第四話 謁見
第四話投稿します
俺は今、メイドに連れられてある部屋にいる。聞くと、一応王に会うのだから正装をしなくてはいけないらしい。俺が正装を拒むと顔は笑っているが目が笑っておらず、俺の人生の中で始めて頭の上がりそうに無い人ができたみたいだ。
「そういえば、俺はあんたのことをなんと呼べばいい?いつまでもメイドじゃしまらないんだが」
俺がふと疑問に思ったことを聞いてみると…
「好きなようにお呼びください、私は自分の名前があまり好きになれないので本名は言いたくないのです」
どうやら俺が思っていた以上に重い過去を背負っているようだ。さすがにこれ以上聞くのはどうかと思い話を切って、着替え用としたが、
「まぁ、本当はメイドさんって呼ばれすぎていつの間にか自分の本名を忘れただけなんですけどね(っぼそ)」
「ちょっと待て、コラ!」
「はい?」
まるで何も無かったかのようにメイドは俺に聞き返してきた。
「「はい?」じゃねぇよ、重い過去を背負っているのかと思ったらただ忘れていただけかよ、俺の反省を返せ!」
「あら、私はただ本名を言いたくないといっただけですよ?それを深読みしたのはあなたじゃないですか」
そういってメイドは、男が見たら思わず見とれるような笑顔を俺に向けてきたが、俺は顔が赤くなるどころか、むしろ青くなっていくのを感じた。
ここまで怖く感じるなんていったいこいつは何歳…
「何かいいました?」
ギチギチギチ
「痛い!痛い!離せ~」
俺の思考が終わる前に、メイドは俺にアイアンクローをしてきやがった。絶対、こいつは人の心の中が読めるだろ。
つか、まじでやべぇ。意識がなくな…ってきた。
ッパ、ッドス!
「意識がなくなられては運ぶのが面倒ですね」
俺の意識がなくなる寸前で、メイドは俺を解放した。
「着替え終わりましたね。では王(馬鹿)の謁見の間までご案内します」
「っは?」
解放された俺の体を見ていると半分も着替えていなかった正装が、今では完璧に着付けられていた。
「何をした?」
「禁則事項です」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「なぁ、メイドさん」
「あら?メイドさんで定着ですか?」
「あぁ、ほかにいいのがうが思い浮かばなくてな」
「分かりました。では、私のことはメイドさんとお呼びください」
「おう…じゃなくて!メイドさん、あんた今王と書いて馬鹿と読んでいなかったか?」
「あぁ、そのことですか。きっとすぐに分かると思いますよ?」
「はぁ」
たぶんメイドさんがここまで言うのだから傲慢な王かそれとも文字どうり馬鹿な王なのか、俺はこの国の王に不安を覚えた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ここが、謁見の間です」
俺が扉を見上げると、黄金の扉にところどころ宝石がちりばめられた、立派な扉だった。
この国の王は成金趣味なのか?
「扉だけ見れば立派だな」
俺が割りと失礼なことを言っていると
「そうですね、本当に扉だけは立派ですね」
メイドさんが同意してきた。ここまで言われる王って言うのも不安だが、怖いもの見たさであってみたくなるな。
「きっと笑いを耐えるのに必死になると思いますよ?」
そうか、ここの王はきっと俺の予想の後者のただ馬鹿なだけの王なのかもな。それよりも…
「ナチュラルに心を読むのやめてくれませんか?」
「あら、これは失礼しました」
メイドさんは、俺に頭を下げてきたが反省するつもりは欠片もありそうに無い。
「こちらです、勇者様」
「うわ!そんなに急がなくてもいいよリーンさん」
「いやですわ、私のことはリーンと呼び捨てにしてください」
「う、うん。リーン」
「勇者様///」
勇者こと拓真と、俺たちを召喚した馬鹿神官がラブコメをしながらおれたちのいる謁見の間に向かっていた。
お前、俺に縁を切られて落ち込んでいたよな、何で一時間もたっていないのにそんな元気に慣れるんだ?
それを見ているとメイドさんが呆れながら俺に耳打ちをしてきた。
「あの男の人はさっきあなたに絶交されてひざから崩れ落ちていませんでしたか?」
っあ、やっぱりメイドさんも同じことを思っていたらしい。
「あれが拓真という人間だ、今までの縁を切られたらすぐに忘れて自分の道を行く。何も背負おうとしない偽善者なやつだよ」
「納得です。あのような物には言い寄られたくありませんね。あの神官はあの物のどこに惹かれたんでしょうか、私には理解できません」
拓真を人扱いじゃなくて物扱いだな、まぁ賢明な判断だと思うが。
「メイドさんの疑問の答えはきっとあの女は馬鹿だからだと思うぞ」
「なるほど、馬鹿だからですか」
「あぁ、馬鹿だからだ。それにあの女の顔を見てみろ、ドン引きするぐらいキモイぞ」
「…本当にキモイですね」
メイドさんが女の顔を見るとドン引きして、距離をとっていた。ある意味すごいなあの女、メイドさんをドン引きさせるなんて。
今の女の顔は、拓真と一緒にいることで顔が緩むどころかそれを通り越してむしろ歪んでいる。街中で見たらたとえ知り合いでも全力で他人のフリをするレベルだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「では、参りましょうか」
「ちょっと!何、あなたがしきっているのよ」
「おお、さっさと行こう」
「似非も無視すんじゃないわよ」
後ろで女が騒いでいるが俺たちは無視して扉を開いておくに進む。って、俺のことは似非呼ばわりか、似非以前に勇者になるつもりなんて毛頭無いんだがな。
おくまで行くとそこには玉座があって、王が座っていた。俺たちは一応ひざまずいていたが、メイドさんは普通に立っていた。
それでいいのか?
