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探索をしよう

瓦礫を踏み越え、道なりに進んでいく。

目的は特になく、ただ周囲の様子を確認できたらと淡い期待を持ってゆっくり歩いていく。

時々鳥の鳴き声がする以外は無音で、足音だけがコンクリートや鉄骨に跳ね返っている。


2xxx年の頃は人類の存続が優先だと騒がれて環境への配慮など二の次だった。街からは鳥や虫が姿を消し、山が切り開かれた。もっと前は環境問題を学校でも取り扱っていたらしいが、結局は自分が一番可愛いのだ。そんなものはなくなってしまった。

そんな人類が迎えた末路がそこかしこに転がっていた。


「あんまり遠くに行くなよ。」

「分かってるって!あとこれだけ!」


隣で彩音は壊れた機械の部品を見つけては立ち止まり、拾っている。

すでに、両手いっぱいに重そうなガラクタを抱えていた。

一体何に使おうというだろうか?

俺の知ったことではないか。好きにさせておけばいい。

もっとも、自分も落ちているガラクタを見ると興味を持ってしまう。

いったいどこの部品なのだろうか。いったいなんのために使われたのだろうか。

そんなことを考えてしまうあたり血には逆らえないのだろう。


「あれ?前、道が塞がってない?」


彩音に言われた先を見ると、ビルが倒れて道を完全に通行止めにしていた。

これは引き返した方が良さそうだ。


「彩音。戻るか?」

「えー、あっち行ったらなんかいいものがあるかもしれないよ。」

「塞がってるのに?」

「そう!だからこそじゃん!立ち入り禁止の先に進む楽しさを分からないなんて、あーあー、うちの兄貴は人生の半分を損しちゃってるよ。」


いや勝手に嘆かれても。

第一、立ち入り禁止の先なんて安全の保証ができないだけではない。ここに入ったら自己責任ですよというメッセージでもあるのだ。

例えば学校の屋上が立ち入り禁止となっていたとしよう。その先に底なし沼と腹を空かせた猛獣が待っていてもこちらは文句を言う資格などないのだ。


「彩音。あのな…。」

「じゃあ、お先ー。」


説教でもしてやろうとする、その前に彩音がガラクタをその場に放り出し、駆け出してしまった。

流石に見て見ぬ振りはできない。後を追いかける。

距離が縮まらず、もどかしさを感じていると、あろうことか倒れたビルを登り始めてしまった。


「危険だ!戻ってこい!」


呼びかけるも聞こえないふりをしているのか振り返りもしない。

それにしても器用なものだ。コンクリートの断面から飛び出した鉄骨や窓の縁を使ってすいすいと登っていく。

てっぺんまで10メートルほどなところの半分まで登り詰めていた。

感心している場合ではない、今すぐにでも引きずり下ろしたいところだが自分は彩音と違って運動神経はそこまでだ。同じことをできる自信はない。

はらはらとしながら見守っていると、頂上についたらしくやっと下を見てくれた。


「ほら、あっちいけるよ!」

「行ける行けないじゃないだろ!危ないから戻れ!」

「もー、心配性なんだから。全然危なくないって。ほら!健斗もこっちに来てみてよ!」


こっちに来い?

冗談じゃない!落ちたりしたら怪我どころじゃ済まないかもしれないんだぞ。


「あーあ、あっちすごい景色が広がってるのになー。健斗は知らないままなんだー。」


何?


「私は見れたのになー。私がこの景色を独り占めしちゃおうかなー。」


確かに、視点を変えれば抜け駆けということになる。

それは兄としてのプライドが許さない。

ここまで言われて引き下がるのは末代までの恥だろう。

もっとも、俺たちが末裔なわけだが。

靴紐をしっかり結び直すと、剥き出しの鉄骨に手をかけた。

そこからは恐ろしいほど楽だった。そこらじゅうに手を、足を引っ掛けられる場所がある。下さえ見なければ恐怖を感じることはなかった。

最後は彩音に引っ張り上げてもらい、無事に登頂完了した。


「ねっ?簡単だったでしょ。」

「ああ…。」


少し悔しいがその通りだったので素直に頷く。

それと、向こうの景色がすごいんだっけ。

視線を先に向ける。


「…はあ?なんだこれ?」


その先には何もなかった。

あたり一面土色で染まり、人間の文明はどこにもない。

どうやら地滑りが起きた後のようだった。それもつい最近の。

思わずクスッと笑ってしまう。

頑張って登ったのに、結局何もないとは。普通、立ち入り禁止の先は何かあるものだろう。


「ねー。すごい景色でしょ?」


彩音もカラカラと笑っている。

笑いのツボも同じとは。きょうだいとは恐ろしいものだ。

しばらく土色の景色と人間が作り上げた景色のコントラストを楽しむことにした。


「ここまで来て成果なしかー。これから大丈夫か俺たち。」

「大丈夫だって、なんとかなる。なんとかなる。」

「なんとかなるか?気楽すぎだろ。」

「まあまあ、ほら、たんぽぽも待ってるしそろそろ帰ろうよ。」

「そうだな。降りる時も油断しないように気をつけろよ。」

「はーい。」


無事、特に得るものはなかった俺たちは帰路についた。

せめて、生活の助けになるものでも見つかってくれればよかったのに。

まあ、あの景色はたまになら見に来てもいいかもしれない。

なぜか二人して満足げな顔をして探索を終えた。



さて、明日は何をしよう。

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