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巻き込まれ異世界物語  作者: sora
召喚編
10/13

第十話 依頼

☆祝☆十話!

この小説もついに十話をむかえることができました。

読者の皆様には大変感謝をしております。これからもどうかよろしくお願いします。

では巻き込まれ異世界物語第十話をどうぞ


 「それでは早速行きましょう!」

 「待ちなさい」

 「ぐぇ!」


 今のはクウがギルドから走って出ようとしたところをメイドさんがクウの服の襟首をつかんでその衝撃でクウが悲鳴を上げた。

 ・・・クウよ、つい昨日までは姫だったのだからもうちょっと落ち着けよ。


 「ッゲホッゲホ・・・いきなり何するんですか!?」


 クウはしばらく咽ていたがある程度回復すると涙目でメイドさんに抗議をした。


 「いきなりも何もあなたは何をしているのですか?」

 「何って依頼を達成するために町の外に出ようとしていたのよ」


 混乱しているのかクウの丁寧語が崩れた。


 「クウは依頼された薬草が何か分かっているのですか?」

 「・・・っあ!」


 しばらく悩んだ後、クウは自分がどの薬草を採ってくるのか分かっていなかったらしい。


 「はぁ・・・先が思いやられますね」

 「う~、初めての依頼でテンションがあがっていただけよ」

 「はいはい、そういうことにしといてあげますからあちらにある本棚でどんな薬草なのか調べますよ」

 「は~い」


 俺は食うとメイドさんの漫才を見た後二人に続いてギルドの片隅にある本棚のところに向かった。

 この場所は初心者の冒険者が採取系の依頼で何を採ってくるのか調べたり、討伐系の依頼を達成するときに必要な魔物の一部の証明部位を記録してある本がおいてある。

 魔物の弱点や薬の作り方とかは王都や大きい町にある図書館じゃないと分からないみたいだ。


 「ソラ様そちらにある薬草大全集という本をとってくださいませんか?」

 「ああ、え~と薬草大全集は~・・・あったあった」


 俺はメイドさんの行っていた本を見つけて手に取った。

 見た目は広辞苑以上の厚さの本で、所々擦り切れたり修繕のあとが残っていることから長い間たくさんの冒険者の役に立ってきたのだろう。


 「ほら、これであっているよな?」

 「はい、こちらの本であっていますよ」


 メイドさんは俺から本を受け取った後、ぱらぱらと本を見ていってとあるページで動きを止めた。


 「これが私たちが取ってくる薬草ですね」

 「どれどれ」

 「私にも見せてください」


 メイドさんが見せてくれたページには薬草の絵がかかれており空白にはどこに群生しているか、どのようにして見分けるかなどが分かりやすく書かれていた。


 「俺たちが採ってくるのは三日月草だから・・・ああこれか」


 三日月草の記述を見つけると、三日月草はこの町の南に群生しており見分ける方法は、草が三日月のように湾曲してたり、光を当てると光沢が見える。

 依頼はこの三日月草を五本ワンセットの束を十個作ることだ。更に束を作って盛ってくればその分も報酬に上乗せしてくれる。


 「ふんふん・・・・・・・よし、覚えました!早速町の南門から採取に向かいましょう」

 「だから待ちなさい」


 クウがまた走り出しそうになったところをまたメイドさんがストップをかける。


 「今度は何ですか?」

 「町に南にいる魔物を調べるのですよ」

 「何でですか?今回は採取の依頼で魔物の討伐ではありませんよ?」


 クウが不思議に思っているのか首をかしげている。

 しかし正直なところ今回受けた採取の依頼の報酬は10キル、俺たちが泊まっている宿屋は一日食事つきで20キルだ。

 ただ薬草の依頼を受けただけじゃむしろマイナスになる。だから近くにいる魔物を狩ってその素材分を金に替えて路銀を稼ごうとしてると、メイドさんは考えていると思う。


 「薬草採取だけではお金が足りないので魔物を狩って資金の足しにするのですよ」

 「そういうことだったの」

 「そういうことでソラ様そちらにこの近くに出てくる魔物の図鑑と地図があると思いますので取ってくださいませんか?」

 「分かった」


 俺が本を探すと薬草大全集があった近くにあったのでそこまで時間を掛けずに探し出すことができた。


 「ソラ様も目的の項目を探す練習をしてみてはいかがですか?」

 「それもそうだな。いつまでもメイドさんにおんぶに抱っこじゃ示しがつかんからな」

 「別に私はそれでもいいんですけど(ッボソ」

 「ん?何かいったか」

 「いいえ、何でもありませんよ」


 メイドさんの態度がちょっと気になったが俺は本を開いて目的の項目を探す。

 この本は場所ごとに分かれているので南方面のページを見つけることができた。


 「この本によると南方面にいるのはホーンラビットとゴブリン、あとビッグアントンみたいだな。ギルドで売れるものがあるのはホーンラビットの肉と毛皮と角で、ゴブリンとビッグアントンは証明部位だけで売れるところはないみたいだ」

