表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/21

独白14 不安と嫉妬の果て

宇宙にいる何者かへこのメッセージを送る。


我が名は魔王ヨクラトール。神によって生み出され、惑星テアトロンの支配者である。



デミデスタが帰還したそうだ。

思ったより早いと言うべきか、当然と言うべきか。

流石はラボール城に長年君臨した四天王。

ガストールに次ぐ実力者であり、ガストール以上の知将。氷のデミデスタ。


「失礼します」

「失礼します」


ん?

ガストール?

ステラに書簡を届けに行っていたガストールがなぜデミデスタと一緒におるのだ?


「デミデスタ、戻ったか。しかし、ガストールが一緒とは。伝令にはなかったな」


「ガストール様とはラボール城で会いました」


「デミよ、俺のことは様付けせんでよいと言ってるだろうに」


「立場は上長でなくても、私にとってあなたは『ガストール様』なんですよ」


ガストールとデミデスタ。

この二人は我が人間を支配するために戦いを挑んだ人魔戦争の頃からの部下だ。

人魔戦争後も、勇者達に立ち向かい多くの勇者を亡き者にしてきた。

我にとっては頼もしくもあり、死ぬための障害でもある存在。

もっとも、この二人を打倒できぬ者にドラマチックな我の最期など、期待できようはずもない。

素晴らしき選別者だと言う方が正しいかもしれぬな。


「ガストール、デミデスタ。二人からはそれぞれ報告を聞きたいのではあるが…ガストールよ」


「はい。私がデミデスタと行動を共にしていた理由ですね」


「そうだ。先にそれを伝えよ」


「はい。詳しいやり取りは別でお伝えしますが、ステラとの会話の中で少し違和感を感じたのです」


「違和感?」


「はい。デスメロディ…あいつがミラリスに倒されたことは人間に周知されている。今なら、デスメロディの存在を隠したままにできると。ステラがそう言っていたのです」


「もしそうなら、カリスがデスメロディを探そうとするのは不自然ではないか?」


「はい。カリスの真の目的が本当にデスメロディなのか、何故このベストタイミングでデスメロディを狙い出したのか。その手がかりを探すためにラボール城へ向かいました。何か少しでもヒントが…ミッスイのメッセージがないものかと」


「そこでデミデスタに遭遇したと」


「はい。最初はデミが『まさか、ガストール様も…!』と臨戦態勢になったので焦りましたが、どうにか事情を理解してもらえました」


「ガストール『も』ということは…デミデスタよ、見つけたのだな」


デミデスタが手に持っている石壁の破片。

おそらくこれこそが…


「はい。幻影方陣によって隠されたカメラコウモリを見つけて参りました。そしてお察しの通り、内通者がいることがわかりました」


「ふむ。詳細は後にするとして、内通者が誰なのか?から聞かせよ」


「……デストーンです」


デストーン…

コラプティオの執行者。

あやつが内通者というのか。

いや、確かに…


「カリスが執行者事務所に潜入した際も『偶然』留守のタイミングであった。そして、カリスは保管されていた斬人盾を『偶然』見つけて持ち出した。何故かカメラコウモリのことも把握し、捕捉もされぬ」


