第二話 召喚
第二話投稿します
あれから数日後、俺は比較的に穏やかな生活をしていた。
しかし、俺の勘から言わせてもらうと今日の放課後あたりからまた拓真につかまって、厄介ごとに巻き込まれるだろう。
などと、一種の予言じみたことを思いながら、俺は次の授業の準備をするために机の中を探っていると、俺の近くにいた友人が声をかけてきた。
「なぁ、あの日から何日かたったけど、今までからするとそろそろまたお前の幼馴染が厄介ごとを運んでくるんじゃないか?」
この友人とは高校一年生からの付き合いで、一番近くで俺の悲惨な毎日を見ていたから俺ほどじゃないけど拓真に関しての勘は人一倍強くなっていた。
そのことを伝えたら、「そんな能力いらねぇ~、むしろ目覚めないほうがよかった」って、言われた。
うん。俺もそう思うよ。
「たぶん、今日の放課後くらいにまた厄介ごとがやってくると思う」
「なんか…お前が言うと予想というより予言みたいだな」
「うるせぇ!」
そんなの俺が一番分かりたくないけど、分かってるんだよ。
今のうちに今もっている武器を確認しておくか。
えっと、ガスマスクが1個。知り合いの刀鍛冶に作ってもらった日本刀並みに切れるナイフが2本。花火の火薬を使ってできた爆弾が約20個。以前使った催涙ガス弾が約15個。拳銃が一丁、弾丸が約200発。世界一臭い缶詰シュールストレミングを詰め込んだ煙球が5個。
これだけあれば何とかなるな。
「いやいやいや!どうみてもオーバーキルだろ。そもそも拳銃なんてどうやって手に入れたんだ?」
こうでもしないと死ぬかもしれないからだよ!ちなみに拳銃は以前単騎で潰したマフィアから奪いました。
「お前、何でここまでされているのに転校や退学をしようと思わないんだ?俺なら最初の一週間で退学しているぞ」
フフフ、甘いな。
「お前、俺がそんな簡単なこと思いつかないとでも思ったか?」
「考えていたのか?」
俺はあの地獄から逃げ出すために転校もしくは退学をしようと高校一年生になってから一ヶ月で行動に移したよ。
でもな…
「転校しようとしたら拓真に毒された担任教師が握りつぶし。担任をかわして退学届けを出したらPTAの会長でもある拓真の親父に潰され、不登校になろうものならたくさんに人間(全員、拓真にほれた女)が家に押しかけてきて俺を言葉で責め、最終手段で家出をしたら全国にいる拓真にほれた女が情報を流して一日も持たなかったよ」
そう、俺が転校しようとして転校届けを提出したら拓真が見ていて、担任に「空を転校させないでくれ」といったらしく、後日担任から「拓真君を困らせるな」と逆ギレされ。
担任じゃまた潰されるから、事情を知っている生徒指導の先生と好調とで退学届けが受理される一歩手前まで行ったのにPTAの会長である拓真の親父に「退学は認めん!」と一刀両断。
不登校になろうと部屋に引きこもったら、学校中(一部他校)の女子から明らかな近所迷惑なほどのブーイング、このことで近所の人が俺に学校に言ってくれと頭を下げられたので無視することができず、結局学校に行くことになった。
最終手段として、家出をして県外に行ったら、まるで指名手配犯のように顔写真を張られた写メが全国の拓真にほれている女子に送られ、家出開始からわずか五時間で捕まってしまった。俺の人権はどこにいった?
