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第2話

 急いだ方がいいだろうとギルドへ手続きに行ったら、まあ、ギルドマスターからも渋い顔をされた。

「……マジで引退する気か?」

「決意は変えません」

「テイマーでも最高のSランクに到達したんだぞ? それをあっさりと辞めるのか?」

「いいんです。ソロで動いていただけなので、テイマーした子たち以外に迷惑をかけるメンバーはいませんし」

「ギルドとしても、出来れば止めたいが。そこまで言われると、規約違反でもないし無理だな」

「ありがとうございます」

 老年のギルマスには納得してもらえたので、手続きはなんとかしてくれることになった。仲のいい職員さんたちに伝わったら男女問わずにハグでもみくちゃにされちゃったけど。ついでとばかりに送別会も開いてもらって、元同業者となった冒険者のみんなにも引退を嘆かれた。

「なんで辞めんだよ!? 田舎暮らしのリタイア生活とか刺激ないだろ!?」

「意味わかんない! Sランクにまでいったのに!!」

「いいんだ。僕が望んだから」

「「そうかよぉ……」」

 送別会が終わった翌日には、キエラの雲移動の魔法でニルビス村に向かうことにした。どこかの国のおとぎ話だと『筋斗雲』とか言うらしいけど、キエラ自身は変な呼び名だからとそっちの名前を使っている。

 座標を伝えて、全員で乗り込んだらぴゅぃっと移動できるから長距離遠征にはだいぶ役に立ったんだよね。国ふたつをまたぐ距離だったけど、ものの数時間で僕の故郷は見えてきた。時期が春のせいか、村の名物である桜の木々が眼下に見えて懐かしさが込み上げてくる。

『きれ~』

『花畑じゃね?』

「違うよ。あれは桜の木」

『ふむ。精霊の里には劣るが悪くはないな』

「精霊の里にも桜の木はあったの?」

『応。だが、花の大きさも規模も違う。あのように儚い出で立ちではないな?』

 雲海での依頼がきっかけでテイマーしたキエラだけど、まだまだ全部を知っているわけではないからね。他の二匹もだし、僕はテイマーとしてもまだまだ新米と変わりないんだ。Sランクだったけど、みんなのおかげでそのランクに行き着いただけだから。

 とりあえず、村の入り口になる門前に雲移動で全員降り立ち……十年ぶりだけど、特に変わらない門構えに懐かしさを感じた。街じゃないから門兵とかはいないが、ちょうど誰かが薪拾いから戻ってきているところで、よいしょっと、と言いながら門をくぐっていた。

「あの、すみませんー!」

 後ろ姿だけじゃ誰だかわからないから声をかけると……その人は勢いよく振り向いてから、僕の方に走ってきた!? 近づいてくるにつれて、顔が見えたからすぐに理由がわかった!

「リュート!!」

「グスタフおじさん!!」

 村の中で唯一ドワーフの、僕が生まれる前から村に在住している鍛冶師のおじさんだ!

 ちょっと老けた気がするけど、僕を見つけるとダッシュしてきてそのままハグされた。

「十年ぶりじゃねぇか!? やっと里帰りしてきたのか、バカ坊主!!」

「ごめんなさい。けど、もう冒険者辞めて帰還してきたんです」

「は? 冒険者辞めたのか?」

「仲間は連れてきたんですけど」

 みんなを紹介しようと思ったが、僕の後ろでぽかーんとなっていた。多分、グスタフおじさんの反応にびっくりしたんだと思う。グスタフおじさんも皆を見てくれたけど、おじさんもぽかーんってしちゃったんだよね?

「は? フェンリルに綿ウサギ? そっちは精霊殿??」

「キエラは雲の精霊なんですよ」

「雲!? 超高ランクじゃねぇか!! んで、冒険者辞めてもついてきてくださったのか?」

「はい。僕と一緒にいたいからって。村で自警出来るくらいは強くなったけど、実家とかってまだあります?」

「あ、ああ。あるぞ。つーか、今日もルシアーノが手入れに行ってるぞ?」

「え!? ルーノが!」

 あの子が村にいることもだけど、両親が他界して無人の家をわざわざ手入れしてくれているなんて……相変わらず、いい子だ。僕が冒険者になることを決意しても、笑って見送ってくれた……幼馴染みの女の子。いや、もう女性かな。

『リュートぉ。そのルーノ、って女?』

 あ、ライラがちょっと怒ってる。別に女性全般を嫌っているわけじゃないけど、僕と親し過ぎる相手には威嚇しがちなんだよね。けど、ここは少し説得しよう。

「僕もすごくお世話になった人なんだよ? 例の約束した相手だけど」

『何? 好きな相手?』

「いやいや、それは無理だよ。年齢のこと考えたら、向こうはもう結婚」

「してねぇぞ、ルシアーノは」

「え?」

「まあ、野暮な話だが。約束を理由にずっと待ってたんだぞ?」

「えぇえ??」

 まさか、本当に桜の木の下で約束した……再会を理由に誰とも結婚してない?

 そんなバカな!?と僕は走り出して実家の方に向かった!


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