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可愛い子ほどイジリたくなる

「おや、随分と落ち着きがないね。リーリアス」


 夏節祭二日目の午後。サロンに用意されたお茶を飲みながらレビエントは翠の国リーリアス王子に声をかけた。

 彼は三人兄弟の末っ子で、いつもレビエントには固い表情を向けてくる。と言っても昔からそうだった訳ではない。六ヶ月前の新節祭から、どことなく自分には冷たい態度を取るようになった。その理由を良く分かっているので、レビエント自身は気にも留めていないが。

 そして今日も例外なく、彼は不機嫌そうな顔を向けた。


「……そんな事はありません」


 すると彼の両隣に座っていた兄王子達が言葉少ない弟の代わりにと口を開く。


「あんまりいじめないであげくださいよ、レビエント殿下。リアスは大事な婚約者と離れ離れなのが寂しくて仕方がないんだ」

「そうそう。此処に来るまで絶対紅の国には行かないって言って聞かなかったんだから」


 からかうように暴露された事実にリーリアスのこめかみに青筋が立つ。それに気づいていながらレビエントも笑顔で追従する。


「そうなのかい? 可愛いところもあるじゃないか、リーリアス」

「うるさい!!! 分かっているなら俺を帰せ!!」


 護国では季節の訪れを国を挙げて祝う。その為の三日間に渡るお祭には各国の王族が集まる仕来りになっている。新年を祝う新節祭では白の国、春節祭は翠の国、夏節祭は紅の国、秋節祭は黒の国、冬節祭は蒼の国。夏節祭真っ只中の紅の国には現在他四つの国から王族が訪問しているのだ。

 国を代表して訪れているのだから、当然正式な外交の場でもある。にも関わらずホストである紅の王族の前で堂々と帰りたい、と言うのは無礼に当たる。けれど当の本人であるレビエントに気分を害した様子はない。それもその筈。全て分かっていて、翠の兄王子達と共に幼いリーリアスをからかっているのだから。


「ダメだぞ、リアス。これも王族として大切な仕事なのだから」

「そうだよ。カノンちゃんも言ってただろう。頑張ってきてねって。仕事の出来ない男は嫌われるぞ」


 真っ赤な顔で怒っていたリーリアス王子は、途端に顔を青くする。幼いながらに普段は大人びた性格の彼だが、婚約者の名を出された途端これだけ動揺するのだからやはり面白い。


「カ、カノンはそんなことで俺を嫌いになんて……」

「いいや、分からないぞ。愛想つかせて白の国に戻るって言うかもな」

「そうだね。三日も我慢できない男なんてかっこ悪いモンね」

「~~~~~!!!」


 何か言い返したかったのだろうが何も言えず、リーリアスは席を立ってサロンを出て行ってしまった。残された悪い大人三人は、楽しそうに笑みを交わす。


「おやおや、いじめ過ぎてしまったかな」

「リアスなら大丈夫ですよ。そういえば、そちらの可愛い妹姫はどうしてるんです?」


 するとレビエントは唇に優美な曲線を描いた。


「あぁ、今頃子守と一緒だろう」

「子守?」

「お爺様の紹介で、元気な子守がつくことになってね」


 そう言って再びティーカップに口をつけた。

 

 



【どうでもいい翠の豆知識】


風音の手のひらにちゅーしたレビエントを今だ警戒しているリアス。その為、彼の中に風音を紅の国(敵の本拠地)につれて来るという選択肢は存在していません。

旦那の嫉妬のせいで重要なフラグを発見すら出来ない風音(笑)

 

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