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独白6 カリス・ミデラ・コラプティオ

宇宙にいる何者かへこのメッセージを送る。


我が名は魔王ヨクラトール。神によって生み出され、惑星テアトロンの支配者である。



「デスメロディをコラプティオ神殿に連れてこい…」


四天王の二位、ガビリオが殺されてから2日。

我は書き置きに指定されていた神殿の目の前におる。


仕掛け人が何者なのか、目的は何なのか、何もわからぬ。

そこで、ドラゴンに乗り、メモリデス城からここまであえて時間をかけて参った。

本来は瞬間転移魔法ですぐに来ることも出来たのであるが、能力を隠すためにあえてドラゴンで来た訳だ。


ドラゴンで派手に近くに着陸したのだ。

おそらく、相手には我が来たことは認識されておるであろう。

デスメロディではなく、我が来たことをどう思っておるのか。

そもそも、我のことを知っておるのか。


「…魔王様」


門の近くで待機させていたデストーンが小声で話しかけてきた。

デストーンは現役の執行者。デスメロディの後任として、コラプティオ地方を担当しておる。


「…何者か不明ですが、人間の男がいるのは間違いありません」


「成程。で、お主がここにいることは?」


「正確には不明ですが、察知されていると思われます」


「根拠は?」


「昨日は裏門、本日は正門側にて相手の出入りを伺っておりましたが、どうやら反対から出入りしていたようなのです」


「お主はそれをどのように把握したのだ?」


「反対側にはカメラコウモリを待機させ、映像を確認しておりました」


「にも関わらず、正体不明と?」


「はい。カメラコウモリが捉えることなく、殺害されております」


ふむ。

カメラコウモリは見た目は普通のコウモリと同じ。

"それがどういうものか”知らなければ、わざわざ殺害をするのは不自然。

しかも、見つからないように殺したとなれば…


「認識はされつつ、放置されておるのか」


「はい。おそらくは、デスメロディが来るか確認するためかと思います」


狙いはデスメロディのみ。

ラボール城を滅ぼしたのは、あくまでデスメロディを誘い出すための策という訳か。

カメラコウモリを遠距離なのか、背後からなのか、いずれにせよ悟られずに撃破できるとなれば侮れぬ。


我がここで殺されては成就とはならぬであろう。

その場合、おそらくクロノインフィニティの呪いが発動し、またゼロからやり直しであろうな。

それもよいのかもしれぬが、本能欲求枯渇感を味わい続けるのは耐えられぬ。

油断は、できぬな。


「デストーンよ、ご苦労であった。お主はここで待て」


「はっ。ご武運を」


我はデストーンに背を向け、コラプティオ神殿の扉を開けた。

両開きの門は大きな音を立ててゆっくりと開いていく。

神殿の入り口は礼拝堂となっており、複数の長椅子が置いてある。

そして、中央奥には人間が崇拝している神の像。

我にとって生みの親であり、我を呪った悪魔でもある存在。


その像の前に、一人の男が立っておった。

こやつが、ガビリオを殺害したのか。

思ったより若そうではあるが…


「おい、魔物!俺はデスメロディをよこせと紙に書いたはずだが?」


「威勢がよいな。デスメロディはすでに魔王軍にはおらぬ。そんなことは、お主も知っておるのではないのか?」


「何だ、偉そうなヤツだな。だから、こんな回りくどい方法で指定したんじゃねぇか!」


ふむ。

やはりこやつ、ある程度の事情は知っておるようだな。

しかし、我のことは知らぬか。

無理もないな。最近はメモリデス城を出ることも少なくなった。


「確かにな。我が名は魔王ヨクラトール。惑星テアトロンの支配者である」


「ま、魔王…だと?お前が?」


言うなり、目の前の男は笑い出した。


「いやいや、魔王がわざわざ来るなんてことがあるか?」


「ここまでしてデスメロディを求めていることに興味があってな。こうして参った訳だ」


「理由が知りたいってことか?」


「まあ、そう思ってもらって構わぬ」


男は黙って我を見つめてくる。

語るべきか、語らぬべきか、自問自答という感じか。

だが、こやつは語るであろう。

そうでなければ、そもそも我の目の前に姿をさらした意味がないのであるからな。


「…いいだろう。俺の名前はカリス・ミデラ・コラプティオ。コラプティオ王国の血を引く者だ」


「ミデラ・コラプティオ…神官家系だったか。つまり…」


「そう。俺はデスメロディに執行され殺された、ゴーマ・ミデラ・コラプティオの息子だ」


ゴーマ・ミデラ・コラプティオ…

ゴーマはコラプティオ王朝で代々神官を勤めておった一族である。

ただ、あやつは女への執着が凄まじく、気に入った女をこのコラプティオ神殿に監禁し、好き放題の毎日を送っておった。


そんなゴーマを、デスメロディは執行者として始末した。

ただし、それは正式な執行ではない。

デスメロディは、自分の意思で勝手に女を拉致監禁するタイプの人間を執行してきた。

あやつの、正確にはミーナの出自の影響なのであるが…


「ゴーマの恨みを晴らしたいと?」


「いや、父はどうでもいい。殺されても仕方ない面があっただろうことは、今の俺ならわかる。だが、父が殺された後、暴行されたり、迫害されたりし続けていた母の無念は晴らしたい」


