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かっこつけるのは結構大変

 バカみたいに散々笑った後、レティシアはいつの間にかお昼寝モード。ベンチに座ったあたしの膝の上ですやすや。しかも笑いすぎて興奮度が振り切ってしまったようで、今は美少女なお姫様ではなく仔竜モードだ。うん。やっぱりこっちの姿も激カワだなぁ。

 レティシアを起こさないようにそっとそっと鮮やかな紅色の鱗を撫でる。うはっ、ツルツルだ。ちょっとヒンヤリしているのがまた気持ちいいね。

 そんなあたしを眺めながら、イースがぽつりと言った。


「グリマス卿ですが……」

「……うん」

「領地の運営が上手くいっていなかったようですね。各所からの援助も断われ、王城から助成金を得る為に何が何でも貴方を手元に置いておきたかったようです」

「へー」


 そんなに金に困っているようには見えなかったけどな。ま、見得ってのもあるんだろうし、実際は火の車だったなんて事もあるんだろうけどさ。


「領地は国が没収する事になりました」

「え? 没収すんの? そんなことしたら余計に収入なくて困るんじゃないの?」

「無能な領主では領民が困るでしょう? 土地は元々王族と国民の持ち物ですから。貴族は管理を任されているに過ぎません。上手く運営できなければ取り上げられるのは当たり前の事です」


 はー、なるほどね。現実は厳しいわ。そんならあのチョビ髭があそこまで必死になるのも分かる気がする。死活問題だもんね。


「もう貴方に手を出す事は無いでしょうから、安心してください」


 あ、


「……何ですか、その顔は」


 分かっちゃった。なんで行き成りチョビ髭の話をすんのかと思ったら、イースは結局それが言いたかったんだ。気付いたあたしは嬉しくなって、自然と口から笑いが漏れる。


「むふふふっ」

「気色の悪い笑い方は止めてください」

「ふへへへへっ」

「頭でも打ったんですか?」


 失礼な奴。だが何とでも言うがいい。今のあたしのご機嫌は中々良いのだ。こんな浮かれた気分の今ならずっと言いたかった事、言える気がする。


「イース」

「はい」

「ありがとね」

「…………。何です、急に」

「迎えに来てくれた時、すんごい嬉しかった。でもまだお礼言ってなかったからさ」


 するとイースは眉間にぎゅっと皺を寄せた。機嫌が悪いわけじゃない。照れて、それを隠す為にワザと顔に力を入れているのだ。分かり安い奴。


「僕は……レビエント様の命で行っただけです」

「ふーん。あっそぉ」

「なんです、その言い方」

「べっつにぃ。あたしはイースのかっちょいーリーサルウェポンが見れたから、それだけでも十分満足してるけど?」

「だからそれ何語なんですか……」

「別にイースがあたしに帰ってきて欲しいと思ってなくったって関係ないし」


 ふいっと大げさに背けたあたしの顔を横からイースが覗きこんでくる。


「……アカリ」

「何?」

「拗ねてるんですか?」

「あたしをレティシアと一緒にしないでよ」

「やっぱり拗ねてるじゃないですか」

「拗ねてまーせーん」


 あてつけの様にぷぅと両頬を膨らませれば、イースの人指し指でプシュツと空気を抜かれてしまった。何すんだよコノヤロウ。


「アカリ」

「何さ」

「おかえりなさい」


 あ、それズルイ。だから今のあたしはその言葉に弱いんだよ!!


「…………ただいま」


 泣かないように顔に力を入れて、それでもなんとか絞り出した声は震えていた。

 ダサイなぁ、あたし。

 

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