閑話1
さて、これはシンバが村に来てから翌日のこと。
夜を徹しての宴会はシンバを主役に、めったにない盛り上がりを見せた。いつも以上に豪快に酒を飲むティンガ。それを見て笑うヴィルマ。そしてこなきじじいならぬ、こなき少女ウィキ。
だが客はもちろん、ティンガ一家も気が付いていなかった。その中に本来いるべき、ある人物がいないことに。
口を開けば皮肉ばかりだが、本当は心優しき魔法使い。見知らぬ少年すら助け、さらに生きる場所をくれた、一人の恩人。
「………………このクソガキが……」
さあ――裁判の時間だ。神に、仏に、閻魔に、そしてアウロ様に許しをこえ。
ティンガとの一件の後に、急に姿を消したシンバ。あんなことの後にいなくなれば、心配するのが婆心。
『オッザ、ワシは山に戻る。もしかしたらまた、あそこに戻ったのかもしれん。あんたは村で待機してな』
『ア、アウロ様、お待ちくださ――』
焦った様子でシンバを探し、果ては魔獣に襲われたのかと、さらに探索の足を延ばしたアウロ。
だが結局見つからず、もしかしたらと村へ戻れば、酒場で酔いつぶれる客に交じり、寝息を立てているシンバがいた。
……やり切れぬ思いの一つや二つ、吐きたくなるというものであろう。
「あらアウロさん。どうしました、こんな朝から?」
「……なんでもないさ。気にしないでおくれ」
店内の掃除をしていたヴィルマ。彼女の質問に眠たげに返す。そして店内で大いびきをかいているティンガ。その近くでウィキに引っ付かれて眠っているシンバを見て、アウロはつい笑いがこぼれた。
「くく、……まあ良しとするかね」
アウロのいない間に何があったのか、そんなことはどうでもいい。大事なのはこの光景が明日からも、ずっと続くこと。
「あれ、お帰りになるのですか?」
「帰って寝るとするよ。……ああそうだ、そいつらが起きたら言っておいてくれるかい?」
店内には強い酒精が漂う。これだけ飲んだのだ。どうせ彼らは起きれば二日酔いになっているだろう。
「今日は休業だ。頭が痛かろうが、吐き気がしようが、誰も来るんじゃないよってねい」
せいぜい今日は痛みに悩まされるといい。疲れ、足は遅い。しかしアウロは楽しげに家路についた。
最短話になります。
こんな感じで物語を補完していこうかな。