 「ふむ、肉ですか。ホーンラビットの主食はなんて書いてありますか?」


 そんなことも書いてあるのかとページを見渡すと、名前の下に《草食・三日月草》と書いてあった。


 「三日月草って書いてあるな」

 「ならば先に薬草採取をした後にそこで待ち伏せをしてホーンラビットを狩るのが一番効率がよさそうですね」

 「三日月草は町の南口から30分ほど歩いた場所にある森の中にあるみたいです」


 俺とメイドさんがホーンラビットを狩る作戦を練っている間、クウが地図を見て三日月草がどこにあるのか見つけてくれていたらしい。


 「ではいきましょうか」

 「やっといけるのですね!」


 メイドさんが席を立ち上がるとクウが待ってましたとばかり高いテンションで勢いよく立ち上がる。


 「ソラさんも早く、早く!」

 「分かった、今行く」


 俺たちはクウに手を引かれながらギルドを後にした。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 



 俺たちは途中、店で水・ポーション・傷薬を買って南門まできていた。


 「通りたいのですが」

 「む、町を出るのか?」


 南門には門番の兵士が二人いて俺たちが町に出るのを聞いてきた。


 「はい、依頼の薬草を採取するために町を出ます」

 「分かった、今開けよう」


 そういうともう一人の兵士に指示を出して門を開けさせた。


 「町に入るときはギルドカードを提示してくれ。もしギルドカードがなかったりしたら町に入るのに100ミルかかるから注意しろ」

 「ありがとうございました、では二人とも行きましょうか」


 メイドさんは兵士に礼を言うと俺たち二人に声をかけてきた。


 「ああ、わかった」

 「は~い、早く行きましょう」


 俺たちはメイドさんに続いて町の門をくぐって外に出た。町の外は街道が整備されていて通りやすくなっていた。

 最初にこの町に来たときは馬車の中だったし、暗かったので新鮮な気分だ。

 30分ほど歩いていると整備された道を抜けて周りが森になっていた。

 地図によるとこの森に三日月草があるらしいが・・・


 「薬草類はだいたい森の開けた場所にあるので、その場所をまずは探してみましょう」

 「了解だ」


 メイドさんの知識を借りて開けた場所を探し始めた・・・・・・・・・が。


 「どこにも薬草がな~~~い!!」

 「ハァハァ、たかが薬草採取ごときでここまで苦戦するとは」

 「おかしいですね」


 開けた場所は簡単に見つかったのだが目当ての薬草がなくただの草しか生えていなかったのだ。

 一回や二回だったら他の場所を探せば言いとポジティブに考えられたが柔軟会も空振りだと文句のひとつや二つ言いたくなる。


 「なぁ、本当に開けた場所に三日月草は生えているのか?」

 「はい、それは間違いありません。からぶった場所の半分は三日月草の根っこがたくさん落ちていましたから、三日月草は確かにあったはずですよ」

 「じゃあ何でどこにもないんですか~!」


 クウが騒いでいるが軽く無視して今の状況を考えると、俺たちが言った場所の半分には確かに三日月草が生えていた。しかしそこにあったのは根っこのみ、これは明らかに不自然だ。


 「ホーンラビットが全部食べた可能性はあるか?」

 「それはないと思います。ホーンラビットは確かにこの森にはたくさんありますが三日月草自体は二、三日でまたはえてくるので全部なくなるということはないと思います」

 「じゃあ何で・・・」


 ないんだ。と言おうとしたときついにクウが切れた。


 「うがー!もう難しいことは考えずに片っ端から手当たり次第に開けた場所を見つけて薬草を探しましょう」

 「それもそうだな、ここで悩んでいても答えなんか分かるわけないし」

 「確かに分かりませんもんね」


 ここで気持ちを入れ替えたほうが言いと思いクウに賛成した。メイドさんも同じことを考えていたのか特に異論は唱えなかった。


 「じゃあ、レッツゴーです!」



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 



 「ぜぇぜぇ・・・やっと」

 「ハァハァ・・・見つけた」

 「ふぅ・・・かなり奥まできましたね」


 俺たちはアレから何時間もかけて生き残っている三日月草の群生地を見つけた。

 しかも何かのご褒美なのかそこにはホーンラビットの群れが食事中だった。パッと見だけど10匹はいる。


 「きたー!ホーンラビットもたくさんいますよ。これは散々クロウした私たちに神様がくれたご褒美なのですよ」

 「これだけ時間をかけたのですからこれぐらいのご褒美は当然ですよね」

 「まったくだ」


 しかし、いくら食事中といえど10匹のホーンラビットをすべて捕らえることはできないだろう。欲をかいて狩ろうとしたら本来の目的である三日月草を踏み潰しかねないのだから。


