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蛙は哀れど無力を知らず幸せなり  作者: メリメリピーノ
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暑くなってきましたね。

考えて見れば少し数が多かったかもしれない。私が彼らウルフ達を買ったのはただ単純に彼らが狩りを出来るか実証するためである。

私はオスメス一匹ずつ欲しいという欲の為に倍の値段を使ってしまったのだ。


商会は私にウルフ達を家臣にするのかと聞いてきたのでyesと答えた。すると商会はウルフ系の魔物はとても主人に忠実であり、ハイウルフのみを家臣にすれば良いと教えてくれた。素直にそうした。


その後、私はダンジョンの上に有る湖の辺へ移動した。

ここは現在昼であった。

私は連れてきたウルフらを整列させると、ハイウルフ1匹とウルフ4匹の一個分隊を2つ作らせた。

それぞれA分隊B分隊と名付けた。


私は彼らの編成の様子を見てハイウルフとウルフが言葉のような物で意思疎通をしていることを発見した。私はハイウルフが準知的生物だと言う事を説明されており、人間の言葉を理解していることも同時に教えられた。もちろんもとが狼である彼らは人間の言葉を話すことは出来ないが、首を縦に振ったり横に振ったりなどのジェスチャー等で意思疎通を図れることも教えられた。ただウルフ同士が吠えたり行動などで意思疎通を行う事が出来ることは知らなかった。


私はA分隊の隊長たるメスのハイウルフに「英子」と名前を付けてこう言った。


「英子。お前は東、太陽が昇る方の方角で狩りを行え。そしてその肉を持ち帰って来い。報告は一週間後、太陽が7回沈んだ日の正午にここに集まるように。また食料が見つからなかった時のために干し肉を袋に詰めてここに埋めておくから覚えておくように。では行け!」


私がそう言うと彼女らは東の方角へ走っていった。


また私はB分隊の隊長たるオスのハイウルフに「米太」と名前を付けてこう言った。


「米太。お前は西、太陽が沈む方の方角で狩りを行え。そしてその肉を持ち帰って来い。報告は英子と同じく一週間後に行う。その日にここに集まれ。また食料が埋めてあることも覚えておくように。では行け!」


彼らは西の方向に走っていった。


米英はこの土地の侵略に乗り出した。


............


私は彼らを見届けた後、また交易都市コウトに転移した。

一週間後が楽しみである。

そういえばここコウトは公爵領最北端の都市だ。なぜ最北端のこの都市が交易の中心になっているのだろう。不思議に思ったからミリアに聞いてみた。


「えっと、この星が丸いのは知っていますよね。そしてこの星の陸地は主に北半球に密集しているのです。もちろん陸地にはダンジョンが多く点在しているわけで、結果的にダンジョンは北半球に多く存在している事になります。で、それらのダンジョンと転移魔法で航路を結ぶとなると最も各航路が短くできる場所が北極なのです。もちろん公爵領は北極を領土として持っていませんから結果的に最北端のこの土地が選ばれるわけです。」


へぇーなんかすっごい合理的。


この都市に帰ってきたはいいものの私は一週間何もすることがない。そう思った私は前にミリアが言っていたダンジョンマスターしか使えない転移魔法を使用したアルバイトを行おうと考えた。


アリマ商事。主に運送とそれによる商売でも受けている大企業である。以下商事会社と呼ぶが、この企業は貧乏ダンジョンマスターと多数契約しており遠隔地へ物資を運ぶ仕事も行っている。

今私はその商事会社の受付にいる。もちろんアルバイトをするためだ。


私は受付の人物に目的を伝えると担当と名乗る人物に個室に案内された。そしてこの仕事の概要を教えてもらった。

一、この仕事は時給制。

一、時間内のノルマあり。

一、時給およそ金貨5枚程度。

一、通勤時刻は昼間の間でパート制。

一、転移魔法を発動時にかかる費用は会社持ち。


大雑把に申し上げれば以上である。

それにしても時給金貨か...私の食費が金貨千枚だからおよそ200時間働かなくてはまともに食べていけないではないか。1日8時間働くとして週五日、一年に凡そ50週あるから5×8×5×50=......金貨10000枚か....一年で10億円稼げるとは前世の感覚ならすごいと思えるかもしれないが残念ながら我々はダンジョンマスターだ...うーむ。それに転移魔法は魔力さえあれば世界中どこへでも物資を一瞬で輸送できる最強の輸送手段だ。それの使用料が1時間何度も使えるという条件で50万円って...ダメだこれは、おそらくこの条件でしか受け入れざる負えないほど貧乏なダンジョンマスターがいるのだろう。

そうだ!


