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初投稿です。
技術は進歩すれど人間は進歩していない。
このことを証明するのは実に簡単である。実際、人が大事にしたいものは自分であったり、家族であったり...つまり根本が利己主義的であるのだから他人を蹴落としてでも這い上がろうという輩が出てきて結果的に上下社会になってしまう。そしてその社会常識は歴史上全く変化していると言うには乏しい。つまり人間の根本...いや愚かさは進歩していないと証明できる。
今なぜ私こと佐々波涼がそのような社会学的な考えを妄想しているのかと言うと、ただ正直に負け惜しみにほかならない。
今日、我が就活生活においてここ一番!...という会社の面接を受けたのだが正直受かる自信がなかった。まあ端的にいえば周りはせめて二流、一流大学出身の自信の溢れる方々の中で私だけは三流の田舎工業大学出身生、そして彼らは自身の魅力をたっぷりと伝えられていたのに対して私はたどたどしく挨拶をして質問に答えるのみ。彼らから離れられ、会社を離れ今駅にいる事が少々ホットした気持ちにさせられる。
今までの話から誤解されている方もおられるだろうが私はこれでもれきっとした大学生、まだ将来性がありそして駅から自転車で20分のところの古びたアパートメントに暮らしているのだ。
最寄りの駅についていた私は駐輪場へ行き自身の自転車にまたぎアパートへ漕ぎだした。
夜風に当たっている私は先ほどのような学術的な思考よりももっと近未来的な心配をしていた。今日は疲れたから寝るか、飯を食うかだ。幸いカップ麺などのインスタント食品を箱買いしていた私は食事への労力を考えなくて良い。しかしその後に歯磨き、ごみ捨て、そして塩辛いものを食べたから飲料で口直し...私は疲れたのである。
ふと前を見ると数匹の蛾を纏った自動販売機が見えた。口直しに水は味気ないと思い緑茶を買うことを思いついた。
20分の半分の走行に飽きた私は自転車を降りるとポケットから財布を取り出し自動販売機を眺めた。炭酸飲料が欲を促すが自転車に乗るので却下。当初の予定道理炭酸飲料よりも20円高い緑茶買おうとした...まさにその時!
「......」
周りが突然光出したのである。
理解に苦しむ。
何をされているのかわからない。
大人な私はアニメやラノベなどとっくに見なくなった。いや、もちろん友達には未だ見ている人もいるし、決してバカにせずにそれに付き合い何作品か目をとうした。実際晴れとは趣味が合うのか面白かったし話のネタが増えることは得であった。話を戻し、なぜアニメやラノベの話が出たかと言うと正にそれであった。
魔法陣。
頭がくるくるな私はその一瞬でそれしか考えられず、だんだん目の前もくるくるしだした。
..........
「成功したようだな」
気づけば木造の部屋の一室。棚と机と生命体4体のこの風景画に私は唖然としていた。
先ほどの言葉を発した男は私の中央に立っており尻餅をついた情けない私を見下ろしていた。その男は青年、私と同じ年頃でスーツを着た日本人?であった。
「ミリア。彼に状況の説明をした後に彼とともに私のところに来なさい。」
「仰せのままに」
その男性はそう隣の女性に言い放つと彼のもう片方にいた剣を刺した兵士を連れて部屋を出ていった。目の前にはミリアらしい女性ともうひとりの兵士が残され、彼を見送っていた。
彼女が前を向く。
「えっと..私の名前はミリアと申します。言葉は..わかりますよね?」
頷く。
「よかった。えっと..お名前えを伺ってもよろしいですか?」
彼女の容姿は黒髪黒目出会ったが西洋系の外人さんであった。先程の男性と比べると身長は同じくらいであったので、身長はそう高くないことが伺え、美人ではなかったが愛らしい容姿をしていた。そんな彼女は先程と違い笑顔で愛想よく話しかけてきた。その対応に乗せられたように私も日本人をし始めた。
「佐々波涼と申します。あの、これは一体どのような状況で...」
「あの、ちょっと待ってくださいね。私も何から話せば良いか...んっと..いいですか、よく聞いてくださいここはですねあなたが住んでいた場所と違う場所、異世界なのです。」
「....異世界?」
いせかい...イセカイ...
