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第二話:テンプレみたいな出会い方

 食事を終え、身支度を整えたアランは、すぐに王城を出て、今校門の前に立っていた。


 校門の高さは、アランの身長の3倍ほどある。ちなみにアランの身長は170㎝。最近弟に1㎝抜かれたことを割と気にしている。


 「無駄に大きい校門だな」


 その大きさに圧倒されながらも、足を前に進める。そして、ようやく門をくぐろうとしたときだった。


 「うわぁあああ!遅刻遅刻!」


 背後から慌てた女の声がした。そして、アランが振り返ったとき、視界が桃色で埋め尽くされる。


 それが慌てた女の髪の色だと認識する前に、アランの体は女とぶつかった衝撃で吹き飛ばされた。


 「グッハァー!ベッ、ブッ!」 


 二回もバウンドして5mほど吹っ飛んだアランの体は入学式前だというのにボロボロだ。災難にもほどがある。


 「どこの無礼者だ!この私を誰だと思っている!?不経済で罰してやろうか!」


 ぶつかってきた女に対する苛立ちを糧に、アランはピクピクと痙攣する体を無理矢理起こした。


 勿論不敬罪の下りは冗談だ。ぶつかってきた女を少し脅かしてやろうと思って口にした戯言にすぎない。


 だが、脅かされたのはアランのほうだった。


 「だ、大丈夫ですか!?」


 「っ!?」


 そう声をかけてきた女の全身を視界に収め、アランは驚愕で息をのんだ。


 その女の容姿は桃色の髪、かわいらしい相貌、幼さの見える顔立ちと不釣り合いの大きな胸、それでいて他の肢体はバランスが整っている。

 思わず息をのんでしまうほどの美少女だった。


 だが、アランはその可愛さに息をのんでしまったわけではない。


 (なぜ……夢で見た女がここにいる!?)


 息をのんだ理由は、そっくりだったからだ。


 己の悪夢に登場した、アランの婚約破棄後の相手。国を混乱に陥れようとした罪でとらえられ、最終的に自殺した女。


 男爵令嬢マリア。夢の中のアランが、真実の愛だと告げた女。


 (なぜ夢で見た女が、現実にいるんだ!?)


 夢が現実になって現れたという非現実的な衝撃が、ものすごい勢いでぶつかってきたことに対する苛立ちや、女のかわいらしさからくる感動をすべて吹き飛ばした。


 いろいろな情報を処理しきれず混乱しているアランの内心など知りもしないマリアは、自分が吹っ飛ばしてしまった相手に優しく、心配そうな表情で声をかける。


 「ぶつかってしまって申し訳ありません。お怪我はありませんか?」


 (あるに決まってるだろ何m飛んだと思ってるんだ!?)


 という本音をのどの中に何とかとどめて、アランは苦笑いで応じる。


 「ああ、怪我はゴホッ!……ないよ。高い生地を使っているからかなぁ?制服が丈夫でよかったあ痛ッ!」


 高級かつ頑丈な生地のおかげで、アランの体には裂傷などの傷はない。しかし、バウンドの衝撃までは殺せなかったので、微妙にダメージを隠せていない。


 そんな小さい男の意地をくんだのか、マリアは表情を笑顔に変えて、話を変えた。


 「あの、もうすぐ入学式が始まると思うのですが、あなたは急がなくてよろしいのですか?」


 入学式は9:00から始まる。当然、アランは余裕を持って参加できるよう時間を調整し行動した。アランが持っている腕時計は現在8:45を指している。


 「まだ時間に余裕はあるだろう?」


 アランはどや顔でマリアに腕時計を見せる。その腕時計は金色の高級時計。持ち物は所有者の財力と権力を示す。


 しかし暗に己の地位を見せつける行為に気付いていないのか、マリアは笑顔のまま、視線を別の方向に移した。


 アランもつられて、マリアと同じ方向に視線を移した。


 そこには……8:55を示す時計が。


 「「…………」」


 アランの顔から滝のような汗が流れ落ちる。


 学校に設置された時計と、自分の腕時計。遅刻しそうな女。状況を見れば、腕時計のほうが時間がずれていると考えたほうが自然だ。


 ならばすることはただ一つ。


 「ダァアアアアッシュッ!!!」


 アラン、王族にあるまじき余裕のない全力疾走。


 「あ、ずるい!遅刻しそうなのを教えたのは私ですよ!置いていかないでください!」


 「うるさい、早い者勝ちだ!勝ち負けの問題じゃないけど」


 こうして、二人は仲良く走って登校することになった。

アランよりマリアのほうが足が速かったし、アランの体力もすぐ尽きたので途中でマリアに手を引かれながら走る形になった。


マリア「あともう少しです。頑張ってください」


アラン「ぜえ、ぜえ(私のほうが早くスタートしたのに……)」


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