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蛙は哀れど無力を知らず幸せなり  作者: メリメリピーノ
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遅くなりました

この異世界は実に暇であった。

地球においては娯楽などのサービスに莫大な人員を割かれていた。ゲーム機だけでも大企業の一つに数えられる会社があり、ゲームソフトやその運営などでは莫大な人員を雇える。日本においては優秀なプログラマーの殆どがゲーム会社にいると思えた。

ただ、それだけほかの職業が自動化効率化され、人間が余っているとも言える。ゲームというのは人間の生活に必ず必要ではない物であり、それを制作している人員もゲームという無駄なものを生産しているのだから"無駄な人員"と言えなくもない。実際はそれらの人員を使って畑を耕した方がよほど日本の為、社会の為になると言えると思う。

ただ、もう日本には耕す土地がないのだ。既に日本の工業界は生産過剰なのだ。

娯楽業とは自動化効率化された日本社会において、生きていくために考え出された先進国の最後の職業だと言えるだろう。


ここで異世界、つまり私のいる場所に話を移す。

私が各ダンジョンマスターのダンジョンを旅行、或いは偵察の為に訪れたが気づいた事がある。それは人間達の識字率があまりにも低いことである。逆に魔族の識字率、学力は現代日本に劣らぬほど高い。この事実に気づいた時私はすぐ理由を察せた。それはつまり一種の愚民化政策である。地下世界は限られた資源の中で生活して行かなければならないという場所だ。その中で発展するには効率化機械化が必要不可欠であり、それを行うには科学、数学、魔法学等の先進技術が必要であり、それなりの学力水準が要求されるのである。

ただ、国民に賢くなってもらうと困るのは統治者側だと言うのは地球の歴史を知っている者なら当然の事実であろう。統治者にとっては国民は奴隷であってもらいたく、知識を持たれて自身の境遇や地位に疑問を持って欲しくはないのだ。その為地球においては愚民化政策とは主に植民地などで行われ、ヨーロッパでも義務教育が実施されたのは19世紀後半頃である。

まとめると教育水準を上げるということはそれだけ国民が賢くなり支配者達の統治に疑問を持たれてしまう。だから国民には学問などは教えてはならない。だけど地下で発展するには機械化効率化が必要不可欠であり、それには教育された人材が必要不可欠なのだ。

これは一種の矛盾であるが幸い我らダンジョンマスターには解決する方法があった。

家臣のシステムである。家臣にされた魔物や魔族はダンジョンマスターに絶対逆らえない。だから彼らに学問や技術を教えても国民は無知のままだし先進的な技術や思想も漏れないのだ。まるでダンジョンマスターとは統治者になる為に生まれたような種族であると思える。

そう言えばこの前買ったレッサーヴァンパイアも学問を修得していたが、出来るのは読み書きと四則演算のみであった。愚民化政策と言ってもダンジョン事に色々あって、公爵領では読み書きや四則演算程度なら許されるそうである。公立の図書館もある程だし政策がとても緩い。でも公立の図書館に置いてあるのは頭の悪そうな物語本程度だし、私が読んでいた図鑑や専門書などは私のような特権階級や一部の特別な許可を貰った者だけにしか読ませてもらえないのだ。恐らく交易の中心地として、商いを行うのに最低限の教養のみ許されているのだと思われた。


脳内の管理画面でレッサーヴァンパイア達を眺めることにもすっかり飽きた。今の楽しみは他のダンジョンマスター達との世間話であった。今日は私を含め3人でとあるレストランに来ていた。


「遅くなって申し訳ない。私のダンジョンとこことは時間感覚が違うもので遅れてしまいました。」


「いえ、時間ぴったりですよ。タナカさん。私達は仕事終わりなだけでいつもなら遅れているところです。」


遅れてきたタナカ士爵に私は返事をした。

タナカ士爵とは仕事仲間であった。だが知り合ったのは数週間前のことであり、この方は殆ど仕事に顔を出さない。何故かと聞いてみたところダンジョンの運営が軌道に乗り始め、金を稼がなくても何とかなるところまで来たのだ