「....地球じゃないの?」
「そうです。私たちはこの星をアトラスと言っていますね。」
「..では私を魔法か何かで拉致してきた訳ですね?」
「拉致?..いや...うーん..そうなるのかなぁ..あ、でも聞いてください。別にあなたをピンポイントで選んだわけでわなかったのですよ。これは、その..運が悪かっただけです、あなたの。」
混乱していたのか彼女の言葉の意味を理解しなかったが、この場で平静を装い現状確認を務めるということは危機がその場に迫っている状況でない異常事態において本能的に行動できた。
「なぜ私をここへ呼んだのですか?」
「えっと、順々に話をしますね。まずあなたを呼んだのは..ダンジョンマスターをしていただきたいからなのです。」
「ダンジョンマスターとは..「待って、質問しないで。んっ..ダンジョンマスターとは....」
彼女は話の要領が悪いのかやたら、えっと、んっと、が多かった。私は質問権を認められず、また頑張って伝えようとしている彼女にも申し訳なく、ただただ聞いていた。案の定内容は突発的でアレアレの話をしていたらそれに関連してこれこれの話を始めたり、これこれの話を聞いていたらこれはあまり話してもしょうがないと唐突に話を切ったり。だから彼女が話し終わった時私は確認という形で話をまとめたのだ。
「一、ダンジョンマスターとはダンジョンを管理する人のこと
一、ダンジョンマスターの仕事は魔力を集めること
一、ダンジョンマスターにはダンジョンコアという魔石があること
一、それを壊されたらダンジョンマスターは死ぬこと
一、ダンジョンコアが壊されない限りダンジョンマスターは不老不死であること
一、ダンジョンマスターは転移魔法などの高度な魔法を使える存在であること
一、ダンジョンマスターは代々異世界人...つまり地球人が務めていること
一、ダンジョンマスター複数人おり先ほどの男性えっと..ミヤマ伯爵もそれであること
一、ダンジョンマスターには爵位があり力関係があること
一、ダンジョンマスター達は迷宮連合という連合を組んでおり連合法という国際法があること
一、ダンジョンマスターは迷宮連合に強制参加すること....でいいかな」
「ええその通りです」
「......あの...拒否したら地球に返してくれたりは...」
「あ、それは無理です。魔法的に」
現実は厳しいから予想ができた。
こんな私でも実際ダンジョンマスターの仕事に少々興味が無いではないのだが..小心者なのだ私は。
ただ地球にはそう未練を感じなかったしこれから彼らに与えられるであろう"特権"は素直に嬉しかった。特に不老不死の部分。
倭の国の一人間に過ぎない私が自らを世界の中心だと豪語している中華の皇帝を差し置いて不老不死になる権利を手に入れた!
21歳の私は成人お迎えたことにより、歳をとることを実感し得てせめて不老であればどんなに人生が楽かと何度も思った。人生にチャンスなど1度きりとは言うが不老ならば何度も起こり得るし時代の変化を老いの悲観を帯びずに感じられるのは素直に理想であった。
ともあれ私に残された選択の道は一つである。そう言い訳してやや楽観的思考に陥っている私は素直にこう答えた。
「わかりました。お受け致します。」
「そうですか。ありがとうございます。」
「.......」
「............あ、そうだ伯爵のところにお連れするんだった、ついてきてくださいね。」
忘れているのかと思った。
..............
