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凪の海  作者: 雪宮鉄馬
7/10

【七】

【七】


「二五日、○四○○、西村艦隊ハドラグ沖ニ突入ノ予定」

 伝文を送った後、一時間半ほどして、栗田艦隊小柳富次参謀長の名前で、返信が戻ってきた。

「栗田艦隊ハ、二五日、一一○○、レイテ湾突入ノ予定。貴隊ハ予定通リ突入シ、○九○○、スルアン島レイテ湾入口、タクロバンヨリ六〇海里ノ地点ニ於テ、本隊ニ合同スベシ」

 それは、栗田艦隊からの、事実上の突出許可であった。この時、小柳参謀長は、西村艦隊の生還を期待してはいなかった。この伝文に対し、西村は何の応答も返さなかった。

 南洋の夜空が最も美しい筈の時刻、それまで晴れ渡っていた空から星がいっせいに消える。それは、雨雲の到来を知らせていた。やがて、艦隊を激しい雨粒が叩いた。

「南国の天気は変わりやすいと言うが……これほど激しいスコールは初めてだ」

 小野寺は霧がかかったような、窓ガラスの向こうを眺めながらひとりごちた。不思議と気分は落ち着いていた。この先の航路は、決死を覚悟する「死出の旅路」のようなものである。いや、首尾よくアメリカ艦隊を撃滅できたとしても、無傷ではいられない。その時、果たして自分や、西村たちは生きているかどうかも分からない。それなのに心はそれほど悲観していない。むしろ、晴れ晴れとした気分さえ感じてしまう。

「これで、先の戦闘の煤を洗い流すことが出来ますな。小野寺少佐は雨がお嫌いか?」

 不意に隣で声がした。江崎主計長だ。彼は小野寺の独り言を聞いていたのだろうか。そんな彼にも、決死への悲観さは見受けられなかった。

「いえ、雨は嫌いではありません。少なくとも、この淀んだ空気が涼しくなるでしょう」

「なるほど、確かに南洋の蒸し暑さには、ほとほと困り果ててましたからな。しかし、このスコールでレイテの海が荒れなければいいのですか」

 江崎の言葉に耳を傾けながら、小野寺はふと西村との会話を思い出していた。凪の海。それは、戦の海から死した魂が天へと帰る予兆。ならば、海が荒れ凪の海が訪れなければ、誰も死ぬことはないのではないか? そう考えてから、小野寺はすぐにかぶりを振った。海が荒れればなおさら作戦は、困難を極めるだろう。そうなれば、兵士の生死など、誰にも分かりはしないのだから。

「生き死には、そんなに簡単なことではないな……」

 小野寺の呟きは雨音にかき消された。

「はい? 何か言いましたか、小野寺少佐」

「いえ、独り言ですよ……。しかし、何故でしょう。出航前は、ひどく不安を感じて止みませんでした。作戦も、この艦も、すべてが無謀なことのように思えてならなかったのです」

「小野寺さんらしいですな。いや、失敬悪い意味ではない」

 江崎が笑いながら言う。

「思慮深く、余計なことを考えすぎる。昔、親父によく言われました。親父は、歯牙ない農家で、米を育てることだけが生きがいみたいな人でした。そのくせ、喧嘩っ早くて雷のように怒る」

「お父上のこと嫌いだったのですか?」

「いや、そんなことはありません。父に褒められたくて、どうすればいいのか、それを考えるうちに、何事にも悩みあぐねるようになった。思慮深いとは言いようで、実のところ、ただ悩んでいるだけなのですよ。しかし、今は晴れ晴れとした気持ちです。これから死地へと向かうにもかかわらず、何故このような気持ちになれるのか。死ぬことが怖いと思ったことは、幾度もある。その度、生き残ったことに感謝してきたと言うのに、悩みも不安もない」