「デスメロディを殺すことでか?」


「殺すとは決めてない。父を殺した理由と、母と俺を生かした理由。その二つを聞いてから決める」


成程。

何があったかはわからぬが、復讐をしたい訳ではなく、知りたいというのか。

これは面白いことになりそうであるな。


「そうであるか。だが残念であったな。デスメロディは今は人間に戻っておる」


「人間に…戻っている…?」


「あやつは元々は人間。勇者の妹だったのだ。それを魔族として改造し、執行者として飼っておったにすぎぬ。だが、あやつは人間に戻ってしまった。故に、今は魔王軍にはおらぬのだ」


カリスは我をじっと見つめておる。

本当か嘘か、見極めようという感じか。

ミーナは今もデスメロディと身体を共にしておるからな。もし、こやつとミーナが出会ったとき、どのような化学反応が起きるのか?

それによって、ミーナかカリス、どちらかの勇者が我を倒すために、よりドラマチックさを演出してくれるのか、そこに興味がある。


「仮にそれが本当だとして、どこに住んでいて、何してるってんだ?」


「知りたいか?知ってどうする?」


「同じさ。会って、聞いてから、考える」


「ならば答えよう。その者の名はミーナ…勇者ミーナ。ビレアの四天王を倒し、我の居城を目指しておるらしい」


「勇者ミーナ…」


さて、こやつの、カリスの目的は分かった。

それに、ミーナとカリスが対峙し、成長することの種は蒔けた。今はこれで十分であろう。


「さて、我の目的は達した。これで失礼するとしよう」


「待て!」


カリスが我に持っている杖の先を向けて引き留めた。


「どこまで本当かわかんねぇが、お前が魔王ならここで殺しておいた方が良さそうだ」


「我を?そのような杖で我を倒すと?」


可能性はある。

ラボール城を滅ぼした実力を持っておるのだ。

それだけの実力者が持っている杖、何か意味があるのは間違いない。


「死ね!小爆発!」


ぐっ!

左胸に激痛?

血も出ており、思わず右手で傷口を覆った。


小爆発の魔法は、せいぜい衝撃で飛ばす力しかないはず。

それが左胸を突き刺すとはどういうことなのか。

油断していなかったが、危なかったかもしれぬな。


カリスを見ると、杖の先から煙が出ておる。

小爆発の魔法を杖の中に使ったのか?


「ほう。小爆発の魔法ではなく、それを使って何かしたようだな」


「急所を外したか…」


言うなり、カリスは腰のポーチから鉄の球を取り出し、それを杖の中に入れた。


「もう一度だ!」


先程は杖の先端から煙が出ていた。

つまり、あの球が杖の先から飛んでくると見た。


「小爆発!」


杖の先端から飛び出した鉄の球が、我の横を通過した。

ギリギリであった。

狙いは頭であったのであろう。我の急所が人間と同じと考えておるのか。

中々やるようであるが、まだ若く経験が浅いのであるな。


「カリスと言ったか。筋は悪くないようであるな」


「避けた?くそっ、もう無理か…!」


「それに頭も回るようだ。1発目で仕留めきれなかったのは残念であったな」


我は指笛でドラゴンを呼び寄せた。

近くで待機していたドラゴンが正門から宮殿に突入し、我の目の前で着地した。


「何故、俺を殺そうとしない?」


実力差も理解はしておるのか。

こやつは本当に筋がよいな。

育てば我を討つ可能性のある素材だ。

それだけで、殺さない理由と言えるのであるが…


「興味があるのでな。お主がデスメロディと…ミーナと出会った先に何があるのか」


「興味だと?お前にとって、それが何だって言うんだ?」


ふむ、これ以上会話すると、目的を勘繰られる可能性がある。

そろそろ潮時であるな。


「気になるなら、ミーナと会った後、我の城に来るがよい」


それだけ伝え、ドラゴンを飛び立たせた。

そしてすぐに瞬間転移魔法でメモリデス城へワープし、癒しの魔法で左胸傷の治癒を開始した。

癒しの魔法で傷を塞ぐのは時間がかかる。

あと数時間程度かかるのであろう。


それにしてもカリスか…

ミーナとの、デスメロディとの今後に興味はあるが、油断できぬ相手でもあったな。

今後、定期的に様子を確認した方がよいかもしれぬな。



ふむ、今日はこんなものかな。


誰とも知れぬ者よ、また機会があれば聞くがよい。

それではな、何者かよ。


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