「そういえばこの会社で私が客として物資輸送をするとしたら一回幾らほどかかるのですか。」


「いえ、運ぶ物資によっても色々違うので...この場ではわかりませんね。」


「そうですか...判断に必要な情報なので教えていただけませんか?」


「いえ。お客様の情報も入っておりますので、そのようなことはできません。」


「いや、別に私は個人情報が欲しいなどとは言っておりません。一体どのような形で価格設定をなされているのですか?」


「うーん。そうですね..例えば輸送する場所の距離だとか、物の大きさだとか重量だとかで値段が変わりますね。」


「なるほど、そうでしたか。」


くそが!従業員に回数で給料を払って、顧客に割合で請求するなどなんて商売しているんだ!

きっとぼろ儲けしているのだろう!

こんな..こんな商売など!!


「いやぁ、よく分かりました。これはいい仕事のようですね。ぜひ働かせていただきたいです。宜しくお願いします。」


なんて美味しい商売なのだ!!

これはノウハウを取得して独立するしかない!


「本当ですか?いやぁーありがたい。これから是非宜しくお願い致しますよ。」


............


実際はモチベーションを上げるという理由からである。

事実この業務は私が行える中で一番給金が大きいことが予想できるし、しかも物を魔法で送るという簡単な任務こなすだけだ。もちろん最も美味しい思いをしているのは会社の方だし、そう考えると途端にやる気がなくなるのである。

私が現在どれだけ資本を持っていようとも、業務が初めてやる分野であるのならノウハウはとても重要になってくる。まあ会社を立ちあげるのは、仕事が落ち着いて自分でも出来ると思える場合であったらだが。


今日は体験だけということで仕事の様子を見させていただいた。


「今日は一人の方が業務を行なっています。現在、我が社と契約しているダンジョンマスターは貴方を含めて3人になります。」


場所は移動して大きな広場に出た。都市の中央に近い土地だ。

そこは相変わらず人気が多く周りがうるさかったが、広場はそこそこ広い土地であり荷物が野ざらしで積み上げられていた。

案内人と歩いていると積み上げられていた物資の横に男性2人を発見した。彼らは一枚の紙を見ながら話し合っていた。


「こんにちは。調子はいかがですか?ナガノ士爵。」


私を案内していた男が彼らに話しかける。

2人のうちの一人がすぐさまこちらに振り向いた。東洋顔の男性、ナガノ士爵であろう。


「あ、課長。すこぶる元気ですよ。...そちらの御方は?」


「あ、彼はですね。今度からここで仕事をすることになりました。ササナミ士爵様です。」


「佐々波です。宜しくお願いします。」


お辞儀をする。


「今日、ササナミ様は見学のためにいらっしゃいます。是非彼にに仕事を見せてやってください。」


「ええいいですよ。ササナミさん宜しく。」


「ええ、こちらこそ宜しくお願いします。色々お話を聞かせてください。」


............


作業は非常に単純化されていて、運び込まれた荷物を指定の座標に送ったりまた持ってきたりしていた。ただ座標は指定すれど正確な場所は転移魔法時に出る脳内3Dで微調整するため、長い時は10分も指定場所を捜索していた。

また回数制の労働なのも納得出来ることがあった。例えば大きな都市などに荷物を運ぶ時は一変に多くの物を運ぶが、逆に少ないものを運ぶ時は家や地下など隠れた場所に送りたまにその荷物の立会人もいた。やはりこの仕事は物の流れを扱うのだから供給が安定した回数制なのだろう。


