第九話 冒険者ギルド
第九話投稿します。
城から脱出した俺たちは隣国に入り港町の宿屋で休憩していた。
「で、これからはどうするんだ?」
「そうですね、お金には限りがあるので冒険者ギルドに登録して路銀を稼ぎながら世界を回るというのはどうでしょうか?」
おお!元の世界で読んだファンタジー小説みたいだ。
「では、冒険者ギルドに行きましょうか」
「おう!」
「ソラ様、お待ちください」
俺は期待に胸を膨らませてクウと一緒に冒険者ギルドに行こうとしたらなぜかメイドさんに止められた
。
「何だよメイドさん」
「クウは「私は呼び捨て!?」うるさいですよ。クウは杖を持っていますがソラ様は武器を持っていませんね?」
そう、メイドさんに言われて考えたら俺が持っている武器はナイフが二本、簡単な爆弾、拳銃一丁、煙球だ。
ナイフはともかく拳銃はこの世界で使うにはハイリスク過ぎる。爆弾も花火の火薬でできているから威力もあんまりない。煙球は煙球だしな。
唯一実戦で使えるナイフだって切れ味は良いが間合いが狭いからどうしてもクロスレンジになる。
対人戦ならこれでも良いが相手は魔物だ、間合いの広い武器を持っておいたほうが良いだろう。
「武器はナイフを持っているが魔物を相手にするならもっと間合いの広い武器がほしいな」
「そうですか、では先に武器屋にいってソラ様と私の武器を購入した後にギルドに行きましょうか」
「そうだな」
「では、行きましょう」
そう言ってメイドさんは俺の手を引いて部屋を出て行く。後ろでクウが「抜け駆けはひどいです~」と叫んでいたが、何のことだろうか?
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「というわけで私たちは武器屋の前にいます」
「誰に言っているんだ?」
「禁則事項です」
なぜかメイドさんが変なことを言い始めたが俺たちは武器屋に来ていた。
「何をしているんですか?入りますよ~」
「おっと、分かった今行く」
クウに呼ばれて俺たちは武器屋の中に入った。
中にはさまざまな種類の武器が並んでいた。
「いらっしゃい。何を探している」
声が聞こえたほうを向くと、やけに毛深い背の低いおっさんがカウンターに座っていた。
おそらくドワーフという種族だろう。
「何だ?こっち見て黙りやがって、冷やかしなら帰りな」
「ああ、悪いドワーフを見るのがはじめて何でな、片手で扱えて間合いが広い武器はあるか?」
俺が謝りながら質問すると、ドワーフのおっさんは驚いたような顔をしていた。・・・なんで?
「どうしたんだ?」
「いや、最近の若いもんは実力がないくせに傲慢だからな。自分に見合わない武器を選ぼうとするし人に謝りもしないから坊主の態度が新鮮でな」
「そうなのか」
この世界の冒険者はそこらへんにいるチンピラみたいな性格なのかもな。
「おっと、片手で扱えて間合いがある武器だったな。候補としてはショートソード、カットラス、レイピア、片手槌なんかがあるがどれがいい?」
「レイピアが魔物に効くのか?」
「ああ、そういう風に作られたレイピアだからな。でも威力がある槍のほうが売れているな」
「振ってみてもいいか?」
「ああ、そこに開けた場所があるからそこで使いな」
おっさんが指差した方向には回りに何もないスペースがあった。俺はそこに行ってショートソードを最初に振ってみた。
「どうですか?」
クウが俺の素振りの様子を見ながら聞いてきた。
「そうだな、安定しているし扱いやすい武器だな。でもちょっと重い感じがするな。」
俺は次々と片手用の武器を素振りしてみたが。レイピアはうまく使えなかったし。槌も体が流れて実戦では使えないような動きになった。
カットラスはそこそこ扱えたがはじめた使う武器だから安定しているショートソードにすることにした。
「っお!坊主、ショートソードにするのか?」
「ああ、おっさんもうちょっと軽いのはないのか?」
「軽いのか?ちょっと待ってな」
そう言っておっさんは店の奥に入っていった。
しばらくの間待っているとおっさんが何かの箱を持ってきた。
「おそらく坊主が所望している武器はこれだと思うぜ」
おっさんは箱を開くとそこには刀よりは頑丈にできている片刃のショートソードが入っていた。
「持ってもいいか?」
「いいぜ」
俺が剣を持つとさっきまでの剣とはまるで違い、ちょうどいい重さで俺の手になじんでいる感覚がした。
「どうやら気に入ったみたいだな」
「ああ、でもこんないい剣を何で店の奥にしまっているんだ?」
このような扱いやすい剣は需要が高いと思ったのだが。
「それは最近作ったやつでなまだ店に並べるか考えていたんだ。でもあんたに馴染んでいるようだしな剣の値段はまけてやるよ」
「ありがとなおっさん」
「いいってことよ。代金は150キルな」
「分かりました。・・・どうぞ」
「あいよ、ぴったりだな。剣のメンテナンスもやっているから消耗したら見せに来いよ」
俺たちはおっさんの店を後にした。
ちなみにキルとはこの世界の通貨で他にミル、メルがある。
1キルは1000ミルで、1メルは1000キルである。
一般人が一ヶ月働いて得られる給料はだいたい200キルぐらいである。露店で見たパンは一個100ミルだから日本円では1ミル1円だと思う。
店を出てしばらく歩くとメイドさんが・・・
「傲慢な態度をとる冒険者は下位~中堅程度の冒険者なんですよ」
と、補足してきた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ここが冒険者ギルドです」
