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俺たちの本気バラエティ!  作者: 空腹原夢路


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第6話「卒業式と、それぞれの春」

三年生・冬


文化祭から一年が経った。


三年生になった俺たちは、受験勉強に追われていた。


城戸は放送部を引退して、大喜利コーナーは後輩に引き継いだらしい。俺も投稿をやめて、勉強に集中していた。


城戸とは時々廊下で会うけど、話すのは「勉強やばい」「まじやばい」くらい。


篠原さんとは同じクラスだけど、お互い受験モードで、あまり話す機会がなかった。


文化祭の三人の約束「三人の名前がクレジットに並ぶ番組」も、今は遠い夢のような気がしていた。


受験が終わるまでは、何も考えられない。


そう思っていた。



二月中旬を過ぎ、私立の合格発表がピークを迎えた頃、城戸からLINEが来た。


『三人で話したい。放課後、放送室で』


久しぶりの召集だった。


放課後、放送室に行くと、城戸と篠原さんがすでにいた。


「よう、久しぶり」


「久しぶりって、同じ学校だろ」


「でも、三人で集まるのは久しぶりじゃん」


確かにそうだ。文化祭の打ち上げ以来かもしれない。


「で、なんの話?」


「単刀直入に言う」


城戸は真剣な顔で言った。


「最後に面白いことやらない?」


「……は?」


「このまま卒業したら、なんか寂しいじゃん。三人で何かやったのって、二年の文化祭が最後だろ。もう一回、なんかやりたい」


「いや、でも……卒業式で変なことできないだろ」


「変なことっていうか、伝説を残したいんだよ」


「伝説?」


城戸の目が光った。


「俺たちがこの学校にいた証を、残していきたい。卒業しても、この学校に『あいつら何かやったらしい』って語り継がれるようなやつ」


篠原さんが興味深そうに聞いている。


「具体的には、どういうこと?」


「まだ固まってないけど……宝探し、とか」


「宝探し?」


「卒業式の日に、突然映像が流れるんだ。『この学校のどこかに、宝を隠した』って。誰が仕掛けたかは明かさない。在校生たちは『え、なに?』ってなる」


俺は少し考えた。


「宝って、何を隠すんだ」


「そこなんだよな……」


城戸が腕を組む。


篠原さんが言った。


「ねえ、文化祭の大喜利の回答、まだ残ってる?」


「え?」


「出演者が書いた回答用紙。あれ、どうしたの?」


俺は思い出した。


文化祭の後、出演者たちの回答用紙は俺が回収していた。捨てるのも忍びなくて、ロッカーにしまったままだ。


「……ある。全員分」


「それ、宝にしない?」


篠原さんの目がキラキラしていた。


「私たちの大喜利の記録を、学校のどこかに隠すの。それで十年後にまだそこにあるか、三人で確認しに来よ!宝探し&タイムカプセルみたいな感じで!」


「それいいな……十年後か……」


「そう。十年後、またこの場所に集まって確認する。その時には、私たち、ちゃんと成功してるはず」


城戸が食いついた。


「いいじゃん!俺たちの誓いも込めて、隠すんだ」


「隠すって、どこに」


「校庭の隅とか、体育館裏とか……いや、バレるか」


「ここは?」


俺が言った。


「ここの、機材の裏とか。あそこなかなか掃除もされないよな」


「おお、いいね!」


「でも、宝探しって言っても、ただ隠すだけじゃ面白くないだろ」


「だから、映像を作るんだよ」


城戸が身を乗り出した。


「卒業式の日、突然体育館のスクリーンに映像が流れる。『この学校のどこかに、宝を隠した。在校生の皆さん、見つけたらすべてあなたのもの』って」


「誰が仕掛けたか分からないまま?」


「そう。謎の卒業生からのメッセージ。学校中が『誰だよ』ってざわつく」


篠原さんが笑った。


「面白い。私、ナレーションやりたい」


「声でバレない?」


「大丈夫。演技で声色変えられる」


俺は考えた。


構成は俺が考える。映像編集と機材の仕込みは城戸。ナレーションは篠原さん。


三人の役割分担がはっきりしている。


「在校生にとっては宝探し。俺たちにとってはタイムカプセルってことか」


「そういうこと!見つかっても見つからなくても、十年後に確認しに来る。それだけで面白いじゃん」

城戸がこの目をしたらもう止められない。


「……面白いかもしれない。まぁ、在校生が見つけたら中身見てがっかりするかもしれないけど」


「いいじゃん。俺たちにとっては宝なんだから」

城戸はいつまでも前向きだ。


「メッセージだけ残しておくか…今はただの紙切れだけど、十年後、この紙切れは必ず価値が出るって」

口から、そんな言葉が出ていた。


「桐原くんナイスアイディア!私たちが有名になれば本当の宝になるもんね!それなら嘘にならない!」


「お前、本当やる気なさそうな雰囲気の割に、一番アツいこと言うよな」


「うるさい」


「いや、褒めてるんだって!」


「うるさい」


城戸と篠原さんが顔を見合わせて、笑った。


「よし、じゃあ、決まりだ!」


その夜から、俺たちは準備を始めた。


まず、俺が映像の構成を考えた。


------------------------------------------------------


【宝探し動画構成案】


1. 暗転から始まる

2. 謎の声「青陵高校の皆さん、聞いてください」

3. 学校の風景写真(校舎、廊下、教室)

