表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編小説集7 (301話~350話)

買った苦労

作者: 蹴沢缶九郎

「苦労は買ってでもしろ」という言葉がある。青年が苦労屋から苦労を買ったのは、そんな言葉から、それが自分の為になると思ったからだ。


会社では上司にやたらと面倒事を頼まれるし、後輩は役に立たない。外を歩けば鳥の糞が肩を直撃し、見事に外れた天気予報のおかげで、雨に降られずぶ濡れになる。

挙げ句、付き合っていた彼女からは突然、「他に好きな人が出来た」と別れを切り出された。


苦労を買うとは不幸を買う事に近い。本心では、青年は絶えず身に降りかかる苦労にいい加減参っていた。


そんなある日、青年の許に中年のスーツ姿の男が訪れて言った。


「こんにちは、私は幸福を売っている者です。どうもあなた様は購入された苦労に辟易されているご様子…。そこでどうでしょう、弊社の幸福。今のあなた様にぴったりと思いますが…」


「それは有り難い、さっそく売ってくれ」


青年が幸福の購入を決めると、スーツ姿の男は青年には到底払えそうにない高額な値段を提示した。


「ふざけるな、ふっかけやがって!! そんな金額払えるわけないだろ!!」


抗議する青年に男は当然のように言った。


「幸福を買うのなら、これぐらいの金額は妥当ですよ、むしろ安いぐらいだ。幸福を手に入れるとは、そんな簡単な事ではないのです。大体、最近の若者はすぐに楽をしたがる。もっと苦労をするべきだ」


男の言葉で我に返った青年はポツリと呟いた。


「そうだ…、俺は苦労を買っていたのだ…」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いやいやいや、苦労は売らないでほしいものです。周りが買わないといけなくなる。こういう、苦労を引き受けざる得ない人 って案外、いますよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