「馬鹿(王)よ勇者とそれに巻き込まれた一般人を連れてきました」
「おお、そなたが勇者か。巻き込まれた一般人というと、顔からしてメイドの隣にいる男か。それよりメイドよ」
「はい」
「今、王の発音が違うように感じたんだがわしの気のせいかの?」
「たぶん、気のせいでしょう」
「そうか、そなたが言うなら気のせいなのじゃろう」
そんなメイドさんと王の会話が聞こえてきたが、俺はうつむいて笑いを耐えるのに必死だった。俺の目の前にいる王の姿は完全なメタボ体型でなおかつ身長が145cmぐらいしかないチビだった。
「して、勇者よ」
「はい!」
「そなたは魔王を倒しわれらの英雄になってくれるか?」
「はい!魔王を倒し必ずや平和を取り戻して見せます」
チビ王と拓真がテンプレどうりの問答をしている。
それで、俺の処遇はどうなるんだ?
「それでは、巻き込まれた一般人はどうしようかのぉ」
「こんなやつさっさと城の外にやって死なせてやればいいのです!」
王が考えているとき女がふざけてことを言ってくれた。
俺が黙らせようと服のポケットに手を伸ばそうとしたとき…
「いい加減にしなさい!いったいあなたは何様のつもりなのですか」
「ひっ姫様」
「この方は私たちのわがままに巻き込まれてだけなのです。それを何もお詫びもしないで城から追い出すなど言語道断!恥を知りなさい!」
どうやらこの城の上の人間でも、まだまともなやつがいたらしい。
俺は気づかれないようにメイドさんの近くに行くと
「なぁ、メイドさん。あの女は誰だ?」
「あの方は実質、この国の実権を握っている方です。王があまりにも無能なのでこの国の政治を変わりにやっているのです。」
なるほど、ということは…今回の勇者召喚を決めたのはあの姫さんなのか?
「ちなみに、勇者召喚を決定したのは王の方です。姫様は最後まで異世界の人に迷惑をかけるわけにはいかないと、反対しておられました」
「そうか」
姫さんの後ろを見てみると、あの女の騎士よりか数倍強い気配のする騎士が姫さんの周りを固めていた。それに比べて王の周りを固めている騎士はあの女のと同等ぐらいかそれより少し強いぐらいだった。
「メイドさん、この城の派閥はもしかして国を本当に思っている姫さん派と王をたぶらかして甘い蜜だけ吸おうとしている王派、そしてあの女を支持している巫女派の三つか?」
「すばらしいですね。もうそこまで気づくとは、しかし50点ですね。確かにその三つはいますがこの場所にはそのほかに、商業で利益を得ようとする商業派、貴族が実権を握ろうとしている貴族派など後二つの派閥がいます」
「なるほどな、確かにその二つのうちの貴族派はともかく商業派は騎士だけを見てたんじゃ分からないな」
「あなたは観察眼がいいですからね。そのうち簡単にわかるようになるでしょう。どうですか?この城で働いてみませんか?」
「あいにく、俺は自由が好きなんでね国に縛られるつもりは無いな」
「そうですか、それは残念です」
メイドさんとこの白の派閥について喋っていると…
「それでは、巻き込まれてしまった…え~と」
そういえば自己紹介をしていなかったな。
「俺の名前は鳴神空だ。こちらの言い方だとソラ=ナルカミだ」
「そうですか、ではソラさんにはしばらくの間城に止まってもらいこの世界で生きていく知恵を身につけてもらいます」
「知恵?」
「はい、具体的には文字であったり、通貨であったりお金の稼ぎ方、ほかの国の情勢などを学んでもらいます。そうすれば無知でいるよりかは多少はましだと思うのですが」
「ふむ」
俺はこの案についてのメリットとデメリットを考えた。
まずメリットの方だがこれは正直うれしい。俺はこの世界の文字を知らないし、通貨の価値物の相場も知らない。何も知らずに他国に渡って戦争に巻き込まれるなんて笑えない。これを考えるとすぐに返事をしたほうがいいと思えるが。
デメリットはこの城にしばらくの間とどまるということだ。これによって俺を捨て駒にしようとするやつが現れても不思議じゃない。
さて、どうしたものか。
「あっあの、別にこの城に居たくないのでしたらすぐに援助金を渡すこともできますが」
姫さんが泣きそうな顔で俺に妥協案を出してきた。ってか、なぜ泣く?
「質問がある」
「はっはい!なんでもどうぞ」
姫さん…声が裏返っているぞ。
「その知識は詰め込めば大体何日で学べる」
「えっと…魔法の知識は要りますか?」
魔法も学べるのか。
「ああ」
「でしたら、つらいですけど文字などの一般常識や他国の情勢は複写という魔法で教えることができます」
「それだとなぜきついんだ?」
「いきなりたくさんの知識が流れ込んでくるんで、気絶したり寝込んだりしてしまうのです」
知識が一気に脳に流れ込んでオーバーヒートする感じか。
「それには何日かかる」
「一回で終わらせるのであれば一日ですべての知識を複写してその後、休みを一日取り、魔法の知識と呪文、実践を約一週間で終わらせることができるので大体少なくて9日、多くて12日ぐらいですかね」
「そんな早く魔法の授業が終わるのか?」
「はい、この城には専門の教師がおり、設備もそろっているので基礎だけならその程度で済みます」
「分かった、じゃあ、この城で9日間世話になる」
俺が滞在を決めたら、姫さんが花が咲いたような笑顔でこちらを見ていた。
「罪作りな人ですね」
「は?」
「っふふ」
メイドさんの言葉と笑顔がやたら印象的だった。
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