人生の中で最も長いであろう廊下な歩行が今終わろうとしていた。廊下は大理石の床にキンキラさとした豪華さはないにせよ壁の絵やドア横の棚などその一つ一つが丁寧な細工を施されており高級品であることが伺え、それが屋敷の大きさが図りしえないほど連なっていた。
彼女があるドアの前で止まる。
コンコン「失礼します伯爵閣下。ミリアです。新しくダンジョンマスターとなられる。佐々波涼様をお連れしました。」
「入れ。」
ドア奥から少々不機嫌さが伺える声がした。
彼女がドアを開ける。
彼女が部屋に入ったので釣られて入った。
私の目の前の風景は予想していたが見るからに渋みのある書斎で両脇には本棚、机などの調度品。奥にはその壁全面がガラスとなっておりそこから庭が見え、その手前に男性とその机があった。
そしてただひたすら大きかった。
伯爵は机から1枚の紙を取り出すと読み上げ始めた。
「私ことミヤマハヤオ伯爵位は連合法に従い新しくダンジョンマスターとなられるササナミリョウ士爵位に自らが製造したダンジョンコア及び魔力5千万mpを与えまた連合法司法試験合格者であり家臣のひとりであるミリアを与え"親"の任を全うする。....以上だ。ミリア。彼を倉庫までお連れしなさい。」
そう言うと、彼はその紙をしまい何らかの執務を始めた。
先程彼は私に士爵と言ったが、彼女の言っていた話の中に爵位の基準についての記憶があった。確か爵位はそのダンジョンマスターの持つダンジョンに住む知的または準知的生物の数によって決まったはずだ。確か一億人以上が公爵、一千万人以上が侯爵、百万人以上が伯爵、十万人以上が子爵、一万人以上が男爵、それ以下が士爵。知的生物というのは単純に人間かそれとほぼ同等の知能を持つ生物で、準知的生物とはゴブリンやオークなどの言葉は話せるが人より頭が悪い生物である。
いかにも人口=国力な計算だが実際はその通りでこの世にただ一つ存在する公爵家は一億人以上の人口を地下あるいは地上の一部に押し込めており完全に街や国家として働き住民も人間や魔物、魔族でごった返して奴隷などではなく農民やら商人やらの仕事に就いているそうだ。その大消費地帯に張り付くようにダンジョン運営よりもダンジョンマスターの魔物や魔族を従えることの出来る能力を使い商品を生産、輸出のみに特化したダンジョンもあるそうだ。
「失礼しました」
そう言って部屋を出た私は彼女ミリアが私のものになるという話を聞いたためか、少々疑問に思っていても聞き出せなかった質問をした。
「ミヤマ伯爵閣下はどうやら私のことを歓迎してないようでしたが...私がなにかしたのでしょうか?」
「あ、いや、そんな丁寧に話しかけなくてもよろしいのですよ。これから貴方は私のご主人様になられるのですから。えっと、そうですね、まずダンジョンマスターは非常に高度な魔術を使えるのは知っていますよね。それでですねなぜ使えるのかと言いますとダンジョンコア内に膨大な魔術回路が仕込まれているからなのですよ。魔術回路は知っていますよね。あの魔道具とかに入っている魔力を流せば光ったり動いたりするやつです。で、そのなんというのかな、他のダンジョンマスターの皆様方はこのダンジョンコアの魔術回路を一部解明に成功しているのです。特にダンジョンマスターの方々の中で最高勢力であられるカンダ公爵閣下は転移魔法の解析に成功なされており、流通業界をほぼ独占なされておられるのです。伯爵閣下もダンジョンコアの解析を始められたのですが、ご存知の通りダンジョンマスターはダンジョンコアを壊されると死んでしまいます。ですからダンジョンコアの機能を使い新しくダンジョンコアを製造なられたのですが...実は連合法には新しくダンジョンコアを製造したら異世界から人間を召喚してその人物をダンジョンマスターとして独立させ、また支度金や連合法に理解のある人物を与えなければならないという法があるのです。」
私は彼女とともに廊下を歩きながら話を聞いていた。ただそれも終わろうとしていた。廊下の突き当たりに到達したからである。
彼女は突き当たりのドアを開けた。外の風景は平原とその奥の森であり私のそこは庭であろうという予想を裏切った。ただ考えても見ればそこは建物に隠れた日陰であり、今我々が出てきた場所が裏口なのだから建物の正面玄関は反対側であり、庭もそこにあるのだろうと予想ができた。
裏口を出たあたりで気になっていた建物の全体像を見たが、やたら面積の広い1階建ての建物であった。壮大な西洋建築で眺めていたかったが、彼女が山道に入り始めていたので前を向いた。
呆気に取られていた私を気遣っていた彼女も景色が一変したところから話の続きを始めた。
「それでですね。伯爵も最初は隠してダンジョンコア持っていたのですがついに見つかってしまって...で、今この状況なのです。」
「なるほどそういうことだったんですね。」
彼女の納得のいく説明が聞けた。相槌を打つ。
話はそこで終わり山道を進んでいたが、木造の建物が見えたことで終点を迎えた。
それは森に隠れた山小屋であった。
その山小屋には引き戸があり南京錠がかけられていた。彼女はポケットから鍵を取り出すと、鍵を外し引き戸を引いた。
中はカビと誇りと薬品の匂いが充満しておりまた光が入らない密室であったため視覚が制限させられた。彼女は壁横のに手を伸ばすと部屋に明かりが点いた。彼女が押したのは電灯のスイッチであることが理解できたが、その電灯は透明の水晶のような球形で物質全体が光を出していたてこれが魔道具だと気づいた。ちなみに建物内の電灯は紙の傘がさされておりそれの中身が見えなかった。
部屋の中は棚と机、フラスコや本、瓶などで空間を使い切っており整理されてはいるがどこに何があるかなどは散らかっているのと大して違いないように思えた。
「えっと確かこちらです。」
彼女は私を部屋の隅へ案内した。
そこには布を被ったちょうどスイカほどの大きさの球体が机の上に留め具とともに置かれていた。
彼女は布を引っ張り外した。
「これがダンジョンコアでございます。」
真紅の球体であった。
「.....」
私は何らかの反応を行おうとしたがそれをする前に彼女が発言を始めた。
「これからえっと、ダンジョンマスター任命の儀式を行おうと思います。では手をを出して...そう、えっとダンジョンコアに触れてください。」
「わかった。」
言う通りにする。
.............
