双子がタチ悪いのって案外定番
「それは無理」
どきっぱりと言ったあたしの言葉にレティシアが目を潤ませる。おいおい。そんな可愛い顔してもダメなもんはダメだからな。
「君ははっきりとものを言うね」
「レティシア姫お可哀想に」
そう言ったのは目の間にいる二人の王子。この国ではない、昨日イースが言っていた黒の国の王子達だ。小麦色の肌をした紅の人達とはまた違う、浅黒い肌にアジア系の堀の深い顔立ち。歳は二十代半ばっぽい。外見はまるでコピーしたみたいにそっくりな双子だ。
今日から正式にレティシアの子守として始動したあたしはさっそく彼女部屋に来ていた。すると昼食前のこの時間に彼らが尋ねてきたのだ。レティシアが寝てしまった為に昨日渡せなかった贈り物を持って。
あたしは他の侍女達に混じって部屋の隅でその様子を眺めていた。綺麗に包装された贈り物の箱を開ければ、中に入っていたのはレティシアに似合いそうな黄色のドレス。おーおー、流石。やっぱりお姫様へのプレゼントって言ったらこういうモンになるのか。そう思っていたらレティシアが言った。今日のお見送りには早速そのドレスを着ますね、と。
本日は夏節祭の最終日。この王城にいる王族達は皆竜の姿になって祖国へ帰るらしい。国民達がその姿を拝めるように陽の高い内に。レティシアが言っていたのはその見送りのことだ。そして黄色いドレスを胸に当てたまま、あたしの方をくるりと向いてこう言った。アカリも一緒にね!、と。はい、ここで冒頭の台詞に至るワケ。
いやいや、無理でしょ。良く考えてみてよ。一斉に紅の王城を発つ王族達。そしてそれを見送る紅の王家の人々。どう考えたってその姿は大勢の国民達からの歓声や敬愛の眼差しを浴びるに違いない。ダチを駅まで送るのとはワケが違うのだ。なんでそこにあたしもそこに居なきゃならんのさ!
「アカリ……」
「ダ~メ!!」
ガキんちょに好かれるのは嫌いじゃないが、それとこれとは別問題。
あぁ、なんかニヤニヤしながらこっちを眺めている黒の王子達の顔がムカつく!! あいつら絶対腹の中真っ黒だよ!! イケメンだからってツラの良さに騙されると思うなよ!! ……って、あぁ~~。侍女さん達はうっとりと双子王子に見とれている。レビエント王子もレティシアも超絶美少女だからな。男らしいフェロモンには耐性がないのかもしれない。恐るべし! 腹黒イケメンフェロモン効果!!
「ナルヴィ殿下、ナキアス殿下! お二人もアカリに見送って貰えたら嬉しいですよね?」
そんなレティシアの言葉に王子達が「勿論だよ」と同時に答える。
ぅおい! コラちょっと待てぇい!! そこの二人はただ面白がっているだけだから!! 絶対あたしの見送りなんかどうでもいいと思ってるから!!!
「やった! アカリ!! アカリも一緒にお着替えしよう!!」
「だからあたしは行かないっつーの!!!」
絶対絶対行かないからね!!