 「どうする?二、三匹ならいけると思うがすべては無理だぞ」

 「「いいえ、全部狩ります」」

 「うぉ!!」


 二人の意見を聞くために振り返るとバックにある炎のオーラが二人を包んでいた。

 どうやらここまで来るのにかなりの体力と精神力を使ったみたいで、二人の機嫌はとても悪い。


 「だが、実際にはどうするつもりだ?」

 「私の武器であるこれを使います」


 俺がどうするのか聞くと、メイドさんはかばんから小さいナイフをたくさん出していた。


 「投げナイフか、経験はあるのか?」

 「はい、台所に出現するねずみや黒光りする何かをこれでいつもしとめていました」

 「すごいな」


 俺は感心していた。黒光りするあいつはなかなか倒せないからな、元の世界でカッターでしとめようとしたがことごとく避けられて逃げられてしまったことがある。


 「なら俺はこれを使おうかな」


 そういって俺は懐から拳銃を取り出した。

 改造をしてあるからあまり音が出ないようになっている。心配ないかもしれないが一応念のために音には気をつけたほうがいい。


 「それはなんですか?」

 「これは俺の世界の飛び道具だ、たぶん強い魔物には効かないからこんなときでしか使いようがないからな」

 「そうですね、他の人に見られたら大変なことになります」

 「じゃあ、私は魔法であいつをしとめる」


 そういってクウは杖を構えた。


 「クウ、唱える魔法は威力の低い氷魔法にしてくださいね」

 「なんでよ?」


 そりゃぁ・・・・・・・・・


 「「薬草が傷がついたら売り物にならなくなるから」」

 「息ぴったり?!」


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 


 「俺は右側にいる4匹を狙う」

 「では私は奥にいる4匹を狙いましょう」

 「私は左側の2匹を狙います」


 俺たちはホーンラビットを狩る打ち合わせをしていた。

 一番腕のいいメイドさんが奥のを狙い、あまり薬草の生えていないところにいるのはクウが狙い、最期に他のがいる場所を俺が狙う作戦だ。


 「クウ詠唱を開始してください。詠唱が終わりしだい私の合図でいっせいに攻撃します」

 「「了解」」


 俺とクウがうなずくとクウは詠唱を始めた。


 「『我、氷を使いし者、我の敵に、氷の矢となりて追尾せよ』」


 クウの詠唱が終わった。


 「いきますよ・・・3、2、1、今です!」

 「『追尾氷矢ホーミング・アイスアロー』」

 「くらえ!」

 「はぁ!」


 メイドさんの合図で俺たちはいっせいに攻撃した。

 クウの放った氷の矢はホーンラビットを貫通して二匹ともしとめ。

 俺の撃った銃はすべてホーンラビットの頭をぶち抜き。

 メイドさんの投げたナイフもすべて頭に刺さっていた。


 「やった~。やりましたよ!私魔物を倒すの初めてです」

 「クウはよくがんばりましたね」

 「えへへ~♪」


 クウはジャンプしながら喜んでおり、その隣ではメイドさんがクウのことをほめていた。その光景はまるで姉が妹をほめいているような微笑ましい様子だった。


 「では、ホーンラビットの血抜きだけして薬草を摘んで帰りましょうか。これ以上ここにいると日没までに町に着かなくなってしまいますから」


 メイドさんにつられて空を見ると、空が紅くなりつつあった。


 「あわわわ、急ぎましょう。こんな森の中で野宿なんて嫌です」

 「では、ホーンラビットの処理は私がするので、ソラ様とクウは三日月草を摘んできてください」

 「分かった」

 「分かりました」


 メイドさんの指示を受けて俺とクウは薬草の採取を始めた。薬草を採取するときは根っこはとらずに葉っぱだけ切り取るのがマナーだ。そうすればすぐにまた新しい薬草が生えてきて俺たちの金になる。


 「ソラさん、たくさん採れましたよ~」

 「ああ、こっちもたくさん採れた」

 「こちらの処理も終わったので町に帰りましょうか」

 「は~い」


 クウのとあわせて採取した薬草は全部で30セットもあった。これにホーンラビットの素材の金も増えればかなりの金になるだろう。

 俺とクウはウキウキしながら歩いていたがメイドさんだけは何か腑に落ちないような顔をしていた。


 「どうしたんだ、メイドさん?」

 「いえ、結局なんで薬草がなくなっていたのかと思いまして」

 「ふ~ん、でも今は気にしなくていいんじゃないのか?せっかくの俺たちの初依頼達成なんだから」

 「そうですね♪大変でしたけど素直に喜びましょうか」


 そういってメイドさんが笑顔になってクウと一緒に歩いていった。

 実は俺もメイドさんと同じことを考えていた。ホーンラビットは明るいところを好むと本には書いてあった、つまりこんな森の奥に生息していることはおかしいことになる。

 一番高い可能性としては何かに住む場所を追い出されたというのが一番高い。

 いったい何がこの森の中に潜んでいるのか・・・


 「ソラさ~ん、早くしないとおいていきますよ~」

 「ちょ、ちょっと待ってくれ~」


 納得できなかったがひとまずこの問題は後回しにして俺はクウのあとを追った。

 そして町に着いたのは日没寸前だった。

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