 小野寺の瞳は、遠く雨粒で見えないはずの海を眺めていた。江崎はそんな小野寺の横顔を見ながら、

「それが、覚悟と言うものではないですか?」

 と言った。覚悟。それがどのようなものなのか、小野寺は今まで考えたこともないことに気付いた。ただ、パリックパパンでの失態を繰り返さぬため、あちこちの戦場でがむしゃらに戦い、出世した。そんな自分が「覚悟」をしていたのかさえ分からない。ただ、江崎の言うように、死に直面して尚、晴れ晴れとした気持ちであることが「覚悟」というのなら、それは、小野寺にとって笑い種でしかなかった。

「覚悟……今更私に覚悟など、なお更不思議としか言いようがありません」

 そう言って、小野寺は自嘲気味に笑い、江崎の怪訝な表情を誘った。ふと腕時計を見ると、日付は変わり十月二十五日を迎えようとしていた。


 小野寺の思惑を他所に、スコールは一時間と経たぬうちに上がった。それからほどなくして、西村艦隊はスリガオ海峡に入った。西村は栗田艦隊へ「○一三○、スリガオ海峡ヲ通過シ、レイテ湾ニ突入セリ。スコールアルモ、天候はオオムネ回復シツツアリ」との打電を送った。

 この時すでに、アメリカ第七艦隊は西村艦隊のスリガオ海峡北上を察知していた。司令官、キンケイド中将は直ちに、オルデンドルフ少将の艦隊を差し向けた。戦艦六隻、巡洋艦八隻、駆逐艦二十六隻、魚雷艇三十九隻を抱える、オルデンドルフ艦隊は、西村艦隊の航路上にて、待ち伏せすることにした。すでにそのことを、西村艦隊も察知していた。そんな西村艦隊が敵軍と最初に衝突したのは、スリガオ海峡をレイテ湾目指して北上して間もなくであった。

「敵、魚雷艇、魚雷発射っ!! 感四っ!! 真っ直ぐこちらに向かってきますっ!!」

 索敵を行っていた将校が叫ぶ。すぐさま各艦は戦闘配備に付く。敵船から放たれた魚雷は白い航跡を残しながら、直線的に迫ってきた。その狙いは、先頭を進む山城である。

「回避っ!!」

 艦長の怒号とともに、山城の舵は左に切られた。あわやと言うところで、魚雷は艦の右舷を通り過ぎやや後方にて水柱を上げた。その振動が艦橋にまで伝わってくるような気がする。

 すぐさま、山城は舵を戻す。それと同時に、駆逐艦山雲から二本の魚雷が投射された。魚雷は山城の傍を通り過ぎると、真っ直ぐに敵魚雷艇に狙いを定めた。

 月夜の海上に爆発音と閃光が瞬いた。山城の艦橋に、「おおっ、やったぞ」と歓声が上がる。

「まだだ、敵駆逐艦の姿が見えん」

 西村が静かに歓声を収めた。三十九隻の魚雷艇は、さながら餌に群がる小魚のようだった。敵魚雷艇からは、次々と魚雷が発射される。尚も駆逐艦はそれを迎撃しつつ、北上を続けた。アメリカ軍の魚雷艇は追跡可能な限り、西村艦隊を追尾・攻撃を繰り返した。

 時刻は午前三時を迎える頃、唐突に島影から光が見えた。

「時雨より打電っ!! 左舷前方、ティナガット島方面、敵駆逐艦隊っ!!」

 艦橋に走り込んできた伝令が叫んだ。その瞬間、島影に先行が走り、山城の左舷付近に水柱が上がる。敵艦からの砲撃である。幸い、敵弾は艦に着弾しなかった。

「機関最大戦速っ!! 対艦戦闘用意っ!!」 

 篠田艦長の命令が下る。小野寺はすぐさま、主砲指揮所の伝声管の蓋を開けた。山城の主砲塔であれば、敵駆逐艦の射程範囲外から砲撃を浴びせかけることが出来る。しかし、ここに至って問題があった。山城の電探は、昨日の空襲で半壊しその機能を失っているも同然であった。これでは、敵艦に対して、正確な砲撃を射掛けることが出来ない。