「…空」
今までの逃走劇をかたり終えると友人だけでなく聞き耳を立てていた他の男子が、同情と慰めの視線を俺に送ってきた。それを見て俺は天井を見上げた。
…目から汗って出るもんだね。
「空、何か俺たちにできることがあったら遠慮無く言えよ、できる限り力になるから」
「「「そうだ、そうだ!」」」
「「「俺たちはお前を見捨てないぞ」」」
…みんな
「じゃあ、あの幼馴染を何とかしてくれ」
「「「ごめん、それだけは無理」」」
みんながいっせいに頭を下げてきた。
まぁ、期待はしていなかったけどさ。
キーン・コーン・カーン・コーン
「っお!授業が始まるな」
「あぁ、そうだな」
そして、俺たちは授業の準備をするべく自分の席に帰っていくのだった。
<放課後>
「じゃあなぁ~」
「おう」
俺は帰る準備をしていると、すでに帰る準備を終えたらしい友人に挨拶をされて適当に返事をしていた。
「面白いゲームを買ったから、明日貸してやるよ」
「マジで!?」
「おう♪」
「サンキュウー」
友人からゲームを貸してもらう約束をして俺たちは別れた。
これが、友人との最後の会話とは知らずに。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺が帰路についていると、後ろから大きな声を出しながら走って近づいてくる拓真(俺の不幸の元凶)がいた。
「一緒に帰ろうぜ?」
なに?こいつが走って俺に近づいてきたのにただ一緒に帰ろうだと。
「…何をたくらんでいる?」
俺は周囲を警戒しながら拓真に疑いの視線を送った。
「何で一緒に帰ろうって言っただけなのに、そんなに警戒されなきゃいけないんだよ」
自分は何もしていません。みたいな動作をしているが、どう考えてもお前の日頃のおこないの所為だといってやりたい。
「つうか、お前のハーレムメンバーはどうしたんだよ?」
こいつはいつも自分にほれた女と一緒に帰っている。
「ハーレムって…彼女たちは友達だよ」
闇夜に背中から刺されて死んでしまえ。
「じゃあ、何で今日は俺と帰ろうとしているんだよ」
「ん?なんとなくだけど」
…本当に何もなさそうだな。今日の俺の勘は外れたのか?まぁ、当たってほしくなんて無かったから万々歳だけど。
「さぁ、帰ろうぜ」
そう言って拓真は俺の背中を押して前に歩き始めた。
おい、押すな馬鹿。転ぶだろうが。
[見つけた]
「「!!」」
この声は数日前に拓真の近くにいた幽霊みたいなやつの声とまったく一緒だった。
っくそ!これが今日のいやな予感の正体だったのか。
「なぁ、空?今の声聞こえたか?」
どうやら数日前とは違い、今回の声は拓真にも聞こえているようだ。
「声?何のことだ?」
俺はとぼけて危険を回避しようとしたが…
ブゥン
「「!?」」
突然俺たちの足元に、文字の羅列が書かれたまるで小説や漫画なんかによくある魔法陣のようなものが現れた。
あわてて俺はその陣から離れようとすると…
ッカ!
周りが光に包まれて意識を失ってしまった。
意識を失う前の俺の最後の思考は自分の勘はまったく外れていなかったことによる後悔と、幼馴染との絶交の決意だった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「うぅん」
うめきながら目を覚ますとそこはどこかの建物の中だった。
「っな!?」
俺は慌てて周囲を見渡すと、電気ではなくたいまつで暗闇を照らしていたり、明らかに堅気の人間ではない騎士甲冑に身を包んだ人たちが俺たちを包囲していた。
「うぅん」
声のしたほうを向くと、拓真も目を覚ましたところだった。
俺はポケットに手を突っ込んで、ポケットに入っているナイフをいつでも取り出せるようにしながらこの場所にいる人間を観察し始めた。
この場所にいるのは、俺たちを包囲している騎士のような人間が多数と、その騎士に囲まれている少女が一人だけだった。
俺が情報を整理していると、拓真が完全に目覚めたようで「ここどこ?」と喚いていた。
そして俺たちが完全に目覚めたことを確認したように、騎士に囲まれていた少女が俺たちの正面に立って(正しくは拓真の正面に立って)こういった。
「勇者様、この国をお救いください」
今回の厄介ごとはどうやら過去最高らしいと思ったと同時に、幼馴染と絶交するいい機会だと思った。
読了感謝します。
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