少し未来の話
空を、大地を、異形の群れが進んでいく。
異形たちが目指すのは遠く見える森の向こう。故に、その途中にある矮小な存在など、彼らにとってはただの食料でしかない。あるものは腕を、またある者は頭を咀嚼しながら、ゆっくりと、だが確実に進んでいく。
「いや、おかしいだろ! 何であの食材でこんな色になんだよ? そんで何で俺が作るより美味いんだよ畜生?!」
「いい加減。慣れる。おいしい。それでいい」
「これ少し味が薄いかな? ……お兄ちゃん私にもショーユ頂戴」
「毎度毎度うるさいね。ワシが作るとこうなるんだよ。毒じゃないんだ、黙って食べな」
「……不思議です。近くで見てる限り、手順は貴方と同じなのですが……。あっ、このツケモノ? 美味しいです」
異形達はいわば先兵。その後ろには白銀に輝く重厚な鎧に身を包んだ騎士が、幾重にも隊列をなしている。逆さ十字に翼の生えた女性が描かれた旗を掲げ、一糸乱れることなく行軍する騎士たち。千に届く数がいながら、彼らは一切喋ることはない。その心は皆同じ。彼らの信ずる神の敵を、必ずや滅ぼす。ただそれのみであった。
「あっ、来たみたいだよ。……やっぱりこないだより数増えたね~」
「懲りない。無駄。徒労」
「ではいつも通り行きましょうか。一番槍は私が」
「……俺も行く。このムカつきは全部あいつらにくれてやる!!」
「だから言ってるだろう? あんたの腕じゃワシには勝てないよ。年季が違うんだからね」
「ふっざけんな! 認めねーぞ畜生! 次は晩飯で勝負だ、丁度出汁になりそうなのも飛んできてるしな!」
「そば。食べたい。……天ぷらも」
「よっしゃ婆さん聞いたな! そばと天ぷらで勝負だ! いいな!」
「年取ると、油ものは胃にくるんだけどね……」
これより始まるは歴史に名を残す大戦。勝者はどちらか、見るまでも無し。敵は二千、対するは五人。
男と、少年と、老婆と、少女と、女。
さあ、武器を持て生贄たちよ。せいぜい抗うといい。
さあ、食われろ生贄たちよ。お前たちはただのエサでしかない。
さあ、踊れ生贄たちよ。……開幕のベルは既になった。
「「「「「さあ、狩りの時間だ」」」」」
闇夜を照らす月光の下、5対の眼がまるで三日月のごとく爛々と輝いた。
初投稿になります。賞味期限はありませんが、ある意味生ものですので、お早めにどうぞ。
本作品に対するご意見、ご感想、心よりお待ちしております。
……固いなぁ……、もう少しこう柔らかい挨拶の方がいいかな?
あぁ、あっ、よし声の調子も整えて、レッツトライ!
皆の声、待ってるよ~……ぉぉぉおおお!だっしゃーー!
あかん、寒気がする。これは、あかん。
こんな作者ですが、どうぞよろしくお願いします。