「ここがそうなのか」
俺たちは店を出た後冒険者ギルドにやってきた。この町では一番大きい建物ですぐにわかった。
「早速登録して何か仕事をしましょうか」
クウがさっさと入っていってしまったので俺とメイドさんも追いかけてギルドの中に入る。
中に入るとギルドと酒場が一体になっているのか、昼から酒を飲んだりしている奴らや、掲示板らしきものの前で悩んでいる奴ら、何かを渡して金を受け取っている奴らなどやっていることはさまざまだった。
「ソラさんメイド、こっちですよ」
俺が周りを見ているとクウが受付の近くで手招きをしている。どうやらあそこで登録ができるらしい。
俺とメイドさんがクウのところに行くと受付嬢が営業スマイルで・・・
「新規のご登録ですか?」
「ああ、そうだがここで登録ができるのか?」
「はい、ここでご登録することができます」
俺が受付嬢に質問すると予想どうりの返事が返ってきた。
「じゃあ登録したんだが」
「冒険者ギルドの説明はいりますか?」
「頼む」
「ではご説明させていただきます。冒険者ギルドではランクにあった依頼をしていただいて達成したら依頼書に書いてある報酬を受け取ることができます。依頼書はあちらにあるクエストボードと呼ばれる掲示板に張ってあります」
受付嬢が指差した方向を見るとさっきまで何人かが集まっていた掲示板があった。
「次に依頼書の見方ですが右上に推奨ランクが書いてあり、中身に依頼内容と期限、報酬金、依頼主が書いてあります」
そういって受付嬢は説明用の依頼書のサンプルで丁寧に説明してくれる。これで理解できないやつはよっぽどの馬鹿だろう。
「次にランクについてですがランクはG~Bランクが普通に以来をこなしていけばなれるレベルで、A~SSSは国又はギルドマスターの推薦があり、こちらが用意する依頼を達成すればランクアップすることができます」
「普通にランクアップするにはどうすればいい?」
「それは自分と同じランクの依頼を十個達成するか、自分よりひとつ上のランクを五個達成するかのどちらかになります」
言葉にすれば簡単だが実際にすると難しそうだし時間もかかりそうだな。
「最後に一番重要なことですが、受けられる依頼のランクは自分のランクと同じか前後一ランクとなっています。更に期限内に依頼を達成できなかった場合は違約金として報酬金の一割をギルドに支払ってもらいます」
なるほど、早くランクアップしようとして無茶なことをすればその分だけ自分の首を絞めるということか。
「依頼にはない魔物を狩った場合はその素材はギルドで買い取らせていただきます。ここまでで何か質問はありますか?」
「いや、特にない。登録を頼む」
俺が登録を頼むと受付嬢は受付のしたから大きな水晶玉と小さな水晶玉が埋め込まれたカードを人数分取り出した。
「これは?」
「これはギルドカードとギルドボールといって血を一滴ずつたらすことで登録ができ個人を特定できます。これであなたが今までに受けた依頼の数を確認でき、ランクアップしたらカードのほうの水晶の色が変わります」
「なるほど」
「では血を一滴ずつたらしてください」
そういって受付嬢は俺たちに針を渡してきた、俺はその針で指を軽くさしてカードとボールに一滴ずつ血をたらした。
そうするとボールが一瞬光った後、カードのほうが今まで水色だったのが白色に変化した。
「はい、これで登録完了です。最後にこれでカードに名前をご記入ください」
渡されたのは万年筆みたいなペンでインクはついていなかった。
「これは魔力で書くので消えることはないんですよ」
納得した。普通のインクで書いて雨なんかで消えたら笑えないしな。
「書いたんだが、カードをなくしたり破損してしまった場合はどうすればいい?」
「カードは依頼を受けるのに絶対に必要ですからなくさないようにしてください。あと何気に高級な魔力結晶を使っているので最初は無料ですがなくしたら20キルで再発行してもらいます」
俺が聞きたいことを聞き終えるとメイドさんもクウも出来上がったみたいだ。
「これで登録完了です。皆さんは最初はGランクからですので主に町の中での雑用や町の外での簡単な薬草集めですので上のランクを目指すのはいいですが死に急がないようにしてください」
「ああ、ありがとな」
「「ありがとうございました」」
俺たちは受付嬢に礼を言うとクエストボードのほうに向かった。
「どの依頼を受ける?」
「そうですね、ここら辺の地理を学ぶために薬草採取なんてどうですか?」
「私は賛成です。ここら辺の地理は全然ですから」
「じゃあこれにするか」
俺はクエストボードからGランク推奨の薬草採取の依頼の依頼書をはがした。
薬草採取は初心者用の依頼かと思っていたが内容はピンキリでCランク推奨の薬草採取の依頼もあった。
俺は依頼書を受付に持っていった。
「これを受けたいのだが」
「はい、Gランク推奨の薬草採取ですね。パーティを組まれる場合は一緒にギルドカードを提示してください」
「分かった」
俺たちは受付嬢にギルドカードを渡すとギルドカードとボールが反応してカードの水晶に何かの模様が浮かんだ。
「この模様が同じ人がパーティメンバーです。偽装防止のために模様は完全ランダムで同じものはありません」
「了解した」
「では、がんばってください」
「ああ」
冒険者初めての依頼かちょっとわくわくしてきたな。
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