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ツイてない時ってトコトン

「……んだよ、ソレ……」


 ぽろり、と口から出た素の言葉。敬語とかそんなモンはもうどうでもいい。


 あたしは、此処に来れば全てが解決すると思ってた。だってそうだろ? 目の前の美女は王子。国のトップに立つ人間。なら何でも知ってるんじゃないのかよ! あたしが此処にいる理由も! その方法も!

 分からないなら何の為にあたしは城になんて連れて来られたんだ!! なんだって偉そうに人を呼び出したりしたんだよ!! 珍しいモンを見たいからか? あぁ!?


「っざけんなっ!!」


 感情のままに立ち上がり、目の前の女顔を怒鳴りつける。


「ならあたしにどーしろって言うんだよ!! 来たくて来た訳じゃねーよ、こんなトコ!! あたしは……」


 目頭が熱くなって、零れそうになるものをこらえる為に両拳を握りこむ。こんな訳の分からない所で、こんな奴らの前で絶対泣いてなんてやるモンか!


「ったしは……帰りたい。帰りたいんだよっ!!!」

「アカリ!!」


 感情を吐き出した勢いそのままに、イースの声も振り切ってあたしは部屋を飛び出した。もうこんなトコ一分一秒だって居たくない。知りたくない現実も見たくもない現状も、今は無理だ。何も頭に入れたくない。何も聞きたくない。


 ひたすら白い廊下を走り続ける。夕陽を反射してオレンジ色に光る廊下は走っても走っても終わりが見えない。まるで迷路に迷い込んだような気がして、背筋にうら寒いものが走る。もしもあたしがこの世界に来てしまったのが誰かの意思だと言うのなら、絶対そいつを見つけ出してブン殴ってやる!!


(もう嫌なんだよ、こんなトコ!!)


 ようやく見えてきた角を曲がった所で、視界に飛び込んできた人影に気づいて両足に急ブレーキをかけた。けれど一歩遅い。勢いがついたまま、向かい側から歩いてきた人にぶつかってしまった。

 あぁもう!! 今日はぶつかってばっかりだ。


「ごめん!! 大丈夫だった!?」


 結構な勢いだったので当てられた方は痛かっただろう。慌てて謝れば、相手はゆっくりとこちらを振り向いた。


「あぁ、問題ないよ。お嬢ちゃん」

「あ、……すいませんでした」


 真っ白な白髪に少し曲がった腰。足首まである長いローブの上に刺繍の入ったストールのような布を肩に巻いているその人物は70歳をとうに越えているだろう老人だった。自分の不注意でぶつかってしまった相手がお年寄りだった事に益々罪悪感が増す。

 もう、ホント今日はツイてない。


「そんなに慌てて、どこに行きなさるね」

「え、あー……」


 そうだった。行くトコないんだった、あたし。

 

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