表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/35

美少女の攻撃 こうかはばつぐんだ!

「レティシア様。新しい子守の方が挨拶に来ておりますが」

「……そんなの要らない」


 ぶすっと頬を膨らませ、むくれた幼い姫に侍女は苦笑する。いつもなら此処で諦めて帰ってもらう所だが、今日ばかりはそうもいかない。けれど相手は幼くとも一国の姫。彼女の許可がなければ臣下は入室を許されない。どうしようかと悩んでいると、礼儀やら許可やら面倒な事に興味が無い子守がさっさか姫の私室に入ってきた。その姿に呆れを通り越して笑ってしまう。侍女は何も言わずにその場から下がった。


「おっじゃまっしまーす」


 拒否した筈なのに誰かが勝手に入ってきたことに驚いたのだろう。レティシアはムッと機嫌の悪い顔をして、けれど目の前に立った顔を見た途端に絶句した。


「こんにちは~、じゃなかった。ごきげんよう?? まいっか、どっちでも。レティシア久しぶり~」

「ア……アカリ……?」

「あはははっ。あたしじゃなかったら誰だっつーの。何? もしかしてお昼寝中だった? 寝ぼけてんの?」

「アカリ!!!」


 顔を埋めていたクッションを放り投げてあたしの腕の中に飛び込んでくるレティシア。

 あ~も~っ!!!! かわ~~~い~~~い~~~~!!!! 何でこんなに可愛いんだろコイツ!!


「こらこら泣くな!」

「だって……だって……うわ~~~ん!!!」


 よしよしと小さな背中を撫でてやる。そうだよね。こんなに小さな頃に今まで傍に居た人が突然居なくなったらびっくりするよな。なんて思ったら、ウチのチビ達は今頃どうしているだろうかと心配になった。あたしが居なくなって少しは寂しく思ってんのかな?

 考えている内に鼻の奥がツンッとなって、あたしの目からも涙が零れる。それをレティシアに見られないよう手の甲で拭いて、あたしはニカッと笑った。


「ほーら! いつまでも泣かないの。また竜に変身しちゃうだろ?」

「アカリ……。アカリが新しい子守なの?」

「そうだよ。代わり映えしなくて悪いけどね」

「ううん、いいの!! アカリがいいの!!」


 ほにゃっと嬉しそうにレティシアが笑う。やっべ、この笑顔の破壊力!! 鼻血出そう。こりゃ絶対将来モテモテ美少女になるよ。今一瞬ショタの気持ちが分かってしまった。


 イースと共に王城へ戻ってきたあたしは結局以前と同じ処遇に戻った。仮の住まいはレイモンドさんの離宮。しばらくはレティシアの子守でバイト。ただ前みたいに遊んでいるだけでは申し訳ないので、侍女さん達の仕事も覚えて手伝いが出来たらと思っている。


「おかえりなさい、アカリ!」


 あ、まずい。今のキタ。めっちゃキタ。今のあたしにその言葉はNGだ。せっかくさっき誤魔化したのにまた鼻の奥がツンとする。瞼の裏も熱くなる。本当におかえりと言って欲しい人は遠い場所にいるけれど、それでも今レティシアのおかえりは冗談抜きで嬉しくて、あたしは結局溢れるものを我慢することが出来なかった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