>知的生命体の接触を確認しました。
>魔力充足量0.000000124%
>魔力充足量許容範囲内につき起動を開始します。
>.......
>....
>.
>以下からコマンドをお選びください。
>1新規ユーザー登録
>2ユーザー移転
>3終了
>
......いち、One、Eins
>1
>ユーザー登録フェイズを開始します。
>生体計算処理媒体の検知を確認しました。
>物質構造の解析に移ります。
>...........
>..........
>.........
>.......
>....
>..
>..
>.
>終了しました。
>これより物質世界型仮想空間の構築を開始します。
>.........
>....
>.
>成功しました。
>これより仮想世界内での生体計算処理媒体の構築を開始します。
>.........
>成功しました。
>これより仮想空間内の生体計算処理媒体へのバイアス接続及び入出力接続を開始します。
>生体計算処理媒体の構造を分析します。
>.........
>...
>第1種ニュートラルネットワーク構造と確認しました。
>これよりバイアス接続及び入出力接続とその最適化を開始します。
>.........
>......
>...
>.
>接続及び最適化に成功しました。
>これより生体の再構築に移ります。
>5
>4
>3
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.
.
.
............
社会に必要な人間とは何か。
私はこの国の独裁者であり、我々の生存園の獲得の為にこれから戦争をしようと思った。
まずはじめに徴兵するのは第三次産業の男児だろう。
店頭の販売員、芸能人、銀行員...どれも絶対必要かと言われればそうでないものだ。店頭の販売員なんかは物資を配給制にすれば済む芸能は生活に必ず必要なものとは思えない、銀行家も国債を発行して得た資金を彼らの代わりに私が必要だと思われる産業に投資すれば良いのだし、そもそも私は銀行家が嫌いだ。奴らは何も生産していないのに金持ちだからだ。
次に第二次産業だが彼らは必要なものだ。製造スキルというものはそうそう身につかない。スプーンやフォークを製造している人材には戦車のハンドルを製造する業務を、椅子や机を組み立てている人材には小火器を組み立てる業務を与えよう。
最後に第一次産業だが彼らは人間にとって最も必要なものを製造している。彼らの土地が脅かされない限り彼らに戦うように私は指示をしないだろう。
食料は配給制に、仕事は徴用制に、新聞とラジオは政府の手中に、国民は自分の子孫の更なる発展のため一致団結し私が用意した盤の上に整列してゆく。
実に美しい整列だ。さすが世界で最も偉大な最強の民族だ。
この国民ならどんな問題でも常に最高の結果を出し、我らは更なる発展を得るだろう。
この国は私の支持と責任の元、国民は私の考え出した政策に労役と兵役と忍耐を以て投資をし始めた。
............
