第29話 「想定外の判断、そして光が走る」
ウォーウルフの死骸が、第二層の床に転がっていた。
「……倒した、が」
カイン殿下は剣を下ろさず、周囲を警戒している。
「第二層のボスはハイコボルトのはずだ。
それを超える魔物が、しかも群れで出た」
ランスロット様が静かに言った。
「撤退も選択肢だな」
その言葉に、講師の説明が脳裏をよぎる。
異変を感じたら撤退せよ。
――だが。
「待ってください」
私の声に、全員の視線が集まった。
「まだ、来ます」
理由は分からない。
けれど、光属性の魔力が、警鐘のようにざわめいている。
その直後だった。
「グルルルルル……!」
通路の奥から、複数の咆哮。
「来るぞ! しかも――数が多い!」
現れたのは、さっきとは比べ物にならない数のウォーウルフ。
「前衛が足りない!」
ディノス様が盾を構えるが、数が多すぎる。
(……私が行くしかない)
気づいたときには、私は前に出ていた。
「セイラ様!?」
ユリアンちゃんの声が背中に飛ぶ。
「大丈夫!」
剣を抜く。
身体が、驚くほど軽い。
ウォーウルフが跳ぶ。
私は踏み込み、一閃。
首が落ちる。
二体目、三体目。
避けて、切って、蹴って、また切る。
「……速い」
カイン殿下が目を見開く。
加護はない。
魔法も光属性だけ。
――だけど。
(身体能力は、私のものだ)
まるで踊るように、
ウォーウルフをバッタバッタとなぎ倒していく。
最後の一体を切り伏せた瞬間、
床が、低く唸った。