ふらふらと仕事の様子を眺めていたら昼になったので、彼を昼食に誘った。


彼は行き付けの店があると言い私を仕事場から少し離れた通りにあるおしゃれな店に連れてきた。

彼はこの店のおすすめのメニューをまるで自分のことのように自慢してきた。私はそれを選んだ。


周囲を見回しているとおしゃれなと言うかなんというか..軽井沢の別荘地群の中にある西洋料理店..の様な感じだった。切子ガラスぼ入った木製の棚やその上に飾られた猫の蝋人形と薔薇の造花などなんとも言えぬ雰囲気だ。

そして彼の得意げな顔からここを選んだのは彼が見栄を張りたいからだと予想できた。私は彼に見栄を張られる価値のある存在であることが嬉しかった。


「いいお店ですね。いつもここに通われているのですか?センスがいいですね。」


「いえ、時々ですよ。たまにここに来たくなるのです。」


人を褒めると自分も嬉しくなる。


「いつもこの時間に仕事をされているのですか?」


「ええ、毎日午前中に仕事を行なっています。食後に自分のダンジョンに戻る予定です。」


「へぇー、そうなんですか。」


そういえば。


「あの、少々お時間をいただけませんか?私はここ数日前にダンジョンマスターになったのですがどの様にダンジョンを運営すればいいか分からないのです。お話を聞かせていただけませんか?」


この仕事に就いた理由の一つにダンジョンマスターと面識を持ちたいと言うことがある。もちろん知り合いになりたいだとかお話をしたいなどというほのぼのとした理由ではなく、私が仕事を独立する時に引き抜けたら業界を独占できるかなーという邪な理由であるのだが。


彼は手を上げると腕時計を見た。魔道式の腕時計だ。商店街で見た事がある。


「うーん。ちょっと今日予定が悪いですね。また今度でいいですか?」


「はい。分かりました。」


ちょっと早急知れないな。やっぱ初対面の人物話はしたくないかな。


その後私達は取り留めのない話をして解散した。


............


その後私はもう一度商事会社の方へ行き、契約の方を終わらせた。私も週三日の午前に仕事を入れた。


その後アパートに帰った私はその他の時間をどうしようかと考えた。

どうだろう、ダンジョンに必要な物を先に揃えておくというのは...そうだ、ダンジョンを開くとなったら人間を買わなければならなくなる。奴隷市場に下見でもしに行こうか。


私はミリアを呼び出し支度をした。



結果からは不作だった。

そもそも奴隷なんてものは店の中に展示してあるもので道端で叩き売られているものでは無い。それだと店の中に入ればいいのだが今は買う気がないのでそれだと失礼にあたる。


仕方が無いので生活必需品を整え、ダンジョンの方に今からでも自分の部屋のようなものを作ろうと考えた。

早速ダンジョンに飛ぶ。


............


ダンジョンの方は相変わらず寒かったので慌ててアパートの方から防寒着を取り寄せた。


ダンジョン内に自分の生活スペースを作ると言ってもまずはその部屋自体を作らなければならない。

ダンジョンマスターの力で早速地下に空間を作ることにした。

まずはじめに考えたのは空気、通気性である。居住スペースなのだから空気の入れ替えをしなくてはならない。もちろん地下は密閉空間だから外から空気を持ってくるというのも難しいかもしれない。

そのようなことを考えながら脳内の地下のクリエイト画面を見ていたのだが洞窟のような場所でもいいかもしれないと思い場所を移すことにした。


移した場所は湖と山の境目の場所である。この地域は岩石と土ばかりで多少気も生えていたが完全に不毛地帯であった。

私は早速、山の岩石を調べて見たが泥岩等ではなく花崗岩?の様な石英が少々入った硬い岩石であった。

これならば崩れる心配がないと思った私は早速横に穴を開けていった。


私は家の設計などしたことが無い。だから今行き当たりばったりで我が家を作っていた。まず玄関に入ったら何があるか。廊下かな?と思い一直線に半円にトンネルを50mほど伸ばした。そこから両横に扉と部屋を4セット作った。一つは自分の部屋、もう一つはミリアの部屋、もう一つは生活スペース、最後は倉庫かな。

最後に壁を魔法で補強すれば外側は完成だ。

次に必要なものはドア、電灯、ベット、トイレかな。


ミリアと共にコウトに飛んだ。


............