「こんにちは。ナガノさん。」


「ええ、こんにちは。」


ナガノ士爵とタナカ士爵が挨拶をした。


私達は昼食を注文した後、話始めに最近流行っているものの話題から入り次に仕事の愚痴から入った。ちなみにその話をし始めたのは私である。


「この前ね、商事の社長が見学にいらっしゃったのですけどもね。いやぁーひどいのなんの。ダンジョンマスターは権力階層の筈なのにもっと働けだのお前達が怠慢なせいで客が限られるのだの、本当にひどいものです。」


「あー、ありましたねそんなの。」


私が先日起こった話題をタナカ士爵にするとナガノ士爵が相槌を打つ。


「もっと給料を増やせば問題ないのですけれどもね。」


「あー、ササナミさんのまた始まった。ちょっと金銭欲強すぎはしませんか。1時間金貨1枚、日本円で10万円ですよ。私は貰いすぎな気もしなくもないですけどねぇ。」


私の言葉にナガノ士爵が反対する。


「いや、10万は私は少ない気がしますよ。ダンジョンが運営出来るようになってから気がついたのですがね、あの値段はあまりに我々を舐めすぎです。普通のダンジョンマスターはすぐにあの値段を稼げます。」


「...そんなにダンジョン運営は凄いのですか?」


タナカ士爵が私の意見に同調してナガノ士爵が興味を持つ。

タナカ士爵は独立しているだけはあってあの給料の安さに気付いていた。


「我々以外にダンジョンマスターが就職していないのが証拠ですよ。あの給料は明らかに舐めています。ナガノさん、あなたもダンジョンをはやく自律できるようにした方がいいですよ。」


「そうですか....」


タナカ士爵とナガノ士爵がこの話題を話しているところを見て私は満足していた。

私がこの話題を始めたのは彼らにこの仕事に不満を持ってもらいたいからである。


「そう言えばタナカさんのダンジョンは何人人がいるのですか。」


話がひと段落したように思えたので私が疑問を投げかける。


「5000人ですよ、5000人。我がダンジョンは現在黒字です。」


「5000人...凄いものですね。」


私が彼を褒める。


「5000人で大体どれほど稼げるのですか?」


ナガノ士爵が先ほどの話の続きとばかりに疑問を述べる。


「ダンジョンというのはですね。主に2つの収入源があるのですよ..ええ、そうです。まずは人間が出す魔力収入、そして人間が生産する税収入ですよ。で、我が家の場合は魔力は黒字なんですけれどもね。税はどうやって集めているかと言いますとね。あの、取引なんですよ。」


「取引?」


タナカ士爵の説明にナガノ士爵が反応する。


「そうですよ。どういう取引かと言いますとね。まず食料の生産をね、人間共にやらせるのではなく家臣達で独占させるのです。そして、人間達にはシャベルとピッケルを渡して、あの、うちの領には鉄鉱山があるのですけれどもね、それを掘らせるのですよ。で、その掘った鉄とね、私が独占している食料を物々交換するのですよ。それで利益を得ている訳です。もちろん他にも交換しているものがありますよ。あの、糞尿が地下世界では重要な資源、というのは知っていますよね。それも人間達が自分らで集めて取引させています。他には私たちの方からは衣服だったり魔道具だったり道具だったり。逆に人間達は衣服や石細工を作って取引させています。...まあ、そんなところですか。」


「....勉強になります。」


タナカ士爵に私は礼を言う。


「まあ、初めのうちは苦労するものです。地下世界と言うのは本当に仕事がないですからね。私がやらせているのも基本的に加工業のみですよ。あと、一番苦労するのが地上からの資源の回収法ですよ。これだけはどうにもなりません。」