 小野寺が伝声管を睨みつけながら思案をめぐらせていると、彼の背中に西村が声をかけた。

「照射砲撃だ、少佐。危険は大きいが、他に手はない。敵艦を一発でしとめろ」

「はっ、了解しました。一番、二番主砲、方位百二十度、仰角十度、目標に照射砲撃用意っ!!」

 小野寺の合図と共に、左舷の探照灯が眩い光を点けた。月光よりも激しい光は、島の傍をこちらに向かって走る駆逐艦隊を捉えた。

「一番、撃てっ!!」

 どんっ、と腹に響くような轟音。二つの砲身から、真っ赤な光が飛び出す。目にも止まらぬ速度で、敵目掛けて弧を描いた砲弾は、敵艦の回避の暇を許さず着弾した。

「二番、撃てっ!!」

 すかさず、小野寺は指揮所に命じる。立て続けに、二番主砲の砲門が火を吹く。一番主砲と同じ軌道を描く弾丸は、やや左にそれた。小野寺が歯噛みする。予想通り、回避を始めた敵艦の右舷で水柱が上がる。

「まずいっ!! 反撃が来るぞ、探照灯を消せっ!!」

 夜戦における照射射撃は灯によって敵の位置を特定するため、反対に敵艦側からも自艦の位置を特定されてしまう。一瞬の油断は、敵艦隊に絶好の機会を与えるだけだ。しかし、探照灯が消える直前、敵艦から発砲光ではなく白煙が上がる。何事かと、艦橋は騒然となった。

「煙幕か! 逃げるつもりなのか!?」 

 将官の誰かが言った。艦隊を覆い隠すほどの白煙は、灯を消した暗闇でもはっきりと分かるほどだった。小野寺は、その意味を理解していた。

「ちがう、あれはっ!!」

 叫び声をあげようとした瞬間、漆黒の海面に扇状に広がる無数の白い帯が見えた。白煙は煙幕などではなく、敵駆逐艦が幾重にも魚雷を発射した発射煙だった。猛烈な速度で襲い掛かる魚雷群。

「魚雷防御ーっ!!」

 回避が間に合わないと悟った篠田艦長が怒声を上げた。小野寺達は手早く近くの物にしがみついた。ややあって、足下から激しい振動が伝わってくる。バランスを崩した小野寺は、床に転んだ。軍服のポケットから、煙草入れの缶がこぼれ落ちた。すると、カラカラと床を滑る缶は、西村の足下で止まった。

「少佐、落し物だ」

 西村はそれを拾い上げると、小野寺に差し出した。その顔はやはり穏やかであった。この状況にあっても、うろたえない。毅然とする指揮官の姿、それが「海の侍」の覚悟なのか。

「は、申し訳ありません」

 そう言いながら立ち上がり、西村から缶を受け取った。申し訳ありません、と言っておきながら的を外したことを謝ったのか、缶を拾ってもらったお礼を言ったのか、自分でもよく分からなかった。

「被害状況報せっ!! 戦列を立て直せっ」

 篠田艦長が猛然と叫ぶ。この時、山城には一発の魚雷が命中していた。直ぐに水密区画を閉鎖し、被害を食い止めたのだが、魚雷は意思を持ったかのごとく、西村艦隊を捕らえていた。放たれた魚雷のうち四本は、姉妹艦である扶桑に連発して命中していた。

 それはあっという間の出来事だった。魚雷を受けた扶桑は弾薬庫に引火して、火柱を上げた。そして、艦の中央で真っ二つに割れたのである。艦長の退艦命令も空しく、扶桑は地獄の炎に包まれたまま、乗員の命を道連れに海底へと没していった。防御に欠点を抱えた「欠陥戦艦」故の末路であった。

