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独白7 異端の勇者

宇宙にいる何者かへこのメッセージを送る。


我が名は魔王ヨクラトール。神によって生み出され、惑星テアトロンの支配者である。



カリスから受けた傷も、癒しの魔法でようやく塞がったところである。

回復までに2日程度かかってしまったが、止むを得ぬな。

魔法で直接攻撃するのではなく、魔法の作用を使って別の手段で攻撃してくるとは。

こちらの偵察を搔い潜る手腕といい、油断がならぬやつだ。


特に今回は何かをするつもりはない。

何となく、話すことで状況や情報を整理しようと思ったにすぎぬ。

気まぐれなメッセージという訳だ。



勇者ミーナ、そしてカリス。

ミラリスの仇として、我を狙っているミーナ。

家族の仇として、デスメロディを…ミーナを狙っているカリス。

狙う相手は異なれど、仇討ちが目的なのは共通。

あの二人も、異端の勇者、という訳か。



異端の勇者とは、ミラリスが勇者として旅立つときに付けた名である。

勇者というのは、魔王である我を倒すための存在。

勇者にも、勇者を目指した理由というのが、それぞれの勇者に存在する。

多くは、魔王を倒すことで富や名声を得たいとか、世界を平和にしたいとか、そういう理由で勇者となっておった。

最初の勇者バイターも、そこは共通であった。故に、富を得た途端に旅を辞めた訳であるが。

しかし、ミラリスはそのような理由で勇者となったのではない。

あやつが勇者になった理由。それは、妹のミーナを牢から救い出すためであった。


ミラリスとミーナは、貧しい家の育ちであったらしい。

あやつらの父、ドストルは勇者崩れ…勇者を目指しながらも、他の者に敗北し勇者になれなかった存在であったらしい。

勇者になれなかったドストルは荒れ、酒や女に溺れたのだそうだ。勇者崩れにはよくあることである。

ドストルは、ミラリスやミーナに強く当たっていたそうだ。

男のミラリスには暴力を繰り返し、女のミーナには性的な暴行を繰り返しておった。

ある日、ミーナは薪割り中にドストルに襲われた。

いつもなら無抵抗で受け入れるところだったのだそうだが、斧を持ったまま襲われたミーナは、何やら心の中の糸が切れ、斧でドストルを切り刻んだというのだ。


ドストルは腐っても勇者を目指していた男である。

いくら油断しておっても、簡単に殺されるやつではない。

それだけ、ミーナの動きが素早かったということだ。


人間の世界では、人間を殺すことは許されることではない。

ミーナは事情が考慮され極刑…要するに死罪は免れたが、牢の中で過ごすことになった。


この事件により、ミラリスは勇者を目指すことになる。

自分が魔王を倒すことにより、ミーナを釈放してもらうことが目的だったという。

富や名声、世界平和を目的としていない、妹の釈放を目指した勇者。

ミラリスは、その目的が故に異端の勇者と最初は呼ばれておったのだ。


父に暴行を受けている妹を救えなかった。

勇者ミラリスはミーナへの罪の意識を常に持っておった。

ミラリスはミスラ流剣術の達人だったのだが、それも本来は父を殺すために身に着けたのだという。自らが父を殺してミーナを救うためだ。

だが、結果としてミーナがその手を血に染め、復讐を果たしてしまった。

間に合わなかった。

罪を背負い、投獄されたミーナを、今度こそ救いたい。

ミラリスは、ミーナを本当に特別な存在と考えておったのだ。


…だからこそ、ミラリスが成長してきたとき、ミーナを利用することを思いついた。

ビレア王と相談し、執行者に牢から誘拐させ、魔王城にてミーナに魔族化の魔法を施したのだ。


そうして執行者となったデスメロディは、ミーナの心の傷も継承しておった。

通常、執行者というのは勇者の邪魔をする者を排除することが使命である。

時の勇者を妨害する人間を、人間の法外にある者が処する。

それが通常任務であったのだが…

デスメロディは女を支配するように扱う人間を、容赦なく殺した。

執行命令をしていないにも関わらず、とにかく執行を繰り返した。

その度に、指導係のガストールがデスメロディを叱っていたものである。

「パパには関係ない!」などと、デスメロディは反抗しておったが…


パパ…と呼んでおったな。ガストールのことを。

デスメロディをガストールに預けたとき、ガストールや様々なことをデスメロディに教育しておった。

執行者としての心得。戦う術。サバイバル術。そして、生き方そのものも。

そんなガストールを、デスメロディはパパと呼んで慕っておった。

実父があのような者で、どこか父に憧れがあったのかもしれぬな。



そして、カリスだったか。

あやつの父親、コラプティオ神殿の神官ゴーマは、女を囲い込み、かなりのことをしていたと報告を受けてはおる。ただ、妻と息子には優しかったらしく、かなり贅沢な生活をさせていたとも聞いておるのだ。

そんな中、デスメロディはゴーマを独断で殺害した。

我が知っておるのはそこまでだ。

その後、カリスはデスメロディに対して復讐心を持ったようだが、父ではなく、母の無念を晴らすため、と言っておったな。

カリスの言い方だと、デスメロディがゴーマを執行したとき、カリスとあやつの母もその場に居たような話しぶりであったな。

デスメロディが見逃したと言っておったが…


「どうやら、ミーナに話を聞く必要がありそうであるな」


「その役目、私にお任せいただきたい」


我の右側から声がした。

幹部室から出てきたのは、ガストールであった。


「いつからそこにおったのだ?」


「魔王様の傷が癒えたと聞き、カリスとの顛末をお聞きしたく参ったのですが、何やら思考中のご様子だったので待たせていただいておりました」


「ふむ。それで、我の呟きから何かを察したと」


「はい。デストーンの話も、レイスパークの話も聞いておりましたので」


レイスパークというのは、我がカリスに会いに行ったときに乗ったドラゴンの名である。

デストーンからも話を聞いておったのであれば、おおよそカリスとの間であったことは把握しておるのであろう。


「で、お主がミーナに会いに行くと?」


「正確には、デスメロディに、ですが。随分と派手に暴れたと聞きましたので、その件も話を聞かねばなりません」


シャインの報告も耳にしておるか。

ガストールが今の状況をどう思っているのであろうな。

そこは、流石の我でも読むことができぬ。

ミラリスと戦い、右腕を失い、デスメロディがミーナに戻り…

そのような経験を経て、ガストールが今、ミーナに…デスメロディに何を想うのか。

であれば、やることは一つ。


「だが、ガストールよ。お主はデミデスタが敗北した後にデスメロディと戦うつもりだったのでは?」


「はい。ですが、それはそれ、これはこれ、です。コラプティオの件も、まさかこのようなことになるとは思っておらず、私の責任も感じておりますので」


「よかろう。どうするつもりかは知らぬが、行くがよい。好きにせよ。ただし、1つだけミッションを与える」


「はっ」


「コラプティオ神殿のゴーマ執行の件、そのときに何があったのか詳しく聞き出してくるのだ」


「御意」


言うなり、ガストールは跪いた。

そして、すぐに立ち上がると、玉座の間を出て行った。


ふむ、予定外にガストールが現れおったが、結果的にはよかったかもしれぬ。

あやつがミーナと、デスメロディと会うことで、何かしらの化学反応が起こるやもしれぬ。

ミーナ、カリス、あの二人の動向が、我の望む死に向けて、大きな種になることは間違いない。

ミラリスのときには果たせなかった死。その成就のため、この状況、存分に利用させてもらうとしよう。



ふむ、今日はこんなものかな。


誰とも知れぬ者よ、また機会があれば聞くがよい。

それではな、何者かよ。


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