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必殺技の名前を考えるのは難しい

「書士風情が何をしているのか分かっているのか!!」


 部屋を出ようとしたあたし達の前に立ちはだかったのはチョビ髭。しかも顔を真っ赤にしてキレている。

 まぁ、せっかく王族に恩を売る事が出来たのに、あたしが連れ出されてしまったらそれも台無しだもんな。ご愁傷様。でも、イースは考えなしに単独でこんな事するようなバカじゃない。そのバックに誰がいるかってこと、自分の事でイッパイイッパイのチョビ髭は気づかないらしい。


「アカリは既に私の娘だ!! おい! そいつを捕らえろ!!」


 わぁお! ワラワラと私兵が前に出てくる。

 なんか、あれだね。ばーちゃんと一緒に見ていた水戸黄門のラストシーンみたい。黄門様も印籠も無いけどさ。悪役ってのはどこの世界でもワンパターンだな。

 暢気にそんな事を考えていたら、あたしをかばうように前に出たイースから、脱いだ制服の上着を渡された。


「アカリ。これ持っていてください」

「あぁ、うん。ねぇ、あんたさ」

「なんですか?」

「一人で来たの?」

「えぇ。そうですよ」

「あ、そう」

「心配ですか?」


 そう言って後ろを振り返るイース。その口元にはレビエント王子みたいな不敵な笑み。だからあたしもおんなじ顔して見返してやった。


「いいや。全然」


 だってあたしは知っている。イースがただの貧弱な書士じゃないってこと。こいつの腕には最終兵器が備わっていることを。


「行けイース! 今こそリールウェポンを解き放つのだ!!」

「何語しゃべってるんですかソレ……」


 若干呆れた顔でイースが溜息をつく。空気の読めないヤツだな。こう言うのはノリが大切なんだぞ。ノリが。

 そうこうしている間にサーベルを抜いた私兵が、暴れるには狭い室内であたし達を取り囲む。けれど彼らの顔色が変わるのは早かった。イースがいつの間にか変化した右腕を持ち上げたのだ。

 あぁ、やっぱイケてんな。後で触らしてくんないかな。


「加減が難しいので、受身は取ってくださいね」


 最強の右腕。それを持つ彼の表情は優しげと言っても良いほど穏やかで、そのギャップが余計に恐怖を煽る。こいつ何気にSなんじゃぁ……。


 勝敗は直ぐに決した。その間数分にも満たなかったかもしれない。


「お世話になりました」


 ほんの短い間だったけれど、衣食住を提供してもらったのだ。青ざめて腰を抜かしているチョビ髭に挨拶してからあたしは白い馬車に乗った。後からイースも乗ってくる。互いに向かい合って座ると、意外に距離が近くてなんだか変な感じだ。

 穏やかなイースの笑顔に、目の奥が熱くなる。


「もう、泣いてもいいんですよ。ここには僕しかいません」

「……うっさい。ばか」


 下を向いたあたしの髪を人の腕に戻ったイースの右手が撫でた。ちぇっ、戻っちゃったのか。触ってみたかったのにマジ残念。

 

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