スライムというのはとても便利な生き物で基本的に有機物ならなんでも食べる、形を何にでも変えられる、魔物なのに魔力を生成できる、などの多大な可能性がある。特に資源の乏しい地下世界ではスライムに排泄物を食べさせてそれをまた家畜の飼料にするというのが一般的に行われている。また特殊なスライムを使い、何にでも形を変えられる能力で金属の鋳造の型に使用したりもできる。そして最も生活に使用されるのが魔力生成機関としてである。スライムは確かに魔力を生成できるが人種や魔族とはその方法が全く違う。人種や魔族は生きているだけで対価なしに魔力を生成できる。しかしスライムは対価を要求する。

その対価とはエネルギー、つまり食料だ。彼らは有機物を食べる事で魔力を生成できるのだ。もちろん魔力だけを生成するのでは無い。一般的なスライムは魔力をほとんど生成せず自身の体力との子孫の生成にそのエネルギーを費やす。ただ多くの処置を加えられ改良された特殊スライムも存在する。

例えば発魔スライム。与えられた食料を使いほぼ100%の効率で魔力に置き換える改造スライムだ。これは市販されておりスライム式魔力発動機として瓶詰めにされて売られていた。瓶からは一本の魔力を通す糸"魔道線"が出ており、それを各魔道具に繋げることで明かりをつけたり風を起こしたりできる。

もちろん瓶では無く樽のような大型高出力なものもあり、家庭に魔道線を張り巡らすことでまるで電化された現代の様な生活ができる。


私はコウトにおいてその樽と各家庭用魔道具を揃えた。また資材屋に行きドアや棚、椅子机等の家具も揃えた。


帰ってきた我々が最初にやったのはドアの設置と魔道具と魔道線網によるあかりの確保だ。

まずドアの設置だがこれは苦戦しなかった。私の土木魔法は岩石をとても細部まで造形できるからだ。

次に魔道線網の構築だがスライム式魔力発動機の樽を設置しようとした時ミリアから提案があった。彼女曰くそれをトイレにせよとのことだ。考えて見れば糞尿も有機物。確かに一石二鳥ではあるが....


「えっと、その樽は元々トイレ用として設計されているのですよ。ほら見てください。樽の下に穴が空いているでしょう?あれで余分な水分を排水するのですよ。」


「.......エコだね。」


結果、岩石を便座のように造形してその下に樽を置くようにした。今は生活スペース片隅にに仕切りをして置かれている。


その後家具やキッチンや魔道線網、その他必要な資材を順次揃えて行った。

ちなみに最も金のかかったものはベットである。やはり人生の3分の1を過ごす場所なのだ。出し惜しみできない。


最後に風呂場を作ろうと思ったが現在は保留だ。温泉を引けないかと思ったが泉源が何処にあるのかも分からず、しばらくはコウトの方で過ごすため今は必要ないと思ったのだ。


転移魔法があるから楽なものの走り回ったため相当疲れた。今日一番の楽しみであった高級ベットの使用のため体をお湯で拭いたあと自分の部屋へ向かった。


............


今日はいつもより早く起きた。今日は例の商事会社で午前中に仕事が入っているからだ。早く起きたにしては疲れがなかった。きっとベットがよかったのだろう。

この家の生活スペースに向かうと昨日設置したキッチンにミリアが立っており食事を作っていた。

出てきたのはベーコン入りの目玉焼きとパンで昨日簡単なものでいいと彼女に言ったことを思い出した。


食後会社へ出社した。

出社と言っても建物の方でなく広場の方へだが、そこへ転移すると昨日見たよりも多くの人がそこで働いていた。

私が事務所へ行くと昨日私を案内してくれた方、課長がいらっしゃた。私は挨拶をした。


「おはようございます。今日からよろしくお願いします。」


「はい、おはようございます。今日は私が付きながら仕事をしていただきますので頑張りましょう。」


その後仕事に入った。


今日も昨日のナガノ士爵が来ており肩を並べて仕事に当たった。

この仕事においての輸送先は主にダンジョンの地上部分、地方都市等のところでそこに用意された物資集積場から物資が輸送されていた。聞いてみたところこの物資集積場はその地方の会社が持っている土地だそうで、その会社らと主に契約している様である。私は隠れてその場所の座標を紙に記録しておいた。

