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独白8 パパとバカ

宇宙にいる何者かへこのメッセージを送る。


我が名は魔王ヨクラトール。神によって生み出され、惑星テアトロンの支配者である。



そろそろ、ガストールがミーナと遭遇する頃であろう。

そこで、ボトルメールの魔法で試したいことがあってな。


我は世界各地にカメラコウモリと呼ばれる魔物を放っておる。

こやつは、遠くにいても我が魔力で繋がれば、そのカメラコウモリが見聞きしているものを共有できる便利な魔物でな。

ガストールとミーナが遭遇し、どうなるか…

それを確認しようと思っておる。


そして、カメラコウモリの音声が、ボトルメールの魔法で共有できるのか、テストもしてみたくてな。

こうして、試してみようという訳だ。


どれ、早速試してみるとするか…



—-

ふむ、ここは…水の王国ファクルタスの森の中か。

人間の王国の1つ、ファクルタスはその名の通り、水が豊富な王国である。

複数の湖には精霊が住んでおり、人間たちは精霊と取引しながら、魔力を得たり、資源を得ておるのだ。

そして、ビレアを旅立った勇者が2番目に訪れる地でもある。


「あんたは…魔王軍最高幹部の…!」


ふむ、この声はミーナか。

そして、あやつが魔王軍最高幹部と呼んでおるのは当然…


「久しぶりだな。ミラリスの妹よ」


ミーナはガストールを確認するなり、剣を構えた。


「ガストールだっけ?あんた、登場が早すぎるんじゃないの?魔王軍最高幹部でしょ?」


「登場が早い、というのは、どういうことだ?」


ミーナは少し黙って俯いておるようだ。

登場が早い…これは配属革命による魔王軍の配置を理解しているということであろうな。


「少なくともデスメロディの知識を共有しているようだな」


「…声が反響して変な感じね」


「…どういう意味だ?」


「何でもないわ。で、あんたは、それを確かめに来たの?」


「いや、確かめたいのはそこではない。俺はデスメロディに用がある」


「…デスメロディに?」


「そうだ。ガビリオの件を尋ねなくてはならなくてな」


「ガビリオって、四天王の1人だっけ?」


「そもそもミーナよ、お前はガビリオに勝ててはいないはず。本来はファクルタスの地に足を踏み入れるべきではない」


「あー、まあ、そう言われるとそうかもしれないけど…」


「ふむ。折角だ。勇者ミーナの実力も拝見しておこう」


ガストールは斧を取り出し、ミーナに向き合った。


「殺人決死斧…だっけ?それを持ち出すってことは、本気ってことか…」


ミーナは大きく息を吸うと、剣を構えたままガストールを見る。

ガストールは自ら動くことなく、ミーナを待ち受ける様子であるな。

ミーナはガストールの様子を伺っておるが…

ふむ、あの目、ガストールが先制攻撃する気がないのには気付いていそうであるな。

しかし、ガストールに敵わぬことも理解しているはず。

さて、どうするかな。


「いくよ!魔王軍最高幹部!ガストール!」


ミーナが飛び出した。

剣術でガストールを攻めるが、あの程度の腕ではガストールにとってはお遊びのようなものであろうな。

右腕が再生しておらず、盾を持たぬとも軽くあしらえるであろう。

ガストールは剣を斧で受けたり、躱したり、ミーナに攻撃することなく、その実力を伺っておるようだ。


「鉄破断!」


ガストールがミーナの剣を斧で叩き折った。

あやつの得意技の1つ、鉄破断。

金属破壊に特化した斬撃を放つあの技の前には、並みの武器では歯が立たぬ。


剣が折れ、一度は距離を空けたミーナは、折れた剣を持ったままガストールに突っ込んで行く。

あまりにも無謀な突撃を、ガストールは避けることもなく受け止めた。

折れた剣先は、ガストールに刺さることもなく、傷つけることもできておらぬようだ。


「やはり、実力不足だな。勇者ミーナよ、おま」


ガギィン

凄まじい金属のぶつかり合う音。

ガストールがミーナとの距離をとった。

ミーナの左手に斧が握られておる。

いや、ミーナであった者の姿そのものも変化しておる。


「ミーナがかわいそうじゃん。いじめるのやめなよ」


「成程、切り替わるのか…久しいな、デスメロディよ」


デスメロディは斧を背中に納めた。


