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ファンの根性侮るなかれ

 

(可愛い……)


 今、レティシアはあたしの膝の上で丸くなっている。勿論仔竜の姿のままで。泣き疲れてしまったのか、あの後宥めようと抱きしめ背中を撫でていたらいつの間にか眠ってしまったのだ。背中とは違って柔らかそうなお腹が呼吸と同じタイミングで動いている。

 あぁ、めっさ可愛い。寝ているのでなければ撫でくり回したい。今まで犬や猫のようにふわふわした毛並みを持つ動物が好きだったが、竜みたいに艶々サラサラした鱗もアリだ。


「そういや、イースって何しに来たの?」


 今だイースはあたしと共にレイモンドさんの離宮に居る。書士って仕事はそんなに暇なのか?


「……今何か失礼なこと考えませんでした?」

「いや。全然」


 なんで分かったんだコイツ。とりあえず怒られる要素を否定すると、イースは一瞬疑うような眼差しをよこしたが、しつこく追求するつもりはないのか説明を始めた。


「レティシア様を探しに来たのですよ。黒の国の殿下達がレティシア様に贈り物をと仰っているので」

「黒の国っつーと、あれか、護国の一つの」

「そうです。今は夏節祭中ですから各国の王族の方々が我が国に集まっています。この期間中は陛下を初め殿下達も外交のために忙しい日が続きますからね」

「夏節祭……?」

「昨日アカリも見たのでしょう? パレード」


 リオのカーニバルかと思ったあの馬鹿騒ぎの事か。


「あぁ、あれね。あれってやっぱお祭だったんだ」

「えぇ。そうです。夏の訪れを祝うお祭です。各国で夏節祭は催されますが、夏の主役ホストは紅の国ですから。パレードやお祭を楽しむ為にこの三日間は旅行者も多くこの国に集まるのです」

「はぁ~、成る程。それであの騒ぎ。じゃあ、お祭り中だからイースの仕事も休みなの?」

「いえ。私自身の仕事量はいつもより少ないですが、普段はお忙しい各国の王族が集まるのです。そんな事は滅多にない。国民は三日間ずっとお祭でも、この機会を活かして会合や会議が開かれます。どちらかと言えば、外交担当はいつもよりも忙しいのですよ」

「ふ~ん。王城で働くってのも大変だな」


 一般人はお休みだってのに、王城の人達はそんな暇もなく働いているなんて。けれどイースは穏やかな笑みを浮かべた。そこに不満の色はない。


「陛下達のお傍で働く事が出来るのです。それだけで国民の憧れなんですけどね」


 陛下のお傍で、なんて言われてもあたしには分かんない感覚だなぁ。どんなに過酷な状況でも好きな芸能人を追いかけるファンみたいなものなのかな?

 

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