独白16 厄介は重なってやってくる
「まおーう!いるんでしょー!」
宇宙にいる何者かへこのメッセージを送る。
我が名
「まーーーーーおーーーーーう!」
我が名は魔王ヨクラトール。か
「まーーーーーーおーーーーーー」
騒ぎがしすぎて語り出しもできぬな…
少々、厄介なヤツが来ておってな。
こうして
「まーーーーーーーーーーーーー」
「騒がしいぞ、リリリス。とりあえず、入って来い」
「はーい」
こうして、ボトルメールの魔法を繋いでいた訳だ。
問題山積で悩ましい状態だというのに、次から次へと…
まあ、問題というのは、どういう訳か、まとまって発生するものだ。
「リリリス、はいりました!まおうさまにおかれては、ごきげんうるわしゅー」
「何をしに来た?と聞くまでも…」
「そーですよ!なんでメロのこと、わたしにだまってたんですか!おねえちゃんのわたしに!」
「姉ではなかろうに…」
「いいえ、メロはわたしのこころのいもうと!たましいのいもうとですから!」
リリリスはベルム地方の執行者である。
ベルムは四天王最高幹部が治める地。コラプティオを超えた勇者が到達する地。
長らく、ガストールが治めていた地方であるな。
それ故に、ガストールと関わりが深く、同時にデスメロディとも関わり合いが深いのだ。
「ねえ、まおう。メロにあいにいっていい?」
「聞かずに行かなかったことをまずは褒めよう。だが、許可はできん。今ではない」
「じゃあいつ?いまじゃないりゆうは?わたしさみしいよ?」
「状況が複雑でな。見極めが必要なタイミングで、お主が動くとややこしくなる」
「えー、やだやだやだ。わたし、メロにあいたーい!」
「そうは言うが、行って会えるとも限らなくてな」
「…ミーナとかいう女のせい?そいつ殺せばいいの?」
「急に殺気立つでない。ミーナとデスメロディ。二人は変化を繰り返しておるが、その原理はわからぬのだ」
「そーんなの、あってからかんがえればよくなーい?」
「そうもいかぬ。下手すれば、そのせいでミーナの出現が強固になる可能性もある」
「その時は、その女殺せばいいじゃん?」
「同じ肉体だからそうもいかぬ。故に様子を探っておるのだ」
「えー、めんどーい。やっぱりメロあいたーい!」
話が平行線であるな。
いや、リリリスにしては聞いている方か。
「リリリスよ、もう一つ問題がある」
「もんだい〜?」
そう、それこそが問題。
こやつが今来た、厄介さの本質。
「デスメロディ…いや、ミーナと一緒に、ステラがおる」
「ステラ…あいつが…パパをボコボコにした、あの魔法使いが!」
ここまで聞こえるくらいの歯ぎしりの音。
ガストールは、ミラリスとの戦いで片腕を失った。
確かに、最後の一撃はミラリスの手によるもの。
だが、ミラリスとデスメロディが会話を交わし、戦っている間、ガストールを抑えていたのはステラとマリナであった。
「リリリスよ。お主がステラを前に冷静でいられる可能性はゼロ。皆無だ。その状態で行かせる訳にはいかぬ」
「ぐっ…だ、だいじょ〜ぶ、ですよ?おそらく。かなりたぶん」
こやつはベルムを出てメモリデス城を目指すミラリス一行に付き纏い、ステラを狙い続けた前科があるのだ。
それはもう執拗に。
ミラリス一行は不殺のパーティー故に、リリリスは殺されることなく、倒されても倒されても付き纏った。
こやつはしつこいのだ。
ふむ。
このまま放置しても勝手に会いに行きそうであるな…
どうしたものか…
「リリリスよ。そんなに心配なら一つ仕事をやらぬか?」
「しごと〜?」
「今、ミーナ達はカメラコウモリを防いでおり、情報が入らぬ。その対策を講じておるのだ」
「ふんふん、それで?」
「新型カメラコウモリの設置と、ミーナの監視を手伝うのはどうだ?それならば、接触せずにデスメロディの様子を見ることもできよう」
すまぬ。
デミデスタ。
許せ。
「ほんと?やるやるやるやる!やりまーす!」
「本件はデミデスタが担当だ。他の者には極秘の任務故、誰にも話すな。もし話したら…」
「はなしたら…?」
「デスメロディとの謁見を永劫に禁ずる」
「いいません。はなしません。ひみつ。まもる。わたし、くちかたい」
「ふう…とりあえず、デミデスタに詳細を聞いてこい。我から手伝いを提案されたと、きちんと伝えるのだぞ」
「はーい」
リリリスは鼻歌交じりにスキップしながら出て行った。
やれやれ。
制御不能な変数がまた一つ増えてしまったな。
いや、これも本来は予見できたことか。
リリリスは本当にデスメロディを可愛がっておった。
最初は大人しかったデスメロディも、リリリスと話すようになってから、次第に今のような性格になった。
口調も最初はミーナと変わらなかったのだが、次第にリリリスに影響されて今のようになったのだ。
魂の姉妹…というのも、案外大袈裟なものではないかもしれぬ。
しかし、リリリス。
デスメロディのことを誰から聞いたのだ?
いや、そう。そこが肝心だ。
肝心なことを聞きそびれた。
やはりデストーンなのか?
何かを観測するための仕掛けか?
……いや、冷静にならねば。
それは思い込みでしかない。
根拠不足。
今判明しているのは、リリリスがデスメロディのことを誰かから聞いたということ。
ミーナのことも、だ。
案外、ガストールから聞いたのかもしれぬし、下手な思い込みは禁物だ。
しかし、リリリスはもしかしたら使えるかもしれぬ。
あやつとデスメロディが接触すれば、何か化学反応が起きるやもしれぬ。
ステラがいるのが問題ではあるが…
この辺りは、ガストールに相談するのがよいかもしれぬな。
ガストールとステラ。
あの二人もまた、因縁のある間柄なのだから。
ふむ、今日はこんなものかな。
誰とも知れぬ者よ、また機会があれば聞くがよい。
それではな、何者かよ。




