独白13 憧れの「おにいちゃん」
宇宙にいる何者かへこのメッセージを送る。
我が名は魔王ヨクラトール。神によって生み出され、惑星テアトロンの支配者である。
カメラコウモリに監視させていた大魔法使いステラがミーナに迫っておる。
ミーナを追うと探知をすり抜ける可能性があったので、ステラを尾行させていたのだ。
以前、ガストールに持たせた書簡には、主として3つのことを記載した。
1.ミーナが勇者となったが、デスメロディも復活し、入れ替わることがある
2.魔族化を解除する魔法の使い方
3.魔族化解除によるミーナへの影響が不明
ミーナを救いたければ共に旅をし、魔族化解除の魔法をアレンジするがよい…という形で締めたのだが…
少なくとも、ステラはミーナに会うことを選んだようだ。
おそらくミーナの存在を魔法で探知しながら、ファクルタスの森を進んでおる。
ガストールがまだ戻らぬので、ステラとどのようなやり取りをしていたのか不明ではあるのだが。
そういえば、ガストールは戻りが遅いな。
あやつは何をしておるのか。
「久しぶりだね、ミーナ」
ふむ、カメラコウモリからステラの声が聞こえてきたな。
映像も見てみるとしよう。
—
大魔法使いステラと勇者ミーナ。
二人が向かい合って立っておるな。
「ステラ兄ちゃん!本当に来たんだ…」
「まるで来るのが分かってたみたいな言い方だね」
「なんとなく、そんな雰囲気だったから」
「相変わらず探知能力が高いね。それにその身体の感じ、上手いこと…」
「あー、あーあーあーあー!」
「ど、どうしたのミーナ?急に?」
「いや、魔王の仕掛けたスパイがどこにいるかわかんないから、ちょっと警戒してるの」
言いながら、周囲を見回し始めた。
やはり、カメラコウモリについては知っておるようだな。
「そうなのか。うーん、ここで話さない方がいいかい?」
「…このあたりだと、どこに居ても一緒だし、話すのは大丈夫かな。でも…私の魔法の話は禁止ね」
「なるほどね。勇者として、魔王に手の内はバレないようにってことだね」
「そーゆーこと」
「それにしても、君は変わらないね、ミーナ。いや、戻ったと言うべきか」
「そうだね…少なくとも、アイツを殺す前よりはマシになったかな」
「ミーナのお父さん…ミラリスや僕が旅に出てる間、辛い思いをさせちゃったみたいだね」
「結果的にはそうなっちゃったけど…わたしはミラ兄とステラ兄ちゃんが旅に出てよかったと思ってる。魔王は倒せなかったけど、世界中で勇者ミラリスに感謝する人がいるらしいからね」
「そうだね。僕はミラリスに憧れて冒険に連れて行ってもらったけど、本当に楽しかったし、多くの人を救えたよ。辛いこともあったけどね」
「わたしは、ステラ兄ちゃんに憧れて魔法を習い始めたんだけどな。ステラ兄ちゃんはミラ兄に剣術を習ったんだよね?」
「ははは、全然身につかなかったけどね。でも、おかげで魔法の腕を磨くことができたよ。…結果的に、魔法は魔王には通じず、肝心な所で役に立たなかったけどね」
ステラは本当に強力な魔法の使い手であった。
もし、我に魔法が通じていたら、ステラによって殺されていたのかもしれぬな。
「ステラ兄のせいでミラ兄が死んだわけじゃないんだから、そこは責任背負わないでよね」
「ありがとう。でも、僕はやっぱり辛いんだよ。憧れのミラリスが、絶対に魔王を倒せると思ってたのに…よりによって病で魔王に刃が届かなくて…」
「ステラ兄、そんな話をしに来たの?」
「…そうだったね。ミーナ、僕のところに、ガストールが来たんだ」
「ガストールさんが?」
「ああ。しかも魔王からの書簡を持ってきた」
「魔王が?なんで?」
「デスメロディを消し去るための魔法を僕に伝えるためだ」
それまで心を開いていたミーナが、ステラに対して警戒するような動きを見せた。
ステラはそうなるのをわかっていたのか、微笑みながら首を横に振った。
「もちろん、そんなことはしないよ。でも、デスメロディが存在することで、ミーナに悪い影響がないのか見極めたいし、何かよい対処方法があれば試したいと思ってる」
「悪い影響かぁ。まあ、確かに、デスメロディの存在がわたしにどんな影響があるのかは、わかってないんだよね。お互い上手くはやってるけどね」
「背中の斧を見れば、そうなんだろうと思えるよ」
「それで、見極めるっていうのはどうやって?」
「それは…暫く一緒に旅をして、探るしかないね」
「ステラ兄ちゃんと旅を?」
「イヤかい?」
「そんなことないよ。むしろ、色々魔法を教えてほしいよ。ステラ兄ちゃんは、私にとってはヒーローみたいな存在なんだから」
「ミーナは昔から魔法が好きだったもんなぁ。以前よりも魔力が洗練されてるように感じ…っと、魔法の話はしない方がいいんだっけ」
「ごめんね。私から話を振ったみたいになっちゃったね」
「いや、いいんだ。僕からしても、憧れたミラリスの妹であるミーナの役に立ちたいと思ってるんだよね」
「うーん、デスメロディはわたしに悪い影響ないと思うけど…ともかく、旅をするなら1つだけ条件があるよ」
「条件?」
「そ。もう少し魔力をコントロールできるようにしたいから、色々教えてね!」
「そんなことなら、いくらでもやるよ」
「じゃ、決まりね。うーん、早速相談したいことがあるんだけど…ちょっと魔王のスパイが気になるわね」
「スパイなんてのがいるんだ」
「そうなのよ。っと、その説明する前に…えいや!」
—
何だ?カメラコウモリからの情報が途絶えた?
やはりミーナはカメラコウモリを何かしらの手段で妨害できるようであるな。
ミーナとステラ。
あの二人は我を殺す、素晴らしき存在になるのか、ならぬのか…
それを確かめるためにも、カメラコウモリの強化は必須。
少し焦りもするが…今はデミデスタの帰りを待つしかないな。
ふむ、今日はこんなものかな。
誰とも知れぬ者よ、また機会があれば聞くがよい。
それではな、何者かよ。