「扶桑轟沈っ!! 駆逐艦満潮、朝雲被雷っ!!」

 次々と駆け込む伝令が、被害のすさまじさを伝えた。たった一度の魚雷攻撃で、七隻のうち半数以上が被害を被った。忌忌しき事態である。

「満潮、朝雲は航行できるか?」

 伝令に西村が問いかけると、伝令の青年は静かに首を横に振った。頼みの駆逐艦が失われたことに、艦橋が嘆息に包まれた。西村はしばらく瞳を伏せた。

「止むを得ないな、満潮、朝雲両艦は、ここに捨て置く。残った三艦だけで、レイテへ北上するぞ」

 非情な命令であった。しかし、山城とて魚雷を受ければ、いつ扶桑と同じ最期を遂げるかわからない。それでは、西村艦隊が単独突出した意味がない。ただ、死するためにここにきたわけではない、そう西村の眼が語っていた。

 山城、最上、時雨の三隻となった艦隊は、敵駆逐艦を振り切るように、全速力で海を走った。魚雷艇、駆逐艦に囲まれ逃げ場など残されてはいない。西村は、各艦に命令を送った。

「ワレ、魚雷攻撃ヲ受ク。各艦ハ、ワレヲ顧ミズ前進シ、敵ヲ攻撃スベシ」

 しかし、最上、時雨両艦は、山城にぴったりと寄り添った。被雷し速力を落とした山城を気遣ってのことなのか、それとも二隻では突入もままならないと悟ったのか、迫りくる敵駆逐艦を果敢に迎撃した。

「一番、二番、撃てっ!!」

 小野寺は、声を枯らしながら、敵艦に攻撃を挑んだ。命中した弾もあれば、外れる弾もある。いくつの敵艦を沈め、いくつの敵に追われているのかも定かではない。しかし、それでも何とか艦隊は、スリガオ海峡の出口付近にまで迫った。

 誰も口にしないこと。駆逐艦と魚雷艇の攻撃は、西村艦隊に迫る攻撃の一手に過ぎない。その先に待ち受けるものが何であるか、皆分かっていた。

「山城正面、敵艦隊発見っ!!」 

 視界正面、月光に照らされて黒い影が現れる。オルデンドルフ艦隊の戦艦「ウェストバージニア」と巡洋艦である。

 ウェストバージニアは太平洋戦争の緒戦「真珠湾攻撃」にて、日本軍の航空機によって大破させられている。その後、浮揚し修理が行われ、再び戦場に姿を現した。闇の海に浮かぶその威容は、仇である日本軍艦に復讐の念を燃え上がらせているようだった。

「敵艦、砲撃っ!!」

 伝声管からの報告よりも早く、ウェストバージニアの艦首か閃光を発した。アメリカ軍のレーダーリンク射撃は正確無比である。まるで、山城の前に水のヴェールを作るかのごとく、いくつもの水柱が上がった。接近すれば、山城は砲撃の的になるだろう。

「指揮所っ! 敵艦の発砲光を狙えっ!! 一番、二番主砲、発射っ!!」

 小野寺の指示に従って、一番、二番主砲塔が旋回し、ウェストバージニアを射程に入れる。主砲が唸りを上げたのは、ウェストバージニアに再び砲撃の光が閃くのと同時であった。互いの砲弾はすれ違いながらも、弧を描いて飛翔する。

「敵弾、着弾ーっ!!」

 悲鳴とも報告ともわからない叫び声とともに、艦橋が激しく揺さぶられた。まるで視界をさえぎるかのような、炎。飛び散る破片。それらが小野寺の視界に迫った。小さく見える甲板を蠢く負傷兵。聞こえるはずもない阿鼻叫喚の絶叫。火薬の詰まった巨大な鉄の塊を前にすれば、人間の体などひとたまりもない。後に残るは、焼け焦げた遺体と血溜まりのみだ。

「砲撃の手を休めるなっ!! 敵艦を駆逐し、活路を開けっ」

 小野寺は指揮所に怒鳴った。次々と浴びせかけられる、大小口径の弾丸。その時、艦の後方で砲撃の光が瞬いた。最上からの射撃である。しかし、その砲弾は敵艦の方角ではない方向へと飛んで行った。

