ギリソロで冒険者出来てる
~とある酒場
ここは冒険者が集う町の酒場。 その日の成果や冒険譚を語り合う、地球でいうところのSNS的な場所と言えるかもしれない。いや用途も概ね同じだろう、出会い、集い、褒めあい、けなしあい…
まぁ顔を合わせて目を見て文句を言うだけ地球のSNSよりよほどマシと言えるかもしれない。ただ、俺はこの喧騒が結構好きだったりする。
人との関わりは苦手だが人の集まりは好きだったりする。女性との関りは絶望的に苦手だが女性には人一倍興味があったりする。
とにかく、俺は1日の終わりをこうして喧騒の中に自分を放り込んで、周りと溶け合いながらカウンターでチビチビ呑む酒が好きだ。
「んだぁてめm~やんのynれ~」
酔っ払いが誰かに絡み、すぐに喧嘩が始まるのはいつもの事。それに乗じて賭けが始まるまでがセットだ。戦士風の男と、背丈は低いが体格のいいドワーフだ。3:7でドワーフ人気らしい。やはりドワーフの喧嘩強さはどこの国でも同じらしい。
誰が言う訳でもなくテーブルや椅子がどけられ、主役の二人を残して簡易的な特設リングが出来上がり、いつもながら手慣れたもんだと感心する。俺もカウンターの端で干し肉を齧りながら喧嘩の行く末を見守る。
レフェリーもルールもなく、開始の合図すらないのに二人はまるで親友のように同時に殴り合い、お互いが吹っ飛び大歓声が沸き起こる。
意外にもと言うか酒のお陰か、戦士風の男はケロッとしていて、ドワーフの方がダメージが多いように見受ける。戦士風の男は襲い掛かるような無粋な真似はせず、その場で見下ろして手招きをしている。ドワーフは痛みに顔を歪めながら立ち上がった。
その後2~3発でドワーフは床ペロするハメになり、勝負は大荒れとなった。今日の探索報酬を全額自身にオールインしていた戦士風の男は大儲けとなった。
お陰で戦士風の男は店中の連中に1杯のオゴリと、近くにいたクレリックにドワーフの治療費を払ってもまだ懐は温かいようで、よほど財布に余裕があるのだろうか近くにいた吟遊詩人に声をかけた。
「おい、吟遊詩人、なんか一曲頼む」
吟遊詩人は楽器を小脇に抱えて恭しく一礼をし、コホンと咳払いをして喉を整えた。
「黒き衣に身を包み どこからともなく現れる。 竜と魔王を屠り その身に竜の加護と魔王の力を宿し者。 全てを切り裂き 魔法さえも切り捨てる。 右手に剣 左手に魔法 彼の囁きで炎は消え去り 水を従え 全ての女は膝まづく 彼は孤高の魔法剣士 二人といない魔法剣士。」
まばらな拍手がおこり、口々に噂話が始まる。
「ほんとに居るのかねぇ~そんな奴」
「ホントらしいぜ、通りすがりに助けてもらったパーティーに聞いたんだ!」
「剣と魔法の二刀流に加えて【火】と【水】を扱うなら【ダブル】でもあるわけだよな?」
「そりゃいくら何でもデタラメすぎんだろ?」
ふふふ むず痒い感じが非常に心地よい、今日は特にいい酒になったな。勘定を済ませて外に出るとさらに心地よい春の夜風が頬を撫でる。
さ~て、明日も頑張るか。
金に困っているわけではないが基本的に野宿で事足りているので本日も寝床に帰る。
町から川上に15分ほど歩くと岩石地帯の入り口に着く。ここには寝床に出来そうな穴蔵が沢山あって、他の冒険者もよく寝泊まりしているちょっとしたキャンプ場みたいなっている。俺のお気に入りの場所はソロに丁度の大きさのくぼみで、水影をタープの様に斜めに張り草のベッドに横になる。春先とは言え夜はさすがにまだ冷え込むので焚火に火をつける。
枯れ木に鉄粉を少しまぶしてフォノンを流し込むと… ボッ!
簡単に火が起こせるが魔法ではなくスキルによるものなので、吟遊詩人には悪いが俺は魔法剣士ではないし、もちろんダブルでもない。そんな単純な話じゃあ無いんだよな。
タープに変形している水影の一部をコップに変えて薬草と海藻を煎じたポーションティーを入れる。吞んだ後はこれに限る。
焚火の音をBGMに塩気の聞いたお茶で体を温め、明日を想いながら夢の中へ誘われていく至極の瞬間。
~翌朝、昨日の酒が全く残っていないのはあの【ポーションティー】のお陰と言わざるを得ない。かるく体を伸ばして辺りを見渡すと、あちらこちらで朝の支度が始まっている。この岩石地帯の真ん中には大きな川が一本流れているが、下流の町への水源でもあるので、人工的に作った湖が冒険者の水場になっている。
水源から溝を掘って岩石地帯の低所に水を引っ張っただけの湖だが、その大きさは直径で1キロメートルを超えていて、岩石地帯の一部は湿地帯になり、今では生態系に多大な影響を与えている。そしてその湿地帯の一部の地盤が崩落したのが100年前。その時姿を現したのがこの【荒野の回廊】と呼ばれるダンジョンだ。
今では腕に覚えのある冒険者が集う中~上級者向けのダンジョンとしてすっかり有名になった。このダンジョンはレア素材がよくドロップすることで有名で、特に魔法関連の素材や道具、運が良ければ魔法武器が手に入ることもある。
現在は21階層まで踏破されているが、まだまだ底は見えてこないらしい。普通のダンジョンは1階層がネズミ―ランドくらいの広さで、あの広さを戦いながら探索するのはなかなか骨が折れる。が、しかしこの荒野の回廊はなんと東京4区ほどの広さがある。
なんおで隅々まで完全に探索が終わっているのは10階層までで、それ以降はとりあえずクリアだけしたって感じらしい。しかし、俺のスキルはダンジョンでこそ、その本領が発揮されることもあり1階層から念入りに隠し部屋を探し回っている。その甲斐あって10階層中で2個の隠し部屋を発見し、恐らくだが超絶レアと思われるアイテムをゲットした。
一つはなんか高そうな瓶に入った液体と、もう一つは高そうな指輪だ。ぶっちゃけ液体はなんだかわかっていないが、指輪の効果は凄かった。
【斥力の指輪】
有効範囲は1メートルほどだが、人くらいなら3メートルは吹っ飛ばしてしまう程の凄まじいモノだった。俺は液体や軽いものなら浮かせたり、時間をかければある程度は重いものでも浮かせたり出来るが、高速で飛んでくる矢とか走ってくる人とかを止めるほどの瞬発力がないのが弱点だった。
まさにこの指輪は俺の欲しい能力をピンポイントで補ってくれた。
しかし、液体の方はどうしたものか…飲むのも怖いし用途が全くわからないから扱いに困る。かと言って割れてしまえば即終了なので、取り敢えず最低限の水影で覆ってガードしてるが、少量とは言え水影をずっと瓶のガードに割いておくのも嫌だ。
ま、とは言え拾ってしまったからには仕方ないか。
さて、ここからは踏破はされているものの、探索はまだまだ完全では無い11階層だ。
ここからは俺の独壇場、俺だけが見つけれるボーナスタイムに突入だ。
少しづつ書いていきます。