我が国は戦争に負けた。
敵が連合してきたためだ。
我が国の国民は投資を回収出来なかった私に対し責任を求めてきた。
私は一代でこの地位にまで上り詰めた人物であり、それなりの栄光と尊厳があった。そして私は結局責任を取りたくなく自己保身のことばかり考えていた議会議員からその権利を収奪してより簡略的でより国の発展に繋がる法を直接的に制定したのだ。
実際それは成功したが、敗戦の責は負はなければならない。
私は自殺した。
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私は転生をした。
よりにもよって私が一番嫌っていたあの国あの民族にだ。
私は銀行家の息子として生を受けた。父は私に莫大な投資をし、最高の教育と会社の運営方法そして如何にして効率的に人間を働かせるかを学ばせた。だがそれは私が前世で行っていたのとは全く違うものだった。
そして父は私が成人になる前にガンで死んでしまった。手元には莫大な資産と人脈、そして彼が運営していた銀行が残された。
私は父が残した人脈のおかげでこの国の中央銀行に席を置くことが出来た。私は早速彼らに紙幣の発行を抑えるよう提案した。前世の演説術、人心掌握術を駆使しそれを認めさせた。
紙幣を発行しなくなればそれは自動的に国民に紙幣が回らなくなり富を持っている資本家層との間に大きな経済格差を持つ。
またこの国は徹底的な能力主義的な風潮を持っており、経済格差も相まって優秀な人材と安価な労働力、そして我々の潤沢な資金を持って世界最強の国家となっていた。
そして貧民層は生活をする為に我々の言い値で労働を行わければならず、才能のあるものは金持ちになり得るが結局は資金を出した我々が最も美味しいところを持っていく。国民は貧富の格差を政府の責任にし我々に矛が向くことがなく、逆に我々は金融を支配し国民の生活を人質にし、要人に金をばらまくことで政府と交渉ができる。
我々は間接的にこの国を支配しているのだ。
前世の私は本当に馬鹿だった。あのような政策をしたら敵意が自分に向くのは当然ではないか。
徴用制を執行するならば貧富の格差を助長させ貧困層に働かざる負えない状況にし、もし反発するようなら「それはお前が子供の時努力をしなかったからだ」と言い聞かせ。配給制はフードクーポンで大量生産品を食べさせ、その資金は税金(国民の金)から出させ。徴兵制は正義の名の元に映画やドラマなどで国民をお煽り、軍に参加させその大軍によって各国の問題に介入し、国民の生存の為に土地を獲得するためではなく我々資本家の資産を守るために軍隊を動かすのだ。
国民の怒りは自らが選んだ指導者に向くし、格差問題に疑問を抱き我々の支配に不満を出す者がいれば共産主義者と弾圧すればいい。
資本主義万歳!!自由資本万歳!!
我々は神から選ばれし最高の民族だ!ゴイムから搾取するのは我々の最高の娯楽だ!
だが私の幸福はそこまでだった。私は若くしてガンを発病したのだ。
私は莫大な資金を医療機関に投資したが、結局治すことが出来なかった。
私は死んだ。
............
私は転生をした。
今度は辺境の島国にだ。
そこの国土は異常で、地震、嵐、津波、地滑りが絶えず起きており国土の殆どが山と森で僅かな平地には人間がひしめき合っており暮らしにくいったらありゃしない。夏は蒸し暑く、冬は移動ができないほど雪が降る。しかもこの国の国民は異常で利他主義的で自らが助長するのを自制し、常に周りの目を気にして社会の一員であろうとしていた。そのくせに自分の国を最高の国だと思い込んでいる。井の中の蛙すぎる。
この国は覇権国になり得ない。なぜなら創造性がなく相手を信頼しており自らを社会の一部だと思いこみ交渉事が下手なのだから
。
だがまさに私が求めていた国民だと言えた。前前世の私であればそれは国のために死ねる最強の兵隊であるし、前世の私であれば文句一つ言わず働く最高の労働力だと言えた。
....そして和を重んじるこの国民はどのような困難に直面しても必ず乗り切れる圧倒的な秩序と忍耐を持った最良の民族と言えたのだ。
............
今の私は新しい知識、新しい法則のもとまた新しく支配者となろうとしている。
さて私はどんなに支配を行えば良いか......
.............
........
...
んっ...眠い
寝返りを打つ。
「.......」
そうだった。確か異世界..
目を覚まさなければ...
目を開ければ木造の天井が見えた。
そして背を起こすと声が聞こえた。
「あ、起きられたのですね。ちょっと待っててくださいね。今お茶を入れますから。」
「うん...」
体がだるい。私はベットに腰をかける。
棚に薬品などが並んでいる。ここは...
頭が痛い。
.....
ここはダンジョンコアがあった山小屋のようである。
私は倒れたのか?
「びっくりしましたよ。コアに触られた瞬間急に倒れられたのです。はい、お茶です。」
彼女は私に手渡しで茶色い液体の入ったコップを渡す。
手に暖かい温度が陶器を通じて伝わってくるが、匂いがしない。おそらく薬品の匂いに鼻が麻痺しているのだろう。
私はお茶よりも外の空気を吸いたい。
私はコップを片手に立つと部屋のドアのところまで行き、外へ出た。
外は真っ暗で密閉空間では絶対見ることの出来ない星々が見えた。
「私はどれ位寝ていたの?」
「えっと、多分5時間くらいです。」
「へー」
風が涼しく、夜で良かったと思った。
............
