第七話 魔法
第七話投稿します。
週一更新を目指しているのに昨日更新できなくてすいませんでした。
次回は木曜日に更新できるようにがんばります
「っん」
俺が目を覚ますとそこにあったのは俺の感覚ではついさっきまでいた自分に与えられた寝室の天井だった。
どうしてこんな場所にいるのか考えていたら頭の中に今までの俺が知らなかったことや文字などの知識が、もともと俺の知識のような感覚で俺の中にあった。
そこでようやく俺は今日(昨日?)掛けられた複写の魔法の効果なんだと分かった。
「そうか、俺はあのときに知識が流れ込んでくるのを感じてそのまま気絶したのか」
「ようやくお目覚めになりましたか」
俺の現状の把握が終わったことで俺の近くにいたメイドさんが声を掛けてきた。
「メイドさん、俺はどれくらい寝ていたんだ?」
「丸一日といったところでしょうか?」
丸一日か、かなり寝ていたんだな。
「お体のほうは大丈夫なのでしょうか?」
そうメイドさんに言われてからだの関節を動かしてみると、違和感は無くいつもと同じだった。
「特に違和感は無いな」
「そうですか、それでは朝食が用意されていますのでこちらをどうぞ」
「ああ、悪いな」
「いえいえ、ご奉仕するのがメイドの勤めですのでどうかお気になさらず」
用意されていた朝食は初日と何にも変わらずにおいしそうだった。
予定では今日は一日休んで明日から魔法の勉強をし始めるのだったな。
「ソラ様、魔法の件なのですが、とある事情により大幅に繰り上げていこうを思っているのですが」
朝食を食べているとメイドさんが話してきた。
「それは良いんだがそう簡単にできるものなのか?後、とある事情って言うのは何だ?」
とある事情というのも気になるが、そもそも設備が整っていても魔法が簡単に取得できないから俺は9日間城に滞在することになったんだが。
「とある事情については言えませんが一言だけ言うなら昨日の夜から明日の夜まで馬鹿たちはいませんのでその間にとあることをしたいと思います」
「ん?馬鹿たちがいたらめんどくさいことにでもなるのか?それと俺の勉強が大幅に繰り上げられる理由は?」
「とてもめんどくさいことになると思います?」
「何で疑問系?」
「はい、私たちがあることをすると馬鹿たちとその他一部はとても喜ぶことになるかもしれないので」
なんだかよく分からなくなってきたがぶっちゃけていうと馬鹿たちが帰ってくる前にやりたいことがあるからさっさと魔法を教えてしまおうということだろう。
「さすがにそんな投げやりな感じじゃありませんよ。ちなみに繰り上げる理由はあなたも私たちがやろうとしていることに大きく関わっているからです」
「どんな感じで関わっているのか聞いてもいいか?」
俺が、たぶんちゃんとした答えは返ってこないだろうと思っていると。
「後からのお楽しみですよ♪」
予想通りちゃんとした答えは返ってこなかった。
―コンコン―
「失礼しますね」
俺の部屋のドアがノックされて、そこから姫さんが入ってきた。
「姫様、道具の準備はできたのでしょうか?」
「ええ、後は今日の昼はアレを使ってソラさんに魔法を教えて、夜にアレの準備を整えて明日の朝に決行するわ」
「アレ?」
きっと最初に出てきたアレは俺に短期間で魔法を教えるための魔法か道具のことで、後から出てきたアレというのはメイドさんが言っていた馬鹿たちがいない間にするあることなのだろう。
「とあることというのは姫さんにも関係しているのか?」
「はい、むしろ姫様が主犯ですね」
「ちょっと!まるで私が悪いことをしているみたいなことを言わないでください」
「アレが悪いことではないと思っているのですか?」
「っう」
どうやら姫さんはメイドさんがやろうとしていることは相当やばいことのようだ。
「そっそんなことより、早くソラさんに魔法を教えなくては・・・」
「話を逸らしたな」
「話を逸らしましたね」
「うう~///」
姫さんは顔を赤くして頬を膨らませた。
「早く行きますよ!」
頬を膨らませたまま姫さんは逃げるように部屋を出て行った。
「では、我々も行きましょうか」
「ああ、そうだな」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「なっなんだこれは?!」
俺とメイドさんが姫さんを追って昨日の部屋につくと、そこは昨日見た、本がたくさんある部屋ではなく、まるで宇宙にいるような部屋全体が真っ黒でところどころに星のような光源がある景色の部屋になっていた。
「これは世界の本棚といわれている魔法具です。これを使うと魔法関連のこと限定で数百倍から数千倍の速さで魔法を取得することができるのです」
俺が驚いていると、隣でメイドさんがこの部屋について説明してくれていた。