「あの、話の途中で悪いのですが。タナカ士爵はどのような資源の回収法をしているのですか?」


ナガノ士爵がまた質問をする。


「ウルフ系の使ったやつ..皆さんと同じですよ。ウルフを大量運用して地上で狩りを行わせ、資源の回収を図るのです。あと、サメ系の魔物を運用していますね。」


「タナカさんの領は海沿いでしたね。」


領地が海沿い、私と同じだ。


「ええ、その通りです。ただ、採算は良くないですね。やはり少ない投資で大量運用できるウルフ系が強いです。」


「へー、なるほど。」


「ナガノさんは一体何を運用していますか。」


今度はタナカ士爵が問いかける。


「私もウルフ系ですよ。まあ、まだ運用に戸惑っていますけど。」


「そうですか....ササナミさんは?」


今度は私に問いかける。


「あの...スライムを直接運用しているのですが。」


「スライムを?あんな弱い魔物でどうやって?」


ナガノ士爵が疑問を述べる。


「ほら、湖なんかあるでしょう。あそこの沈殿物を集めるのです。私はそれでそこそこできるろ思うのですが...」


「....ああ、知っています。知り合いがやっている方法です。」


タナカ士爵が知っているという。

私だけがやっている方法だと思っていた自分が馬鹿だった。


「そのお知り合いはどのような運用を行っているのですか?よろしければ参考にさせて頂きたい。」


「ええ、彼のやり方は少し違いましてね。あの、川があるでしょう。あそこに罠のようにスライムを配置するのです。すると上流からいろんなものが流れてきますからそれで資源を回収するのです。まあ、話によると安定して資源は入るようですけどウルフに比べれば少ないようですね。」


結論を見れば私が導き出した答えと同じだった。ただウルフ系よりも収入が小さいという情報は知らなかった。


「やっぱり。ウルフ系の方が鉄板ですか...」


「そうですね....まあ、ササナミさんの所は随分北の方でしょ。そういう場所ならむしろそちらの方が収益をあげやすいかもですね。成功をお祈りしますよ。」


「はは..ありがとうございます。」


私はスライム式の資源収集を気に入っていた。シンプルであるしなんとなく改良の余地がある気がしたからである。ある程度研究した分野であるし、しばらくはこの方法で運営していこうと決めた。


「へぇー。おふたりは色々研究なさっているのですね。私なんてこのような機会でしか知りえない情報ばかりです。あの、他にも色々教えていただけませんか?」


「あ、私の方からもお願いします。タナカさんの話はとてもためになりますし、尊敬できます。我々の師匠、先輩としてご無理のない範囲で教えて頂けないでしょうか。」


ナガノ士爵の言葉に続き、私は褒めちぎる。


「いやぁー、ササナミさんはお上手ですな。でも、んー。そう言われましてもですね。何から教えれば良いか。あ、スライムを使ったサイクルについてお話しましょうか。」


「スライムのサイクル?....あのスライム、家畜、人間、糞尿、スライム、のサイクルですか?」


「そう。それです。」


ナガノ士爵はこの辺は流石に知っていた。


「あのサイクルはですね。自然のサイクルを真似ているのですよ。自然って、ほら。植物、動物、人間、糞尿、土、植物、ていうサイクルでしょう。でもこのサイクルだとエネルギーが減っていってしまうのですよ。」


「エネルギー?」


エネルギー?