「最上は何をしているっ!? 敵艦は前方だっ!」

 士官が毒づいた。山城の直接被弾で混乱した最上の電探は島影を敵艦と誤認していたことを、山城の乗員は知らなかった。的外れな砲撃は、敵に更なる好機を与えた。オルデンドルフ艦隊は、艦砲射撃を繰り返しながら、T字陣形に展開を開始した。たった三隻の敵を完全に囲い込み、追い込む。

「全艦、回頭っ!!」

 T字陣形が完成する前に、この危機を脱さなくてはならない。篠田艦長の命令にあわせ、操舵が舵を切る。艦は急速に反転を開始した。しかし、それは敵に船の腹を見せることとなる。ウェストバージニアは、その隙をけして逃さなかった。

 敵艦隊が無数の閃光を走らせた。それらは瞬く間に山城、最上の横腹を貫いた。幾重にも重なり合う爆音に小野寺は耳が遠くなるような気分になった。

「くっ、手も足も出ないか……」

 小野寺は歯噛みしながら、ウェストバージニアの艦影を睨み付けた。悠然と迫りくる敵艦がこれほどまでに憎々しく思ったのは初めてだった。応射する一番、二番主砲の弾丸は悉く狙いをそれていく。小野寺は苛立ちを覚えた。

「最上炎上っ!!」

 伝令が声を上げた。重巡洋艦最上は、砲撃をまともに食らった。火達磨と化した最上は停止し、艦のあちこちから生存者が海へ飛び降りる姿が見えた。

 その瞬間、小野寺の視界が上下にぐらついた。流弾に当たったのか? いや体のどこにも、痛みも熱もない。そう確認する小野寺の正面。左舷の窓の外に何かが降ってきた。あれは……と思ったのもつかの間、激しい水しぶきが艦橋の窓ガラスを叩いた。

「上部艦橋崩壊っ!! 敵、尚も進軍中っ!!」

 怯えるように、下士官が叫ぶ。塔のように聳え立つ、山城の艦橋が崩れ去るのは、アメリカ軍も確認していた。しかし、それでも、攻撃の手を緩めはしなかった。完膚なきまで叩き伏せる。それが、オルデンドルフ少将からの命令であった。

 篠田艦長は直ちに反転を取りやめた。すぐさま舵は元に戻され、主砲による砲撃を再開した。満身創痍、再び敵に向かう山城の姿はその一言だった。

「艦後方、敵駆逐艦。雷跡八っ!!」

 山城を追尾する駆逐艦が放った魚雷が、山城の後方より迫った。魚雷は山城の回避を阻止するため、扇状に広がる。防御も回避も間に合わない。

「まだだ……!! 四番、五番俯角マイナス二度!!」

 小野寺の命令に戸惑う余裕もなく、山城艦尾の主砲塔が、海面に砲口を合わせた。

「雷跡の先端を撃てっ!」

 アメリカ軍の魚雷は二酸化炭素の白い航跡を描く。その先端こそが魚雷である。狙いを絞り、主砲が海面を貫いた。魚雷が撃ち抜かれ、一際高い水柱が二つ上がる。しかし、砲弾を潜り抜けた魚雷を止める術はなく、四発の魚雷が山城に炸裂した。

「栗田艦隊に報告せよっ! われレイテ湾に向け突撃、玉砕せんとす!」

 かすかに、爆発の隙間から西村の声が聞こえた。しかし、電撃のような炸裂音がそれを飲み込んでいいくのを聞きながら、小野寺の視界は暗転した。

 何が起こったのかわからないほどだった。扶桑の時と同じように、一瞬のうちに、弾薬庫から炎と熱風が吹き上がった。そして、爆音が響き渡ると、山城を中心に海上に巨大な波紋を広げた。



 




 

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