またその会社らの社員と思われる方を見かけた。輸送の際に立ち会っていただけだがきっとなんか重要なものが物資の中に含まれていたのかもしれない。

輸送される物資は鉱物、野菜や果物、魔道具等の単価あたりの値段が高いものが多く、特に鉱物類では銀、銅、魔石等がを多く輸送した。また比較的大きい物も輸送された。丸太や石などである。地下世界では木が育たないため、木材は非常に高価なのだ。


正午になったためナガノ士爵を昼食にまた誘った。今度は彼は仕事場近くのレストランに私を案内してくれた。

今回は世間話で食中の会話を済ませ、注文した大量の炭水化物で腹を満たした。

まだ遠慮しがちな会話であったがお互いにその人物像を共有できたと思う。


彼と別れた後私はアパートに帰り普段着への着替えを済ませた。その後転移魔法の準備を初めた。行先は先ほど仕事場にて物資を送った輸送先の広場..の近く。気になっていた取引の仕組みを調べるべく現地調査だ。


ついた場所は夜の街。あちらこちらで街灯が点灯していてとても綺麗だ。この場所は街の片隅の場所であり、私はここがどのような場所なのか知らないため街の中心部へ向かう事にした。


街は夜の筈なのに昼間のように賑わっていた。情報が欲しかったの周りをウロウロしていたら誰も居ない小道に古臭い酒屋を見つけた。その店の店員は客が居ないから暇だろうと思いその酒屋に入った。

酒屋の初老の店員が「いらしゃい」と声をかけてきた。店内には他に客はおらず、こじんまりとしていた。私は席につくと酒と軽食を頼んだ。彼はすぐに食事と酒を出してきたので私は話し始めた。


「実は私は今日初めてこの街に来たのだよ。」


「へぇ、お客さん。どこから来たんですか?」


「コウトだよ。知っているか?」


「いえ、知りません。」


コウトは交易都市だ。きっと行商人くらいしか知らないのかな。


「コウトは知らずともカンダ公爵位は知っているだろう。」


「ええ、その方なら知っています。この街の魔石をよく買ってくれる方です。」


魔石?


「この街の特産は魔石なのか?」


「ええ、この街はそれ位しか産業のない街です。お客さん、この街に何をしに来たんですか?」


「ん?観光だよ。」


もっと情報が欲しい。


「そういえばこの街は何処のダンジョン所属なのだ?適当に来たからよく分からないのだ。」


「はぁ、よく分からないねぇ。ササキ子爵領ですよお客さん。」


「へぇー、ササキ..ササキ...」


知らん人だ。


「ここは太陽がないね。今は昼なのかそれとも夜なのか?」


「昼にございます。」


なるほど。街が賑わっているわけだ。

とそこで食事が終わってしまった。もう聞きたいこともあまりないし店を出ることにした。


............


私はこの街の広場に再び戻ってきた。この街の特産品は魔石だそうだが、私はこの街に物資を輸出した側だ。確か内容は主に食料だった記憶がある。ただこの広場には運び出されたのか既に物資がなかった。近くにこの広場を管理している組織や会社がないかと思い捜索を始めた。


広場で作業している人を発見。その人に声を掛けてみよう。


「すいません。作業中の様ですが少しお話を聞かせていただけませんか?」


「...あなたは誰です?」


「商人をしている者です。」


「商人?」


ここでダンジョンマスターだと言うと仕事場でバレる恐れがある。


「ええ、その通りです。この広場を管理している方にお話がありましてね。」


「この広場はこの街が運営している物です。ですからここの管理人は市長です。」


「そうですか。わざわざ教えていただきありがとうございました。」


この街の市長か。あって話を聞いてみたいがまた今度にしよう。

私が書いた座標の書かれたメモにはまだ沢山の数字がある。次の場所に転移しよう。


............