「パパ、ミーナはあんまりわたしを表に出したくないみたいだから、気軽に会いに来ないでよ」


「そうはいかん。魔王様がお前に聞きたいことがあるというのだ」


「魔王が?オーズのことなら、悪かったって謝っといてよ」


「そういえば…オーズも殺したのであったな…」


「え、その件じゃなかったの…あはは…」


「このバカ者が!お前にはお仕置きが必要なようだな!」


「バカって言う方がバカなんでしょ!なによ!ばかばかばーか」


「ええい、大人しくお仕置きを受けろ!」


ガストールのやつが、デスメロディに斧を振り下ろし、デスメロディは楽しそうにそれを受けながら斧を振り下ろし返す。

あやつらはいつもこうだ。

やれやれ、喧嘩する程仲が良いと言うのであろうか。


しかし…デスメロディは力をつけておるな。

執行者であったときより、動きもよい。

いや、よいなどというレベルではないな。


「ぐ、どういうことだ、デスメロディ、この力…」


「ふーんだ、ミーナが教えてくれた必殺戦法を使ってるんだから、パパにだって負けないよーだ」


「ミーナの必殺戦法だと…そんなもの、先程は…」


「まあ、ミーナはまだ扱いきれてないからね。でも、わたしは、こうやって、扱えるってわけ!」


デスメロディはガストールを凌ぐスピードで斧を振り、ガストールの殺人決死斧を弾き飛ばした。


「べーだ。盾を持ってないパパなんかに負けないよーだ」


「馬鹿な…ここまでの力を…」


「バカって言うな。もうっ!」


「デスメロディ、お前はミーナとどういう…」


「パパは、それが聞きたくて来たんじゃないでしょ?そろそろ、魔王が聞きたいと思ってること、聞かせてよ」


「そうであったな…」


言うなり、ガストールは地面に胡坐で座り込んだ。


「デスメロディよ、コラプティオ神殿のゴーマ執行を覚えておるか?」


「コラプティオ…ゴーマ…?あの女たらし殺したときのこと?あれはほら、殺されるべきだったんだよ」


「お前は、執行時もそんな言い訳をしておったな…バカ者が!」


「ちょっ、ちょっと、お説教しに来たんじゃないでしょ?」


「そうだったな…」


「はぁ、ほんとにもう。すーぐ怒るんだから…で、なんでそんなこと聞くの?」


「ゴーマの息子にガビリオが殺られた。ミッスイもだ」


「え?ミッスイも殺られたの?あの防御バカが?」


「言い方に気をつけろ。守護方陣のミッスイ。生き残ることにかけては、魔王軍でも指折りの者だった」


「で、ゴーマの息子ってのが、なんか言ったわけ?」


「ゴーマを殺した理由と、ゴーマの妻と息子を生かした理由、その2つを知りたがっているそうだ」


「ゴーマは女たらしだから殺したんだよ。あいつは死ぬべきだったんだし、問題ないじゃない?」


「それが問題だったことは散々話したと思うが…そうだとしても、だ。妻と息子を生かした理由は何なのだ?」


「あー、それはほら、みー…」


「……?」


「…なんでもない」


ここまで普通に会話しておったデスメロディが、下手にはぐらかしおった。

どういうことだ。

あやつの性格からして、何かを隠すということは考えられぬが…


「おい、デスメロディ、何でもない訳がないだろ!」


「あー、あー、めんどくさーい。パス!」


言うなり、デスメロディから黒い煙が出て、その姿が人間になった。

勇者ミーナに。


「あ、デスメロディってば、もう…」


ミーナはふらふらと立ち上がると、ガストールから離れるように二歩、三歩と後ずさる。


「どうやら、デスメロディには逃げられたようだな。便利な逃げ方を身に着けたものだ」


「パパ…か。なんか、楽しそうだったね。デスメロディ」


「勇者ミーナよ。今日はこれで失礼する。だが気をつけよ。ゴーマの息子、カリスはお前を狙っているぞ」


「カリス…」


呟くミーナにガストールは背を向け、その場を去っていった。

結局、肝心のことは何も聞けず仕舞いであったな。


—-


む、カメラコウモリの魔力が尽きたか。

カメラコウモリは便利ではあるが、魔力に限りがあるのが難点でな。

無限に見てはいられぬのだ。



ふむ、今日はこんなものかな。


誰とも知れぬ者よ、また機会があれば聞くがよい。

それではな、何者かよ。


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