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異層機鋼世界

海を見る防人

作者: 銀色オウムガイ

 人類の敵は、海から現れる。

 ビルにも匹敵する巨体を持ち、破壊の限りを尽くす生きた自然災害。

 怪獣。それらがそう呼称されるのには時間が掛からなかった。

 それらは海から現れ、一定の時間暴れたのちに海へ去っていく。

 なぜなのか。その理由は奴らの身体は極めて高温であり、それを冷やすために海から長く離れることができないからだ。

 その弱点を突き詰めた人類は、対怪獣用の巨大な兵器を生み出すことになる。

「目標接近。射程圏内にアビソドン確認。攻撃を開始します」

 世界各国の沿岸に配備された国防軍の長距離レーザー砲が地平線の向こうから海を迫り上げながら迫る敵へ向けて放たれる。

 だがそれは海水の壁によって阻まれ、本体に直撃することはない。

 その後ろには全高約40メートルほどの巨人。スーパーロボット、グランガードである。

 幾度となく怪獣の脅威からこの国を守ってきた守護神である。

「グランガード発進。グランガード発進。周辺作業員は安全圏まで撤収せよ」

 警報が鳴り響き、機体を囲っていたハンガーが撤去されていく。

 同時に機体各部から排気を行い、背中に備え付けられたブースターが火を噴き跳び上がる。

「砲撃中止! グランガードに当たる」

 レーザー砲による攻撃が止まる。

 それと入れ違いに空をゆくグランガードが巨影に向かって足を突き出し急降下しはじめた。

 全身のスラスターを全開にし、己の重量と速度を利用した跳び蹴りである。

 その蹴りは海水の壁を突き抜け、目標である怪獣・アビソドンの頭を直撃する。

『!!!!』

 怪獣が吠える。

 それと同時に進撃が止まり、押し上げられていた海水が津波のように沿岸へ迫り防波堤と砲台を打ち付ける。

 うろこのあるクジラに手足をむりやりくっつけたような外見の怪獣が全貌を現すなり、着地したばかりのグランガードめがけて口から大量の水を吹き出して攻撃した。

 その水流の直撃を受け、グランガードは吹っ飛ばされ転倒する。

 すぐに立ち上がろうとするグランガードであるが、そこへ振りぬかれたアビソドンの尾が急接近。その身体を再び吹っ飛ばす。

 が、今度は地面に叩きつけられる前にスラスターの噴射によって姿勢を立て直し、ゆっくりと着地。

 それと同時に駆け出し、今度は拳をアビソドンの下顎めがけて振りぬいた。

 直撃。ぐらりとゆらいでアビソドンがたじろぐ。

 だがすぐに体勢を立て直してグランガードめがけて突撃。グランガードもそれを受け止め、上陸させまいとする。

「作戦予定地周辺10キロの避難完了。無人化を確認。グランガード、退却を許可します」

 もちろん、言葉通りの退却ではない。

 ここから先はあえて地上に誘い込む。

 パワーにまかせて押し合いをしていたところ、グランガードはアビソドンの腹部に足を押し当てながら仰向けに倒れこみ、その巨体を陸地投げ飛ばした。巴投げである。

 頭の先から尾の先まで含めればグランガードをはるかに上回る巨体が宙を舞い、沿岸の砲台を下敷きにして地面に叩きつけられた。

 ゆっくりと立ち上がり、自分を投げ飛ばしたグランガードのほうを睨む。

 その体表からは蒸気があがり、体表が尋常ならざる熱を放出していることを物語っている。

 事実。下敷きにされたレーザー砲台の残骸はその体表の熱によって融解しはじめている。

 そこへグランガードが疾走し、アビソドンをさらに内陸へと押し込んでいく。

 何度もその頭部を殴りつけ、膝蹴りを放ち、肘を顎に叩きつける。

 その猛攻に怯んで後ずさりするアビソドン。

 さすがにここまで攻撃され続けては癇に障るのか、咆哮をあげて口から高圧水流を至近距離からグランガードに浴びせる。

 回避もできない。直撃である。

 だがグランガードはしっかりと踏ん張り、その激流に抗いながら胸の放熱板にエネルギーを回す。

「グランファイヤー起動ならびに敵怪獣の外表温度上昇を確認」

 放熱板から放たれた熱線が水流を蒸発させながら、それを押し返していく。

 完全に水流を蒸発させると、その熱線はアビソドンを直撃。

 その体表を焼きながら、アビソドンを後退させる。

 照射が終わった時、アビソドンは肩を上下させ明らかに弱ったような動作を見せる。

