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井上祐人

5年前に離婚した。離婚せざるを得なかった。大切にしたかったのに、自分では彼女の心を守りきることができずに手放した。キラキラした眼差しも、明るい笑い声も。気づけば全部失っていて、そうして自分は1人になった。


その元妻の弟から突然連絡がきた。

ーー力を貸してほしい。もしまだ姉を愛しているなら、大事なものだけ持って明日会いに来てください。


事故や病気でないことだけ確認してすぐに電話を切る。彼女に会える。自分を必要としている。

大事なものってなんだ。これでいいのか。

久しぶりに鏡を見た。今すぐ髪を切りに行こう。ずいぶんおじさんになったけど、せめて少しはきちんとしたい。


久しぶりに会った元義弟は、若い女性を連れていた。聞けば最近結婚したという。かつては独身を満喫してる感じだったが良い出会いがあったのだろう、羨ましい。そのまま連れ立って現在彼の両親が暮らしているという家に向かう。そこに彼女もいるらしい。

ぎこちない会話から、何が起きているのか知ることはかなわなかった。彼の奥さんも不安そうな表情だ。


だが、到着して彼女の顔を見たら全てがどうでもよくなった。どうやら彼女は自分が来ることを聞いていなかったようだ。少し痩せた頬に、相変わらず大きな目。なんで、と呟く声は掠れていて。我慢できずに抱きしめた。やっと会えた。もう大丈夫。


しばらく2人にしてもらい、落ち着いた彼女からぽつぽつと話を聞いた。仕事を辞めたこと。北海道にマンションを買ったこと。お義父さんが認知症かもと思って、慌ててこちらに帰ってきたこと。


でも、なんで和樹は祐くんに連絡したんだろう。

さぁ、のんちゃんの力になってくれって。何があったの。

そこで彼女はちらりと庭の方を見た。少し躊躇って、笑わない?と上目遣い。40過ぎてもかわいい。

祐くんになら言っても良いのかな。あの、頭おかしいって思われるかもしれないけど...。ふざけてるんじゃなくて真剣な話なの。

あのね。お父さんが勇者だったみたい。


ん?

オトウサンガユウシャダッタミタイ?


でね、その時もらった竜のたまごから招待券が出てきて、お父さんもお母さんも、私にくれるって。2名様限定なの。


待て待て待て、ちょっと意味がわからない。

たぶん情報が多すぎるのかな。

うん、まずは簡単なところから確認しよう。

えーと、なんの招待券なの?温泉かな?

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