私は茶を飲み終わると、流石に寒さを感じ小屋の中に入った。
中は確かに薬品の匂いがして嫌だったが我慢できる程度であった。
彼女は既に小屋の中に入っていたから中は暖かかった。
彼女は私に話があると言ってきた。
「えっと、閣下はダンジョンマスターになられたのですからダンジョンについての知識はございます..よね?」
「うん。あるよ。」
私の頭の中には私の常識ではありえないような知識が多々あった。そしてなぜ私がその知識を持っているのか、どのような事をして知識を入れたのかも理解出来た。
故に次何をするべきか。どのようなダンジョンを作るかも知識としてあり、戦略として既に考えついていた。
「これからダンジョン予定地に飛びたい...のだがここがどこなのかわからない。地図はありませんか?」
「あ、ちょっと待ってください。ちゃんとここに用意してあります.......ヨイショッ」
彼女は壁に立てかけられていた紙筒を運ぶと近くの机の上に広げた。そこには歴史の授業などで見た昔のアバウトな地図ではなくちゃんと測量をされて作られたであろう本格的な地図があった。
しかも所々に色ペンで丸などの図形が書かれており、私の知らない筈なのに読める言語が書かれていた。ここで質問をする。
「この世界の公式言語は日本語なの?」
「いいえ違います。日本語はダンジョンマスター間で話される言語です。ですが私のような資格持ちの職員となれば日本語は必須スキルなんです。....あ、この言語ですか?この言語はこの世界全土で話されている"ヘレナ"という言語です。」
ヘレナは知っている。でも日本語がどのような扱いかは知らなかった。
「ここに書かれている図形は?」
「これは他のダンジョンマスター様の領地です。新規のダンジョンマスターはここ以外の場所にダンジョンを構えていただくことになるはずです。はい。」
「ここ以外の場所....」
どこを選べば良いのか。ダンジョンはあちらこちらにまちまちとあった。だが大きなダンジョンは平地や南部にひしめき合っており、小さなダンジョンは将来大きくなることを見越してかまばらにまんべんなく散らばっていた。それも豊かな南部に多く、残った土地は北部や海中が多かった。
私は地図をしばらく眺めていた。
「ここはどんな場所か知っている?」
私はある一点を指さして質問した。
そこは海近くの北部の山脈でおそらくフィヨルド、地球でいうノルウェーのような場所であった。しかもそこは周りに別のダンジョンがなかった。
「ここは山がちな地形のようですね。こんな所に人間なんて絶対住んでいませんし、引きこもって地下に街を作るにしても地上の資源がなければまともに維持できませんよ。」
「.....まあ資源全くがない訳では無いし..ここ広いから。なんとかなると思うよ。それに海に近いから海洋資源に期待できる...と思う。」
「では一度下見をなされたらいかがです?」
「うん。そうだね。」
ダンジョンマスターになった時に得られた知識の一つとして転移魔法の使い方があった。この転移魔法は単純に緯度経度標高さえわかればすぐにその場所に行ける単純なものだった。そして移転する前にその場所の地形などの情報を3Dモデルとしてダンジョンコアの機能を使い知ることの出来る。そして事前にその情報を知らなければ、一歩間違えれば土の中岩の中に転移してしまうことになる。
そしてこの地図には緯度経度が書かれているから、標高さえ調整すれば良いのだ。
............
私は彼女が用意した防寒着を着用しつつどこに転移をするか考えた。先程も申し上げたとおり広いのだ。ただ地図を見ていたら気になる場所を見つけた。
湖だ。この山岳地帯でもおそらく平野、盆地になっているであろう場所にこの地域で最も大きい巨大な湖があった。地下生活は地上の資源を回収しなければまともにやっていけない。そして水の豊富な場所は自然が豊かに違いない。そう考えた次第であった。まあ、水面が凍っているほどの銀世界である可能性があったが。
防寒着を着終わった私は同じく毛むくじゃらの芋虫になった彼女の隣に立った。
「これから転移するから。準備はいい?」
「大丈夫です。」
私は転移魔法を発動させた。
地面から青白い光の魔法陣が現れる。
そう、私の路頭のショッピングを邪魔したあの魔法陣であった。
誤字脱字報告していただけると作者は喜びます。