「敵怪獣、体表温度限界値突入。活動限界まであと五分」

 明らかに弱りだし、自身の体温の上昇に耐え切れなくなったアビソドンが苦悶の声を漏らす。

 水流による攻撃ももはや不可能なのか、海へ向かおうと歩みを進める。

 が、最後のあがきなのだろう。

 グランガードめがけて突進し、それを弾き飛ばす。

 ビルに突っ込みながら倒れこむグランガード。跳び上がったアビソドンが落下。

 超重量のボディープレスにグランガードの装甲がきしむ。

 が、その身体を押し上げながらグランガードが立ち上がる。

 巨体を押しのけ、両腕をアビソドンに向けて腕に内蔵されたビーム砲を連射。相手を突き放す。

「敵怪獣、体温さらに上昇。まもなく活動限界を迎えます」

 それを合図に、再び胸の放熱板――グランファイヤーが起動する。

『――――!!』

 先ほどよりも高い出力の熱線。その直撃を受け、アビソドンが絶叫する。

 そして、ついに熱に耐え切れずにアビソドンが倒れる。

 倒れてもなお照射はやめない。

 やがて自身の細胞が自身の熱に耐え切れず、大爆発を起こして肉片一つ残さず消滅した。

「目標の消滅を確認。作戦終了です。作業員は直ちに出動。被害状況の確認を。グランガードは帰投して整備を行ってください」

 この日の戦いは人類の勝利で終わった。

 だがしかし、次もこういくとは限らない。

 それはグランガードのひび割れた装甲と、火花を散らす関節が物語っていた。

・登場機体解説


グランガード

 全高40メートル、本体重量1200トン。

 軽量かつ頑丈な特殊な合金、グランメタル合金を全身に使用しており機体の軽量化と運動性の向上に成功している。

 多数建造されたスーパーロボットの中ではバランスに優れた機体。

 接近戦に重きを置いている為関節強度は高く、防御力も高い。

 また装甲表面は怪獣の高い体温でも融解しないよう特殊コーティングが施されているため地上戦で上昇した怪獣との格闘戦も可能。

 また内蔵装備も豊富であり、胸部の放熱板から熱線を放つ『グランファイヤー』、両腕に内蔵されたビーム砲『ガントレットビーム』、下腹部に内蔵された一発限りの高威力ミサイル『ギガススレイヤー』、膝蹴りの威力を向上させる『インパクトニー』などを装備している。

 また攻撃パターンも、ブースターで加速した拳で殴りつける『インパクトナックル』、スラスターの噴射で加速した跳び蹴り『グランクラッシュ』、インパクトニーを展開した状態での膝蹴り『ニークラッシュ』等複数のパターンが存在する。

 直接傷をつける武装よりも熱線やビームなど熱量を持った攻撃を主力としているのは、怪獣の体温を上昇させて早々に行動不能にするためである。


・怪獣

 海から現れ、破壊衝動のままに暴れては海へ撤退していく『生きた災害』。

 その正体は不明ながら、人類にとっては脅威である。

 ただし弱点がないわけではなく、個体差はあるものの活動限界時間がありそれを過ぎると体温が生存限界を突破しメルトダウンを起こし、最終的にはコアと呼ばれる部位が限界を迎えて大爆発を起こす。

 一方で身体の一部でも水に浸かっていればそこから水を体内に取り込んで冷却に使用することができるため、活動限界は存在しない。

 そのため、怪獣の殲滅作戦には上陸を阻むのではなく、避難完了した地域に誘い込んで連続攻撃によって活動限界時間を早める、という手段がとられる。

 わざわざ自身の命の危険を冒してまで上陸し、破壊活動を行う理由は出現から現在に至るまで判明していない。


アビソドン

 目測頭頂高45メートル、目測全長60メートル、推定体重5200トン。

 全身に鱗が生えたセミクジラのような身体に爬虫類じみた手足が生えた怪獣であり、過去に三度出現したことがある。

 完全上陸時の活動限界時間は三十分。ただし体内に大量の水を蓄えていられるため、実動時間はもっと長い。

 口から水流を放つ攻撃が唯一の遠距離攻撃手段であるが、この怪獣の武器はその肉体を使った肉弾戦にある。

 パワーは非常に高く、レーザー砲程度の攻撃ならば無効化するほどの外皮を持つ為スーパーロボット以外での対処は難しい。

 しかし、出現する度にその能力は強化されていっている為、怪獣の出現の裏には何者かの意思が働いているのではないかという仮説が提唱されている。

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