「でもなんで最初っからこれを使わないんだ?これを使えば直ぐに魔法を取得できるのだろう?」
「便利なものには必ず不便なこともセットでついてくるんですよ。魔法具というのは魔力をこめればたとえ魔法が使えない一般人でも簡単に魔法具の中にある魔法を使うことができる道具のことです。その代償は今言ったとおり使用者の魔力なのです。なので強力な魔法具を使おうとすればするほど求められる魔力は多くなるのです」
俺が疑問に思ったことを聞くと、メイドさんは魔法具のことをお知れながらそのわけを話してくれた。
「ちなみにこの魔法具の代償は王家直系の血縁者の魔力なのでよっぽどのことが無い限り使われることは無いのです」
「なるほどな」
「そろそろよろしいでしょうか?」
俺が感心していると姫さんがこちらの近くにやってきた。
「ああ、いつでも大丈夫だ」
「分かりました、ではまずは魔力を感じていただきます。メイドが魔力をソラさんの体に流すのでそれを感じ取ってください。そして感じ取れたら、その魔力を右手に集めて球状にして手のひらに放出してください。球状にするコツはとにかく具体的なイメージをすれば良いですよ」
「分かった、やってみよう」
「では、よろしくお願いします」
「かしこまりました」
そういってメイドさんは俺の体に触れて何かを俺の中に流し込んできた。おそらくこれが魔力なのだろう。この感覚は俺がいつもやっているトレーニングのときに感じるものに似ているがそれとはちょっと違うようだ。
とにかく、魔力を感じることはできたのだから後はこれを右手に集めて球状にして手のひらの上に放出するだけだ。
右手に魔力を集めることは座禅を組んでいるときみたいにして集中したら案外簡単にできた。
球状にするコツは具体的なイメージが必要といっていたが、まぁ野球ボールくらいの大きさで十分だろう。
右手に魔力を集めて、野球ボールをイメージして、放出する!
―ブゥン―
「「「!!」」」
魔力を放出したら俺の右の手のひらには野球ボールぐらいの青い球体が浮いていた。
これが魔力なのだろうか?
「まさか、一回で成功するなんて」
「これは少々予想外でしたね」
二人の反応を見ているとどうやらこれが魔力のようだ。
「成功するまで大体10回は失敗すると思っていたんですがね、これはうれしい誤算です。では、次のステップに行きましょう」
「ああ」
次はいよいよ呪文の詠唱かと思ってワクワクしていると・・・
「次はソラさん自身の魔力を感じ取ってさっきと同じようにしてください」
「詠唱じゃないのか?」
「はい、さっきのはメイドの魔力を使ってできたものですから、自分の魔力がコントロールできないよなじゃ詠唱はできませんよ」
「そうなのか」
俺はちょっとがっかりしながらさっきと同じ感覚を自分の中で探した。しばらくすると、俺の体の中心近くからさっきと同じ感覚を感じたのでそれを全身に循環させる。そこからさっきと同じように右手に集めて、イメージして、放出する!
―ブゥン―
放出されたのはさっきとまったく同じ青い球体ができた。
俺はその結果に満足していると・・・
「ソラさんはいろいろ規格外ですね」
「すばらしいと思います」
二人とも十分驚いていた。この部屋はそういう部屋じゃなかったのか?
「それでもソラさんの成長速度は異常なんです!」
「姫さんにまで心読まれた?!」
「顔に出ています!」
「マジで?」
「マジです、私も読心術を使うまでもありませんでした。本来ならこの部屋を使っても一時間やって他人の魔力を使って球体ができれば優秀といわれているほどなんですが、ソラ様はわずか十分足らずで他人どころか自分の魔力を使って球体を作り上げたので異常なのです」
そうだったのか~。元の世界じゃ学校の成績はあんまり優秀とはいえなかったからなぁ、実感があんまり無いんだよな。
「次は詠唱について説明します。この様子じゃあ、あと一時間もすれば旅に必要な魔法を覚えられるでしょう」
「おっ!ついに詠唱か」
「はい、詠唱の基本はまず最初の句で自分の存在を示します」
「自分の存在?」
「はい、例えば昨日やった複写の魔法では、『我、知識を持ちし者』が最初の句です。ここでは自分は知識を持っていることを示します。他にも炎の魔法では『我、炎を使いし者』となります。ここは自分は炎をつかえることを示します。上級になると『我、炎を支配し者』に変わったりもします」
「なるほどな」
つまり最初の句では、自分が何をできるかを設定しなければならないということだな。
「次に二番目の句で対象を選びます。魔法の効果を与える人または物のことを唱えます。複写では『知識を欲するものに』がそれにあたります。攻撃魔法では『我の敵に』や、回復魔法では『我の癒しを与えるものに』という句になります」
次は対象を選ぶ工程なのか、この流れだと最後の句はきっと効果そのものの事だろうな。