「そうです。エネルギーです。人間や動物って動く為にエネルギーを使っているでしょう。ですからサイクルを繰り返しているうちにそういう所にエネルギーが使われますから、だんだん受け継がれていくエネルギー量が減っていきますね。....でも現実はそうじゃないでしょう。普通の自然社会はちゃんとサイクルが成り立っています。何故なら、植物が太陽光で光合成をするからです。ですからエネルギーが枯渇することがないんですね。」


「..ああ、そういうこと。」


地球の学問を知っていれば誰でも分かることだ。つまり光合成で自然が回っていると。


「ですが、地下世界に光はないでしょう....基本的に....」


タナカ士爵が窓の外を見る。外では魔法で光る人工太陽が輝いていた。


「...ですから、地上の資源を地下に持ち込むことで、地下のサイクルのエネルギーが枯渇しないようにしているのです。....私が言っていること分かりますよね?」


「ええ、大丈夫です。」

「分かりますよ。」


私とナガノ士爵が答える。


「で、裏返し言えば地上からの資源量によって、地下のサイクルのエネルギーの総量も決まってしまうのですよ。...これも分かりますよね?」


「地下のサイクルのエネルギーの減衰量と地上からのエネルギー回収量は等しい。地下のサイクルのエネルギー減衰量は割合的に決まっているから。地上からのエネルギー回収量に地下のサイクルのエネルギー量が左右されるという事ですね。」


「ん!?ん!?ん!?」


タナカ士爵の言葉は私はなんとなく理解出来たが、ナガノ士爵は理解出来ていないようであった。


「ナガノさん。要は地上からの資源回収量で地下で養える人間の人数が決まるということです。」


「......なるほど?」


私の説明にナガノ士爵は圧倒的理解を示し、最上級の感銘を受けていた。


「...まあ、そういう事ですから。ダンジョン運営は地上の環境に影響される。....そして地上の資源回収量には上限があるからダンジョンの成長にも上限があるのです。」


「なるほど上限があると。」


タナカ士爵はさらに続ける。


「一応、上限を突き破る方法も有りますがね。あの魔道太陽もそうです。魔力を使い、光を生み出すことによって地上のサイクルを再現しているのです。.....まあ、あの太陽はメチャクチャ高いですから普通は大量の魔道ランプを運用した工場型農園を行っているところが多いですけどね。」


「へぇー。」


非常に為になりえた。


「今日は本当にありがとうございました。」

「ありがとうございました。」


「いえいえ、そんな。我々は運命共同体なのですからお互い助け合わなければ。」


彼に感謝した。


............


この日、私は仕事の後いつもの様に他領の偵察兼観光を行っていたのだが驚くべき発見があった。....まあ、よく考えてみればそれもそうだろうなという内容なのだが、私はそれに今まで気付かなかったのだから大きな発見だろう。


この場所はとある伯爵閣下が納めるダンジョンであり、空には人工太陽が輝いており、街も賑わっていた。

私は他人のダンジョンの領地を観光した後、腹が減ったので食事をしたかった。

ただ、気づくと自分の財布がないことに気づく。....どうやらすられたようだ。幸い私の持っていた物にはそこまで高額な金額は入っていなかった。もちろん、心持ちは良くなかったが。

私は資金を調達する為に両替商へ行った。魔力を換金するのだ。

私が発見したのはそこでの事だ。

魔力との換金レートが違ったのだ。


コウトでの魔力、金の交換比率は4mp=1gであった。私がよく使う金貨は25g金貨だ。つまり100mp=1金貨となる。

で、今私がいるこの土地ではと言うと。魔力、金の交換比率は3.6mp=1gであり、魔力の値段が高かった。90mp=1金貨である。


理由を受付で聞いてみたところ、ここでは魔力の需要が高いからであるという。


私がいつも金に両替をしている場所はコウトにおいてある銀行である。そしてその銀行は公爵領直営の銀行であった。魔力と金貨の比率がいつも定額であったし、手数料もそこまで取られない。恐らくダンジョン世界で最も有名な銀行であったし、公爵領という圧倒的な後ろ盾があったからまるで中央銀行の様な扱いを受けていた。

だが、私は疑問に思った。魔力とはいわば消耗品である。魔道具や魔法に使われしている。だから寒い時には暖房型魔道具、作物の収穫の時には転移魔法など需要が安定していない。また、魔力は安定して供給されるものではない。魔力は人種や魔族、ダンジョン内で殺した生き物から発生するからである。

