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泣く子供が最強の生き物

「誰が説教眼鏡ですか! 僕の名前はイースです!」

「知ってるっつーの、そんな事! あだ名ぐらいで一々キレんな!」

「そんなあだ名失礼でしょう!! 大体貴方は……」


 ついついあたしがポロリしてしまったせいで発展した低レベルな口喧嘩。だが、それも長くは続かなかった。傍でそれを聞いていたレティシアが……泣き出したからだ。


「け、けんかはダメなの~~~~!」


 うわーんっ、と喚くレティシアにあたしは呆気に取られ、イースは顔を青くする。王族のお姫様を泣かせたなんてこいつにとっちゃ死活問題だからな。

 あたしはごめんごめん、と言いながらレティシアの頭を撫でた。


「びっくりさせちゃったか? でも別にマジ喧嘩じゃないよ?」


 けれど中々彼女は泣き止まない。子供って一度泣き出すと苦労するんだよなぁ。


「レ、レティシア様……、そんなに興奮なさってはお体が……」


 何故かうろたえるイース。お体ってなんだ? もしかしてこの子病弱だったりすんのか? 先に言えよ、そう言うことは!!

 あたしは体を拭く為に持っていたタオルでレティシアを包む。今度は涙を拭く為に。その時だ。異変が起こったのは。


「え……?」

「レティシア様!!」


 彼女を包んでいた手の感触が一瞬にしてなくなり、被せた筈のタオルがふわっと床に落ちる。ありえない。まるで手品のようにレティシアの姿が消えてしまった。

 イースが慌ててタオルを拾い上げ、そしてあたしは言葉を失った。消えたレティシアの代わりにタオルの下から出てきたのはありえないモノだったから。

 どこから入って来たのか。そこには明るい赤色の鱗に覆われたトカゲがいた。いや、チワワくらいの大きさはあるからイグアナかもしれない。長い尻尾に小さくて可愛い手足にはしっかりと鋭い爪が生えている。そしてその背には……鱗と同色の蝙蝠のような翼。


「何コレ? なんで羽はえてんの?」

「何故って……、竜姿になれば翼があるのは当然でしょう」


 おいおい、今この眼鏡なんつった?


「ちょ……、待て待て。竜ってあれか? 漫画とかゲームに出てくるような竜? ドラゴンのこと?」

「……一体あなたが何を仰っているのか分かりかねますが、竜は竜です。この国の建国史を読んだと侍女から聞いてますが?」

「だってあれ絵本じゃん!!」

「絵本でも立派な歴史書です。この国の歴史を子供にも分かりやすいような文章と絵にしただけで」

「じゃあ……、竜がこの国を造ったってマジなの?」

「えぇ、勿論。王族は皆濃い竜の血を引いているが為に、こうして竜の姿になる事が出来るのです」

「王族って事はびじ……レビエント王子も?」

「当然です」


 驚きのあまり再び心のあだ名を暴露するところだった。危ない危ない。


「レビエント様ほどになれば、竜姿になるか人型になるかは自由に自分の意思でコントロールできますが、レティシア様のようにまだ幼い子供は興奮したり動揺すると竜の姿に戻ってしまうのです」


 竜ってマジだったのか。低レベルな絵本とか言ってごめん、侍女さん達。

 

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