あの街を後にしたあと3つの場所に転移した。どの場所も地元の企業かその土地の行政機関が管理しているようだ。

まだメモには言っていない場所も残っているがさすがに疲れた。私はダンジョンに戻ると高級ベットに抱きついた。


............


それから6日が経った。私はこの間ずっと仕事と捜索を行っていた。また暇な時間にはコウトにある図書館に向かうことにした。元々大学生であった私にとってはかなり充実した生活を送ることが出来た。


今日は朝からずっと外にいて青空の元、ウルフらとの約束の場所にて読書をしていた。

日がてっぺんに差し掛かり、そろそろ弁当に用意したサンドイッチを食べようと思った時森の方から生き物の気配がした。


私はウルフらが帰ってきたと思い、本を置いた。

正体は確かにウルフたちであったが茂みから出てきたのはそれは頭ではなく尻であった。何かを引きずっているようである。


ウルフらの頭が見えたところで彼らとは別の物体が見えてきた。

出てきたのは毛深い鹿であり、白目を向いてなんともお気持ち悪い。


「お前達が捉えたものか?」


こくこくとハイウルフの英子が頷く。


「いつとったものだ?7日前か?」


ふるふる


「なら6日前か?」


ふるふる


「5日前か?」


ふるふる


「4日前か?」


こくこく


四日前か...4日間これをずっと運んでいたのか...


「食事はどうした。自分たちで取れたのか?」


こくこく


「いたのはこの鹿?トナカイだけか?」


ふるふる


「お前達が生きていけるほどいたか?」


....こくこく


うーん。


「あの、閣下。」


「ん?なんだミリア。」


私の隣で先程までお湯を沸かしていたはずのミリアが話しかけてきた。


「えっと、ウルフ達の運用方法が違うと思います。多くのダンジョンマスターはスライムに食べさせるのは狩ってきた獲物ではなく、ウルフの糞や残飯、そして彼らの死体です。ダンジョンを広範囲に建築し、そこで広く大規模にウルフ達を運用すことで効率よくかつリスクをあまり負うことなく地上の資源を奪取するのです。特に地上に出ることなく地下に引き籠りがちなダンジョンマスターがよく使う手です。」


「そうか...」


「ちなみにこの運用方法だとウルフ以外の動物も使えます。木の実を餌にする猿類の魔物、大量運用できるゴブリン類、そして海や湖で魚を取れる水系の魔物などです。そうだ、この湖にも魚がいますから水系の魔物を買ってみても良いかもしれません。」


「うーん。ん?」


ウルフらが皆頭をあげて森の方を見た。


「なにか来たのか?」


そう聞いてみたが。反応がない。


しばらくするともう一つの狼の集団、B分隊が現れた。ただどうにもおかしい。何も引きずっているように見えないが、足取りが変だ。


「.......」


理由はすぐわかった。ウルフの1匹が怪我をしているのだ。その1匹は前足を持ち上げながら3つ足で歩行していた。


「事故にあったのか?」


...ふるふる


米太が答える。


「襲われたのか?」


こくこく


「どんなやつだ?....お前より強かったか?」


ハイウルフはしゃべてないからyes、noで答えられる質問をしなければならない。


.......ふるふる


一瞬悩んだ。強敵のようである。


「こいつら普通のウルフよりは強かったか?」


こくこく


その後名だたる肉食獣の名前を質問していき、それが熊の魔物だということを知った。


「...ご苦労だった。その怪我したやつはミリア、お前が治療しておけ。あと、あの山の辺に私の拠点を作った。今度からそこを中心に活動せよ。...そうだな、今お前らを送ってやるか。」


転移魔法を発動する。


............


自分の拠点についた私は、自宅の隣に洞穴を作った。


「この洞穴を拠点にお前達にここら辺の警備を命じる。食料は自給自足で調達しせよ。また、なんか問題があったら私の自宅に来い。以上だ。」


そう言って解散させた。


その後自宅に帰った私はミリアが言っていたことを思い出しダンジョンの運営方法を再考し始めた。

色々考えているうちにトイレに入った私はあることを思いついた。

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