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第27話 「潰されたメンツとゆがんだ策謀」
イチビリッチ侯爵邸の一室では、怒号が飛び交っていた。
「ふざけるなぁぁっ!!」
机を叩き割る勢いで叫ぶ、プーチンチン。
その横には、同じく顔を歪めたブリスベン子爵令息アライドの姿。
「決闘で負けただけならまだしも……あの女、皇太子殿下に目をかけられているだと?」
「このままでは、我々が“悪”に見える……!」
沈黙ののち、プーチンチンが口元を歪めた。
「次の校外学習だ。郊外での魔物討伐……事故は、起こりうる」
「しかし、危険な魔物はいないと再調査で……」
「だからこそだ」
低い声で言い切る。
「“想定外”が起きればいい。
その責任を、誰かに押し付けられればな」
二人の視線は、同時に一人の名へと向いた。
――侯爵家筆頭魔導士、アクドイ。
***
夜の魔導研究塔。
アクドイは、誰もいないはずの部屋で、静かに魔法陣を起動させていた。
「……計画は、順調です」
淡い紫色の通信魔法の向こう側。
そこに映るのは、見慣れぬ紋章――ヘンダーソン帝国のもの。
『王国の皇太子も出るのだろう?』
「ええ。ですが、死なせはしません。“混乱”だけで十分です」
アクドイは薄く笑った。
「魔族も、よく働いてくれる」
通信が切れ、部屋には静寂が戻る。
だが、その空気はどこか、歪んでいた。




