。
(別にいいけどさ)
本気出すと、色々バレるし。
ちらりと視線を向けると、
少し離れた場所に王子殿下とその側近組。
カイン殿下は、眉をわずかに寄せている。
(あ、あれ絶対「よくない」と思ってる顔だ)
でも、何も言わない。
言えない、が正解か。
皇太子が一生徒の陰口に口出ししたら、
それはそれで政治案件になる。
(大変だね、王子も)
「では、基礎魔法の発動確認を――」
教官が杖を掲げる。
火、水、土、風。
次々と魔法が発動する。
「はい、次!」
――その瞬間。
空間が、歪んだ。
「……っ!」
空気が重くなる。
地面に、広がる魔法陣。
それは明らかに、
見覚えのある“禍々しさ”。
(またか)
「魔族だ!!」
悲鳴が上がる。
陣形は崩れ、
訓練場は一瞬で混乱状態。
そして――
誰かが叫んだ。
「ユリアンが手引きしたんだ!!」
空気が、凍る。
視線が、一斉にユリアンちゃんへ向いた。
「違っ……!」
必死に否定する声。
でも、混乱の中では
真実よりも“疑い”の方が強い。
(……最低)
私は、立ち上がる。
教官は結界展開に必死。
王子たちは動けずにいる。
魔法陣の中心から、
ゆっくりと姿を現す影。
「……来る」
私は、前に出た。
見学席の“無能”は、
そこで終わりだ。