つまり何が言いたいのかと言うと、需要と供給が安定していないのだから、魔力の価値と言うのはまるで作物の様に変わるはずなのである。

だが実際は、何時いかなる時も魔力は銀行などで金と一定の交換比率で取引されているのである。


受付の人は需要が高いからだという。一つ疑問を聞いてみた。


「"需要"と言いますけれど、魔力って魔道具を使用するのに使いますよね。普通、魔道具は自分の魔力を使いますから金を払ってまで買うとは思わないのですけれど...」


「いえ、結構使いますよ。魔道具と言っても色々ありまして、例えば水を自動で汲み取る魔道具もそうですし、運搬、農業、照明、鍛治...とにかく色々なところに使われています。そしてそれらの魔道具は基本的に人間1人の魔力では動かせない物です。ですから、魔力はとても需要があります。」


受付の方が答えてくれる。そう言えばこのダンジョン世界は一部の産業が機械化されていたり結構ハイテクであることを思い出した。でも、その説明で魔力が一定である理由はわからなかった。


............


両替商を出た後私はしばらく物思いに更けていた。

"交換比率が土地によって違う"

この事実が何か金儲けに使えないかと考えたのだ。

両替商を自分で経営してみるというのも手である。元手となる資金はまだまだあった。


でも何処で開業しようか。供給を行うには必ずそれを満たす需要がなくてはならない。しかし考えてみればコウトは既に両替商として最良と思われる公営銀行があるし、きっと他の土地も既に店が出ていて需要が満たされているかもしれない。


まあ、チャンスがないとは思わない。この地下世界、ダンジョン事に色々特色がある。きっと魔力という名のガソリンが全く足りていない場所もあるに違いない。そこを見つけてしまおう。


ダンジョン廻りの楽しみが増えたと私は楽観的に考えることにした。


............


彼との約束から一週間がすぎた。

私は自分のダンジョンの中、レッサーヴァンパイアと子供達の元に赴いた。


私が着いた時、子供達は寝ていた。ただ、レッサーヴァンパイアだけは起きていた。この時間は私は起きている時間である。日が見えない地下では時間の感覚が狂うのだろう。


私はレッサーヴァンパイアの報告を聞いた。


彼は地下生活がいかに大変であったかを知らせたいのかは知らないが、非常に事細かに説明して来た。


食べ物...何とかなった。ただ、塩が欲しい。毎日肉だと飽きる。水はキングスライムが天井から垂らしていたおかげで困らなかった。

子供達...基本的に大人しい。読み書きを教えた。料理などの作業を手伝ってくれる。

生活感...大量の物資を要求してきた。トイレは何とかなった。ベットが足りない。


私は彼が要求して来た事を頭の中のメモ(ダンジョンコアの機能)に書き記した。まあ、彼は必要な物を箇条書きにするなど非常に贅沢なことを言っている気がしたが、私が彼らに求めているのは自給自足である。ベットや服、贅沢品は全て地下にある物だけで用意してもらわなければ困る。私はその種の事を言った。


「.....頑張ってみます。」


彼の反応は許してくださいと言わんばかりの反応であった。私は同情出来たのでなにか労いの言葉を掛けたかったが、結局は思いつかず相槌を打つ他になかった。

その後彼の元を去った。



私は外に戻ると、頭の中に書き記した彼からの要求のメモを紙の用紙に書き写した。それをミリアに渡して、コウトで買ってくるように言った。彼女に金貨を渡した後、待ち合わせ場所を決め転移させた。

私は風呂に入った後寝た。


............


