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独白15 ミラリスムーブメント

宇宙にいる何者かへこのメッセージを送る。


我が名は魔王ヨクラトール。神によって生み出され、惑星テアトロンの支配者である。



…特に今日は何かあった訳ではない。

ミーナの力、カリスの動向、デストーンの思惑…

魔王などと呼ばれ、敬われ、恐れられようとも、我の理解できることなど、この程度。

全知全能でもなければ、未来を予見できる訳でもない。

いつも予想外のことが起き、その度に対処をしてきた。

ミラリスの時もそうであったな。


ミラリスか…

あやつは、本当に規格外の勇者であった。


ミラリスは我と戦い、我に敗れた勇者。

最強の勇者ではあったのだが、我が死ぬには最大の障害があったのだ。

それは…ミラリスは、魔物を殺さない勇者だったということ。

あやつは、我の下に来るまで、あらゆる魔物を1人、1匹たりとも殺さなかった。


「だって、その方がカッコイイじゃん?」


ミラリスはいつもそう語って、仲間を呆れさせたものだ。


幼馴染みの大魔法使いステラ。

ミラリスに無理やり仲間にさせられた大盗賊マリナ。

そして勇者ミラリスの3人パーティーで、我の軍勢を次々と倒して行った。

ビレアで四天王オーズを、ファクルタスで四天王フォレスを。

殺すのではなく、生かしたまま降参させた。


戦いで相手を無力化する場合、殺すのと、生かしたままでは難易度がまるで違う。

ミラリスは、最初に旅立ったそのときから、相手を殺さずに無力化してきた。

ステラはその心意気に賛同しており、ステラも殺さずに戦っておった。

ファクルタスで仲間になったマリナはたまに魔物を殺そうとして、ミラリスにたしなめられていたものだ。


ミラリスのパーティーがファクルタス辺りを進んでいる頃から、ビレアやファクルタスの周辺ではミラリスを応援する魔物が増え始めていた。

ミラリスムーブメント…

あやつがメモリデス城に到達するまでの間、ミラリスの通過した場所では、多くの魔物がミラリスに賛同し、我に対抗する機運を見せるようになった。

そう、最終的には、あのガストールも…だ。


ミラリスは、我も殺さずに改心させるつもりであった。

殺さぬが故に最強の勇者。

だが、それ故に我が死ぬためには障害となる勇者。

それがミラリスであった。


我は考えた。

ミラリスには、我を殺したくなる動機付けをしなくてはならない。

我が改心などせぬ、殺すしかない存在と思わせなくてはならぬ。

そして思いついたのが…ミーナの誘拐であった。


情報を集めて驚いた。

ミラリスの妹がいるというので、どのような善人なのかと思っておった。

だが、ミーナはそのとき父を殺し、投獄されていたのだ。

ミラリスが知ったらどう思うのか。

これは利用価値がある。


執行者を使ってミーナを我の下に連れて来させた。

ミーナを洗脳してミラリスと戦わせるつもりだったのだ。

だが、ミーナと対面して驚いた。

ミーナは足が悪く、動けなかったのだ。

情報収集不足。

我は前から情報不足で作戦を誤ることが多いな。


そこで、魔族化の魔法を試すことにしたのだ。

人間の身体のままでは、ミーナを動かしてミラリスと戦わせられぬ。

肉体を魔族化すれば、動けるようになり、戦わせられるのではないか、と。


魔族化の魔法は成功した。

だが、ここでも誤算があった。

魔族化の後に操る算段だったのだが、人格まで別になってしまったのだ。

ミーナとしての記憶もないという。

これでは、対面させてもミラリスの怒りを買うことができぬ。


そこで、とりあえずミーナにデスメロディという名を与え、ガストールに預けることにした。

ガストールに育成だけしておいてもらい、その間、ミラリスにどうアプローチするか考えようと思ったのだ。

要は、問題の先送りであるな。


そうこうしている間に、ミラリスはガストールの居城、ドラグニアンに到達した。

ガストールを心配したデスメロディは、ガストールと二人でミラリス達に戦いを挑んだ。

ガストールが腕を斬られ、やられそうになったとき、デスメロディがミラリスに立ち塞がった。

そして、デスメロディは、ミーナに戻った。


ミラリスはデスメロディがミーナであることに驚いておった。

そこまでに、ミラリスは何度もデスメロディを傷つけていたからな。

ミーナは我に魔族化されていたことを明かした。

このとき、ミラリスは我にかなりの怒りを持った。


だが、それでも我を殺そうとするには届かなかった。

ミラリスは「魔王にも事情がある」「知性があるならきっとわかってくれるよ」と言っておった。

殺されないという障害が解消されなかったのだ。


そこで、我は覚悟を決めた。

ミラリスが我を殺すとしたら…

仲間が、死んだとき。

おそらく、それしかない。

そして、その相手は…マリナ。

あやつを殺せば、ミラリスも我を殺そうとするであろう。


ミラリスがメモリデス城に到達する頃には、ミラリスムーブメントにより協力する魔物が多くいた。

我は、その中にスパイを紛れ込ませた。

そして、ミラリスが我の下に到着したとき、マリナを殺害した。

余計なことを言わせないように、瞬時に殺したのだ。


ミラリスもステラも、何が起きたかわからぬという様子だった。

我はミラリスを怒らせるために、あえてマリナの死体を踏みつけた。

そして、ミラリスに向かって告げたのだ。

次はミーナをお前の前に死体で届けよう、と。


賭けだった。

それでも、ミラリスは我を殺そうとしない可能性があった。

だが、ミラリスは言った。


「俺は誰も殺すつもりはない。だが、お前だけは、止めるために殺さなくてはいけないのかもしれない」


そう言って、我に立ち向かって来た。

凄まじい攻撃だった。

それまでに、カメラコウモリで見たミラリスとは比較にならぬ強さ。

相手を生かす必要のない、全力の攻撃。

我が本気で対抗しても、ギリギリの強さ。


そして、最後、あやつは我に敗れた。

あやつは病を患っていた。

その病が戦いの最中、最後の一撃をお互いが放ったときにミラリスの動きを鈍らせた。

心臓を貫かれ、ミラリスは死んだ。


「ふふ、怒りに任せて戦うもんじゃ、なかったな」


ミラリスの最後の言葉であった。

我を殺させるために怒らせたが故に、病の症状が悪化したのだろうか。

ミラリスを怒らせずに戦えば、我は敗れ、死んだ未来もあったのであろうか。

…我の作戦は間違っていたのであろうか。


ミラリスは強かった。

我は死ぬと思っておった。

だが、結果は、我が生き、ミラリスが死んだ。


ステラはもう、我を襲っては来なかった。

マリナとミラリスの死が、戦意を喪失させてしまったのだ。



我の、最大の作戦は、失敗した



ミラリスの死後、もうこのようなチャンスは訪れないと思っておった。

だが、ミーナが現れた。

あやつは、ミラリスとは違う。

我をきっと殺してくれることであろう。

そう願うしかない。


我のやっていることを、許さぬ者は多くいるであろう。

それでよい。

我は本能に逆らえぬ。

死ぬために、生きねばならぬ身なのだ。


ミーナよ、期待しておるぞ。



ふむ、今日はこんなものかな。


誰とも知れぬ者よ、また機会があれば聞くがよい。

それではな、何者かよ。

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