4. 謎の声「この学校のどこかに、宝を隠しました」

5. 謎の声「在校生の皆さん、見つけたらすべてあなたのもの」

6. 謎の声「ただし、今はただの紙切れです」

7. 謎の声「でも、十年後には必ず価値が出ます」

8. 謎の声「探せ!私たちのすべてをそこに置いてきた!」

9. 暗転


------------------------------------------------------


城戸は放送室の機材に仕込みをした。卒業式当日のBGMは顧問の田村先生が担当で、BGMの順番などは放送部が事前に組み立てることになっていた。

田村先生がいない時間を狙って、BGMの最後に、自動で映像が流れるようパソコンの設定を変えた。

照明は、城戸の後輩部員にご飯を奢る代わりに、操作をお願いしたらしい。


篠原さんはナレーションを録音した。声色を変えて、誰か分からないようにした。さすが演劇部、全然違う人に聞こえる。


そして、俺は「宝」を準備した。


文化祭の大喜利で、出演者十名が書いた回答用紙。全部で八十枚ある。


それを、一つの箱にまとめた。


箱の中に、メッセージを入れた。


『これを見つけたあなたへ。

 今はただの紙切れかもしれません。

 でも、十年後、この紙は必ず価値が出ます。

 待っていてください。      2024年3月』


箱の底には、小さなメモも入れた。


『構成:キラーUMA 制作:城戸玲 出演:篠原キョウカ』


十年後、この箱を見つけた誰かが、俺たちの名前を知る。


その時、俺たちがどうなっているかは分からない。


でも、「価値が出る」と宣言した以上、有名にならなければならない。


これは、在校生への宝探しであり、俺たちへの誓いだ。




卒業式当日。


式は滞りなく進んだ。


卒業証書を受け取り、校歌を歌い、閉式の辞。


「以上をもちまして、令和五年度卒業証書授与式を終了いたします」


教頭先生がそう言った瞬間


体育館が暗転した。


「え?」「なに?」「停電?」


ざわめきが広がる。


そして、スクリーンに映像が流れ始めた。


『青陵高校の皆さん、聞いてください』


篠原さんの声だ。でも、全然違う声に聞こえる。


体育館が静まり返った。


スクリーンには、学校の風景が映し出されている。見慣れた校舎、廊下、教室。


『この学校のどこかに、宝を隠しました』


ざわめきが起きた。


『在校生の皆さん、見つけたらすべてあなたのもの』


「え、マジ?」「宝って何?」


『ただし、今はただの紙切れです』


「紙切れ?」「なんだよそれ」


『でも、十年後には必ず価値が出ます』


体育館がざわつく。


『探せ!私たちのすべてをそこに置いてきた!』


映像が暗転する。


そして、最後に一言だけ、テロップが表示された。


『俺たちは、必ず成し遂げる』


映像が終わった。


体育館が、ざわめきに包まれた。


「誰だよ、これ」「卒業生?」「宝って、紙切れって何?」「十年後って……」


先生たちも困惑している。教頭先生が「誰か、これは何ですか」と周囲に聞いている。


俺は、体育館の隅で、小さくガッツポーズをした。


城戸と目が合った。ニヤリと笑っている。


篠原さんも、友達に囲まれながら、こっちを見て微笑んでいた。


成功だ。


誰にもバレていない。


そして、この学校に、俺たちの「伝説」と「誓い」が残った。



卒業式が終わった後、俺たちは校門の前で写真を撮った。


城戸、篠原さん、俺。三人で。


「やばかったな、先生たちの顔」


「教頭先生、めっちゃ困ってたね」


「でも、怒られなかったな」


「誰がやったか分からないからな。完全犯罪だ」


三人で笑った。


「宝、ちゃんと隠せた?」


「ああ。放送室の機材の裏の奥の方」


「見つかるかな」


「さあな。でも、見つかっても見つからなくても、十年後に確認しに来る」


「十年後校舎の中入れるの?」


「そこはわからん!」


「おい」


「まぁ、なんとかなるでしょ!俺たちその頃には有名になってるんだし!」


「宣言しちゃったからね」


篠原さんが笑った。


「十年後、何も出来てなかったら恥ずかしいね」


「いや、必ず成し遂げるさ」


俺は言った。


「成し遂げないと、嘘になる」


「だな」


城戸が頷いた。


「十年後、またここに集まろう」


「で、これからどうする?」


「どうするって?」


「大学。三人ともバラバラだろ」


そうだ。


城戸は東京の私立大学。篠原さんも東京の別の私立大学。俺は地元の国公立大学。


三人とも、別々の道を行く。


「でも、LINEがあるじゃん」


篠原さんが言った。


「離れてても、繋がってられるよ」


「だな。グループ通話もあるし」


「絶対、届けようね」


篠原さんが俺たちを見た。


「テレビでも、ネットでも、なんでもいい。三人で作った『面白い』が、たくさんの人に届いてる状態で、また十年後ここに来たい」


「……ああ」


俺も頷いた。


「届けよう。必ず」


三人で拳をぶつけた。


桜が舞っている。


高校生活が終わる。


でも、俺たちの物語は、まだ続いていく。

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