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美人のツボは理解不能

 現在、実に楽しそうにあたしの手を引きながら歩いているレティシアに連行されている。彼女が身につけているのは昼にプレゼントされたばかりの鮮やかな黄色いワンピース。まるでレティシア自身がお花みたいだね。やべーよ。マジかわだよ。

 因みに一緒にお着替えしようと言われたあたしだが、それだけは阻止した。だって侍女さん達が用意していたのはフリッフリッのドレス。ありえねー!って叫んで逃げた。だが、見送りの一時間前になってレティシアの命を受けた騎士達に捕まってしまったのだ。着替えはしなかったものの、結局こうして見送りの為に正面玄関へ移動している最中なのである。

 その途中、中庭を挟んだ向かいの廊下から何やら不快な声が聞こえてきて、あたしはそちらに目を向けた。


「アカリ?」

「しっ」


 紅の国は元々他国よりも気温が高いせいか、建物は吹き抜けが多く風がよく通る造りになっている。だからちょっと位離れた場所でも大きな声を出していれば聞こえてくるのだ。嫌な予感がしたあたしはそっとしゃがんで声の下へと近付いた。

 自慢じゃないけどあたしの勘って昔からケッコー当たるんだ。興味を惹かれたのかレティシアも黙って生垣に隠れながらついて来る。あたし達が行き着いた先に居たのは40代ぐらいの知らない顔のおっさんとイースだった。


「…………るなよ」

「……一体何の話ですか」

「レビエント殿下に気に入られているからっていい気になるなと言ったんだ! お前のような半端者が殿下の傍をうろつく等考えただけでも不快だというのに!!」


 あたしは一瞬耳を疑った。思わず隠れているのも忘れて苛立ちと共に声が零れる。


「……んだよ、あれ」


 半端者ってあれか? 前にイースが見せてくれた腕のことか? マジだったのかよ。中途半端な竜化しか出来ない奴が嫌われるってのは!! ならもしかして、この前のあの壷も……イースへの嫌がらせだったんじゃ……。


「ざっっけんな、このクソジジィ!!」

「アカリ!!?」


 突然生垣の裏から飛び出してきたあたしに驚いたイースがぎょっとした顔をする。一方いきなり小娘に怒鳴られたイースと似たような制服を着たおっさんは動揺を隠すようにあたしを睨み付けた。けど、そんなもんにビビるあたしじゃない。日本の女子高生ナメんなよ!


「なっ、何だね、君は……」

「そうやってくだらねぇ理由振りかざして楽しいか? 人を見下すことしか出来ないからハゲるんだよ! このアンポンタン!!」


 おっさんの頭頂部は見事にツルッツル。絶句するイースとおっさん。ギロリとハゲを睨みつけているあたし。しばらくこの膠着状態が続くのかと思いきや、静寂を破ったのは押し殺したような笑い声だった。


「で、殿下……」


 ハゲの声につられるように後ろを振り返れば、そこには口元を押さえたレビエント王子が。丁度彼も見送りのために玄関へ向かっている所だったんだろう。

 あちゃー、まずいとこ見られちゃったな。これで子守の仕事クビかもしんない。でも、それでも……


「アカリ」

「何? あたし絶対謝んないからね!」


 ふんっと顔を逸らせば、レビエント王子が言ったのは的外れな一言。


「アンポンタンとはどういう意味だい?」

「はぁ?」


 今重要なのはそこじゃなくない? まぁ、いっか。何がツボったのか、美女王子はどうやら笑いをこらえているみたいだし。説教されずに済みそうだ。

 

 

【翠の国 その頃……】



「カノ――ン!!!」

「あ、リアスくん! 早かったね。お帰りなさ……わ――――――っ!!!」


 竜のまま飛び掛られ、庭にいた風音はその場に倒れこんだ。そのままぐりぐりと鼻先を頬やお腹に押し付けられる。


「ちょちょ……、リ、アス君……くるし……」

「カノン!! 俺がんばった!! ちゃんと陛下の前で挨拶したし、パレードも手を振ったし、会議も寝なかった! 三日間我慢した!!」

「そっか……。頑張ったね」

「うん!!」


 子供とは言え、自分よりもはるかに大きな竜がしっぽフリフリ。風音は仰向けに倒されたまま鼻先を撫でた。


「(可愛いなぁ)偉かったね。お疲れ様」

「カノン! カノンはオレの事好きだよな?」

「 ……へ?」

「オレ頑張ったんだ! な?」

「(何で今の流れ出そうなるの?)……う、うん。そう、だね」

「カノ―――ン!!! オレも好き――――――――!!」

「わ――――――――っ!!!!!!(つぶれるって―――――!!!)」





(朝一で紅の国を発ったリーリアス。一人で勝手に帰ってはいけません。笑)

 

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