第9話 「剣術授業の一コマ 2」
完全に静まり返っている。
雑魚キャラと教官が気絶しているのを見た生徒達は、困惑の表情を浮かべ、何が起きたんだなどとはなしをしている。
一方で一部の生徒は、慌てて二人のところに駆け寄っていった。その中で、二人の様子を見ていたユリアンちゃんは、すぐにヒールをかけた。
その様子を王太子が見ている。乙女ゲーの世界ならこのことで王太子はユリアンちゃんに惹かれていくんだろう。そう思っていると王太子は、なぜか私のほうに歩いてくる。
「アシュラ令嬢」
そこまで言って途端、後ろから
「ちょっと待った!!」
おいおい…昔なんか懐かしの番組でこんな光景があったなぁ~。
「殿下!!ここは、私、ランスロットにお任せください」
王太子の友人の一人、兼護衛をしているランスロット・グランデッド、彼こそ近衛騎士団長、グランデッド侯爵家の長男で、わが父、闘神ダイモスと並ぶ勇神ライディーンの加護を持つ一族、彼も同じく勇神ライディーンの加護を持つ男なのだ。
「アシュラ嬢、このランスロットとお手合わせをお願いする」
「ごめんなさい。辞退します」
こんな奴と戦ったら命がいくつあっても足りないので、即答したら、周りの雰囲気がおかしい。さらに皇太子様からも
「授業中なんだから逃げないで立ち合いなさい」
「あの~私、女の子なんですけど」
「だから?」
「加護なしなんですけど」
「加護なしがなぜ騎士アザーズの加護を持っている奴に勝てるんだ?」
「あれは、たまたま、彼が私が空振りした剣に躓いただけで…」
「何を言っている。頭に一本を入れていたではないか」
「あれも偶然で…」
ああ…だれか助けて…やっぱり誰も助けてくれないよね。
「ほう…偶然?でもアシュラ嬢は、自ら一本入ったと言っていたではないか」
「ですから…偶然入ったので、早く逃げたかったのでアピールしただけなんですが」
「入ったのは認めるんだな」
「え…あ…いや」
「今、入ったと言ったではないか」
「あ…はい…言いました」
「じゃあ…立ち合いを受けろ」
「は…はい」
うっ胃が痛い。けど、胃薬はない。
そして、復活しなくても良い教官までやってきて、何故か当然のように審判をやろうとしたる。
「教官、無理はしなくても」
「何を言っている。ランスロット君と立ち会いができるのだから、今度こそ、まともに戦うように」
絶対におかしいよね。私、ちゃんと戦ったのに、まだ、ズルをしたと思われている。
とにかく死なないようしないと、多分、お父様ほどじゃなければ、大丈夫だと思う。
「セイラ様、頑張って」
ヒールを終えたユリアンちゃんが応援してくれる。
いざ、勝負
とここまでは、意気込んでみたものの、お父様並みの怒涛の攻撃がくるかと思ったら。
お、遅い。
「貴様!!逃げてばかりじゃないか」
剣を交わすことすらなく、余裕で避けることができる。周りは、彼の攻撃の速さに感嘆の声をあげているけど、そんなに早いのでと思うくらい。
足元への空振りは、ダメだろうし、一度やった受け流しも、たぶん、見破られて、思いっきり打ち込んで来るに違いないな。痛いのは、嫌だし。あっ、少し手がジーンてなるかもだけど、まともに剣で受け止めてみよう。
私は見合いを計って、彼の剣を受け止めた。
ガーン!!
すると案外な軽いなと思ったら、打ち込んできた彼はびっくりした表情で固まっているかと思ったら、剣を手放して、両手を握って蹲った。
「痛ってぇえええ!」
はい?何がおきたんですか?
両手を押さえて蹲った彼は、動こうとしない。
しばらくして、ユリアンちゃんが彼のところに行き、ヒールをかけていた。
「ランスロット君、怪我のため、無効!!」
はい?何故?
あとでユリアンちゃんに聞いたんだけど、あの時、彼の両腕が骨折していたという。
こうして、剣術の授業で、わたしは、ボッチというか、ユリアンちゃんと練習することになった。