「はい。デストーンが何かの目的のためにカリスを利用しようとしているのだと推測できます」


「カリスを…あやつは抜け目がなさそうであったからな。デストーンは逆に利用されるのがオチに思うが」


「私もそう思います。デストーンの目的は…どうやらデスメロディを始末することのようです」


我はガストールに目を向けたが、ガストールは頷いて見せた。

成程、同意見という訳か。


デストーン……

そうか。

あやつは、デスメロディが来る前はコラプティオの執行者であった。

しかし、我が勇者ミラリスを打倒するため…いや、ミラリスのドラマを盛り上げるために、デスメロディを生み出し、デストーンの地位を奪った。

デスメロディが消え、元の地位に戻したのだが……


「デスメロディ復活の報を聞いて、再び地位を奪われるのを恐れたか」


「おそらく。そのためデスメロディを人間に殺させることを計画したのでしょう。人間と接触しやすい、執行者ならではの策略です」


意思や心というのは本当に難しいものだ。

我の配下の魔物達には、大きく2種類が存在する。

繁殖力を持つが心を持たぬ野生モンスターと、心や知性を持たせたが繁殖力は持たぬ幹部モンスター。


ガストールやデミデスタ、デストーンのような、名前を持つ者は幹部モンスターである。

繁殖力があると、何故か繁殖ばかりを優先してしまうために、それを排して役割に特化させているのだ。


成長や自立を促すために心も持たせておるのだが…

心というものは意図した通りには動作せぬもの。

それ故に、一定の者が不安や恐怖に負ける。

結果として、逃げ出したり、裏切ったり、暴走したり、様々な問題を引き起こすのだ。


デストーンは、デスメロディという存在への不安に負けた。


「魔王様。本件は私、ガストールの責任でもあります。私がデスメロディを優遇しているとデストーンに思わせてしまった迂闊さをお許しください」


「いや、それよりもデスメロディという存在を生んだ我の責が大きい。そのせいで、ここ最近は随分と慌ただしいのだからな」


そう。

デスメロディを生んだことが、あまりにも多くのことを引き起こしておる。

あやつは、ミラリスが我を殺すまでの演出の1つに過ぎなかったのだ。

ミラリスが死んだことで、デスメロディがここまで異分子となるとは想像しなかった。

ミラリスが死ぬことなど、予期していなかったのだからな。

我も、甘いな。


「今、それぞれが責を感じ反省するのは良いことではある。だが、やるべき本質はそこではない」


「魔王様、私デミデスタに案がございます」


「ふむ。申せ」


「ミッスイによって、カメラコウモリのカモフラージュが有効であることが立証されました。そこで、カモフラージュカメラコウモリを増やし、デストーンも、カリスも、ミーナも監視を強めましょう」


「監視の先に、どうする?」


「デストーンは泳がせます。裏切りの証拠が掴めれば始末もできますし、デスメロディにけしかけることもできるでしょう」


「カリスとミーナはどうする?」


「カリスは今は気にする必要はないでしょう。デスメロディと接触後、私達に仇となるか判断すればよいかと。問題は…」


「ミーナか。聞いておるか知らぬが、あやつはカメラコウモリを殺すことなく、妨害する術を持っているようだ」


「なるほど。では、カモフラージュの結果、それでも妨害されるか確認するのがよいでしょう。対象を認識しないと妨害できないのか、認識が不要なのかによって、今後が変わるでしょう」


「ふむ。しかし問題は、デストーンに悟られることなく、どのようにカモフラージュを推進するかであるな…」


カメラコウモリは数が多い。

デストーンは執行者だけに、情報は集まりやすい。

人間側にも精通しておるから、人間を使ってもバレる可能性が高い。


「それは、おそらく大丈夫かと」


デミデスタがそう言って、手に持っている石壁のような物を差し出した。

よく見ると、石壁は1つではなく、2つある。

そのうち1つを地面に強くぶつけると、1本の杖に姿を変えた。


「方陣極杖…ミッスイの使っていたものか」


「魔力が残っているのです。残っているどころか、湧き出すと言った方が正しいくらいです」


「我が方陣は永遠…その言葉に偽りはなかったな」


「はい。これを使って、私がいくつかカモフラージュカメラコウモリを作って配備します」


「よかろう。デミデスタよ、早速取り掛かれ」


「かしこまりました。ラボール城にあったカメラコウモリは置いて行きますので、後程詳細をご確認ください」


デミデスタは一礼して出て行った。

我とガストールはそれを見送る。


さて、後はガストールの方か。

しかし、今日は少し疲れた。


「ガストールよ。ステラの件は、また後日報告を聞こう」


「承知しました。1つだけ先にお耳に入れておきたいことが」


「何だ?」


「ミーナはステラに匹敵する魔法の才があるらしいのです。魔王様には魔法が効かないので脅威ではなさそうなのですが…デスメロディの強さが何かしら魔法の影響ではありそうでした」


「ステラに匹敵する…か」


「そんなヤツがいるとは思えないのですが、ウソとも思えません。一応、お伝えしておきます」


「わかった。他の細かい報告は、またどこかで聞かせてもらうぞ」


「はい。では、私も失礼いたします」


ガストールも一礼すると、部屋を後にした。

うん?

盾に新しそうな傷があるな。

ステラと争ったのか、デミデスタと争ったのか…

まあ、そこも後日報告を聞くとしよう。



ふむ、今日はこんなものかな。


誰とも知れぬ者よ、また機会があれば聞くがよい。

それではな、何者かよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