「最後の句は効果を明確にします」
「やはりな、魔力の球体のときに言っていた時と同じように魔法を操るにはイメージが大事なんだろ?」
「はい、魔力と同じでイメージが大事になりますが魔力のときは魔力そのままだったので形や放出の仕方をイメージすれば大体はうまくいきますが、魔法の場合はより明確なイメージが必要なのです。例えば、火の初級攻撃魔法の炎球は燃え上がる炎とその炎を球状にするイメージをしなければいけないのでそれを補助するために言葉の中に含まれる魔力…言霊によってイメージを明確にするのです。複写の魔法では『我が知識を与えん』といった自分の知識を与えるだけなので詠唱は短いですが、さっき言った炎球を例にすると詠唱は『火の玉となりて我が視線の先に飛べ』といったのが基本の詠唱になります」
「?、他にも詠唱があるのか?」
「はい、この詠唱は更に細かく分けて二段階あります。一つ目はその魔法の形状、これは炎球の言葉のとおり火の球状をイメージする段階。これは性質上変えることはできません。二つ目は魔法を放出する方向や状態を決めます。さっきの例だと炎球は術者が見ている視線の先を直進します。この場合は一度放つと目線を変えても軌道が変わることはありません」
つまり工夫をすればただの初級魔法でも立派な武器になるってことか。
この情報は俺の中では大きい。なぜなら、魔法の威力=強さだったら俺の得意な策が力のゴリ押しでなかったことに去る可能性があったからだ。
しかし、詠唱を変えれば効果も若干変わることが分かった今は、工夫をしだいでただの初級魔法が上級魔法を使う魔法使いにも勝てる可能性が出てきた。
この世界の魔法はずいぶん俺好みの設定になっているな。
「方向は分かった、次は状態を決めることについて教えてくれ」
「わかりました。場外を決めることもさっきと大して変わりません。詠唱に『複数になり放て』を付け加えると複数の火の玉が目線の先に直進していく魔法になります。しかし複数作り出す場合は消費する魔力も大きくなるので注意が必要です。・・・これで魔法の説明は一通り終えましたが何か質問はありますか?」
「いや、特には無い」
「では、練習をしていきましょうか、ソラさんならスグに基本魔法を覚えることができます」
「なら、はじめるとしよう」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
あれから数時間後、俺は基本魔法を覚えて実戦でも使えるレベルになった。
俺の使える基本魔法は全部で八つ。
一つ目は飲み水を作る「製水」。
二つ目は火をつける「点火」。
三つ目は簡単な治癒魔法「治療」。
四つ目は光を灯す「光源」。
五つ目は相性を調べたら俺は風と地と水に適正があったので「土壁」。
六つ目はもうひとつの適正属性の「風矢」。
七つ目に最後の適正属性の「水刃」。
最後に基本攻撃魔法の「光矢」。
この世界では基本属性は六つ、火・水・地・風・光・闇。
光と闇の初級魔法は誰にでも使えるが上級になると適正が無いと使えないらしい。
それぞれには特性があり。
火は主に攻撃系。
水と光は治癒系。
風と地は補助系。
闇は状態異常系。
他にも二つの属性をあわせるとできる複合属性もあるらしい。しかしこれは絶妙な配合比率で完成するらしく研究は数種類を生み出してからうまく進んでいないようだ。
更に、そこから魔法を融合することで生まれる派生魔法がある。例えば、風の矢に火の魔法を融合させると炎風の矢になったりするらしい。派生魔法の種類は十人十色、千差万別という言葉がぴったりで人の数だけ魔法がある。同じようにしてもまったく違う効果が現れるらしい。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺が魔法の練習を数時間している間に姫さんとメイドさんはちょくちょく部屋を出ては何かを準備しているようだった。
そして、俺の魔力切れで魔法の練習が終わるときにはメイドさんと姫さんの二人がそろっていたので思い切って聞いてみた。
「なぁ、そろそろ教えてくれよ、明日の早朝にする『アレ』っていったい何なんだ?」
俺の質問に対して二人は顔を見合わせて。
「確かにそろそろ言ってもよろしいのではないでしょうか姫様?」
「そうですね、準備もありますしソラさんにも言ったほうがよいでしょう」
「では、お教えします私たちがやろうとしている『アレ』とは」
一呼吸置くと二人で口をそろえて・・・
「「この国を捨ててあなたと一緒に世界を旅をするために脱走計画です!」」
今日一番の爆弾を落とした。
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次回でお城編は終わりです。
次からは冒険者編を書いていきたいと思います。