その後の1週間後もまた同じ事をした。

細かな調整を続けて行くことで最適解を見つける。初めてやることには大切な工程だ。


レッサーヴァンパイアは1週間も経つと様々な事柄に挑戦するようになった。豚の魔物の骨や皮を使い簡単なベットを作った。骨を石などで削ってナイフを作った。年長の男子の1人を狩りに連れていった。


私は彼らの手探り感溢れる生活を見て楽しそうだなと馬鹿なことを考えたりしたが、本人達は真剣であった。私の命令に従い、何とか子供達を誰にも頼らず生活出来るようにさせようとしていた。ただ、彼らがどんなに頑張ろうと足りない物もあった。代表的な物が塩である。

人間の食生活に欠かせない塩。もちろん調味料という意味ではなく生物学的に必要という意味だ。地下で塩を手に入れようとするのなら岩塩がまず初めに思い浮かぶ。地下世界において岩塩はほぼ主流と言っていい程使われている。もちろん理由は地下にいるから。私が廻った街の中にも岩塩坑を採掘している街があった。

であったから、私はダンジョンマスターとしての機能を最大限活用しここ一週間ダンジョン周りの地中を探索したのだ。非常に面倒くさく費用がそれなりに掛かったが。

結果から言えば鉱脈は見つかった。彼らがいる半球ドームの斜め下、7kmキロの場所である。これで彼らが自給できる、と思ったがどうにも遠い場所だ。ここに1人でも人員を配置すればいいのだがそこで自給自足させなければならない。

私はこのダンジョンの拡張を決めた。


このダンジョンはキングスライム直下、地下500mの半径1キロの半球空間を中心に植物の根のように細長い洞窟が各所に伸びており、そこからキングスライム中心としたスライムコロニーが生成した飼育用スライムが湧き出している。それをダンジョン内に放った飼育用の豚の魔物が食べ、それを人間達が食べる。これが現ダンジョンの状況だ。

ここに岩塩鉱脈まで繋ぐ通路を作ろうとしている。当然7kmの場所まで毎日塩を掘りに向かうというのは現実的でない。だからそこに誰かに住んで暮らして貰わなくてはならない。だがキングスライムからも7km離れた場所である。そこまでスライムコロニーの触手は届かないし、それに伴い食料となるスライムが湧かないのだから人間の食料となる豚の魔物も来ない。つまり食料の時給ができないのだ。困った問題である。


ただ、解決法ももちろん思いついた。単純にスライムコロニーを増強するのである。岩塩鉱脈でスライムが湧けば済む話だからだ。


そして私は今外にいる。

ただスライムコロニーを増強すると言っても方法は2つあった。一つ目は現存のスライムコロニーから触手を伸ばす方法。メリットはそこまでコストが掛からないこと。デメリットはスライムの生成効率が下がること。これはスライムを生成する養分を7kmも運ぶためにそれなりのエネルギーが必要だという事である。

二つ目はこの場所に新たにスライムコロニーを作るという事である。メリットは効率を低下させず、将来のダンジョンの拡張にも有益である。デメリットは初期投資が多い事である。つまり一つ目とメリットとデメリットが逆である。

ただ二つ目の方法を実行には条件がある。それは地上に湖などのスライムが資源を回収するために必要な地形があるかどうかだ。これはどうにも運以外でどうすることも出来ない。

だから私は確認のために岩塩鉱脈の直上、その場所にいるのだ。


私は土の上に立っていた。地上の上なのだから当たり前なのかもしれないが、もし大海の島の上であったのならその土地の価値は全く違ってくる。私は感動していた。この大きな湖の上に島があり、その場所がまさに岩塩鉱脈の真上であった。いい場所を見つけた。ここをなにかに出来ないだろうか。

そんなくだらないことで感動をしていたがそれは目的を達成できたための余裕だろう。この湖があまりに大きかったおかげで7km程離れた場所でも水と資源の回収の目処がたった。


あと私がやるべき事は穴を掘りスライムを連れてきて人間をぶち込むことだ。


私は大規模なダンジョン改修計画を考え付いた。

誤字脱字、文法のおかしい場所などを教えて頂きますと作者が喜びます。

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