(1)
大きな倉庫に、小さな子猫が迷いこみました。
「ここは危ないよ。」
人間達は子猫を追いかけて捕まえました。
「この子をどうしよう?」 アルバイトのお姉さんが手をあげました。
「私が飼います。」
お姉さんは子猫を大事そうに抱えて帰りました。
そこは、お姉さんのカレシの家でした。
「俺、ネコは好きじゃないんだけど」
そういいながらも、カレシはネコのために、おいしいごはんと、暖かな寝床を用意してくれました。
追いかけられた時に、怖い思いをしたせいで、ネコは人間を嫌いになっていました。
人間と一緒にいるのは、おいしいごはんのため。ネコはそう思っていました。
ある日、ネコは寝床が冷たい気がして、部屋を見回しました。
カレシがあぐらをかいて、テレビを見ています。
その膝の上に、ネコは飛び乗りました。
大きなあぐらは思った通り暖かく、居心地のよい場所でした。
「怒らないでね?」
お姉さんが、ちょっと遠慮がちに頭を撫でました。
その手のひらは、やはり暖かく、そして優しいものでした。
ネコは、もう少しここに居るのも悪くないような、そんな気がしました。
あぐらがネコの体にぴったりの大きさになる頃、カレシが『ダンナサン』になりました。