4/4
(4)
ネコは風邪をひきました。ダンナサンは心配して、何時間もあぐらの真ん中に抱いてくれました。
オクサンは、寒くないようにと、毛布を引っ張りだしてくれました。
子供達も、スポイトで代わる代わる水を飲ませてくれました。
それでも、ネコはだんだんに弱ってゆきます。
ある夜、ネコは夢をみました。
夢の中の自分は、まだ小さな子猫です。
大きな人間の手がいくつも伸びてきて、ネコを捕まえようとします。
ネコは逃げようとして、走り出しました。
横たわったまま、走るように足を動かすネコを見て、オクサンは眠っている子供達を起こすために、二階へ上がって行きました。
ダンナサンはネコの名前を呼びました。何度も何度も呼びました。
夢の中を逃げ惑いながら、ネコは懐かしい声を聞いた気がしました。
自分を呼ぶ声。
オクサンの声、ダンナサンの声、オトコノコの声、オンナノコの声…
あの声のする方へ、居心地のよい、あの場所へ。
ネコは力強く走り出しました。
夢うつつに、優しい手のひらが自分を撫でてくれるのを感じたけれど、ネコにはもう、それが誰の手なのか分かりませんでした。