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独白12 情報戦

宇宙にいる何者かへこのメッセージを送る。


我が名は魔王ヨクラトール。神によって生み出され、惑星テアトロンの支配者である。



間もなくデミデスタが来ることになっておる。

何やら、報告と提案があるというのだが…


勇者ミーナと大魔法使いステラもそろそろ合流する頃だ。

あちらの様子も確認したいところではあるのだが、デミデスタが何用かも気になる。


「魔王様。デミデスタ、参りました」


「うむ。何用であるか」


「まずご報告です。コラプティオの執行者事務所ですが、カリスの潜入による変化についてデストーンから伝達がありました」


「斬人盾が奪われたことはクラウンから聞いておる」


「クラウンが?…なるほど、デスメロディへの宝物候補を確認したのですね」


「そのようだ。して、他に何か異常はあったのか」


「執行記録を確認した形跡はありました。しかし、それ以外はまるで不明です」


「理由を申せ」


「配置していたカメラコウモリに記録が何も残っていません。当然ですが、カリスにはカメラコウモリが無意味のようです」


カメラコウモリ。

コウモリを改造して生み出した、偵察用モンスター。

様々な場所の映像や音声を記録する記録生物である。

その後、魔法を用いて記録にアクセスして取り出すことができる。

我が以前やったように、遠隔で、リアルタイムに近い形で記録を取り出すことも可能だ。


「尻尾を掴めぬか」


「はい、今のところは」


「ここまでカメラコウモリが役に立たぬとなると、またいつ行方を掴めなくなるかわからぬな」


今は、カリスが不用意にカメラコウモリを殺害するおかげで、殺害ルートから移動先を割り出すことが出来ておる。

だが、気付かれてしまえば、足取りが再び掴めなくなる。

何かと厄介な相手であるな。


「魔王様、そこでご提案があるのですが…新しい探索モンスターを生み出してはいかがでしょう」


「新しくか」


「はい。そもそも、カメラコウモリについては、カリスだけでなく、デスメロディにも知られております。勇者ミーナが何かしらの方法で探知を回避しているとも聞きますので、このままでは重要人物2名を追うことができなくなります」


その点はデミデスタの意見が正しい。

だが、新しいモンスターというのは生み出すのが案外難しいのだ。

正確には「狙ったモンスターを生み出す」ことが難しい。

ランダム要素が強すぎるのだ。

故に、ガストールやデミデスタのような、力も知恵も備えたモンスターは貴重な存在。

それだけでなく、カメラコウモリのように特別な力を持っており、かつ繁殖が容易な存在も貴重なのだ。


「デミデスタよ。カメラコウモリのような特殊な生態を持つモンスターは生み出すのがかなり難しい。時間も必要。それ故、それは最終手段としたい」


「やはり難しいですか。そこで、カモフラージュの方法が何かないかと思っております」


「カモフラージュ?」


「はい。我々はカメラコウモリが相手に存在が知られない、万能な探査兵器だと過信しておりました。ですから、カメラコウモリはそのままの姿で配置しております」


「そこでカモフラージュという訳か」


「はい。見た目がそれと悟られないようにカモフラージュしてみようかと」


カモフラージュには賛成だ。確かに、カメラコウモリが悟られぬという過信はあった。

だが、この作戦には違和感がある。

何だ、この違和感は。


「…魔王様、浅はかでしたでしょうか?」


「いや、すまぬ。沈黙で不安にさせてしまったな。カモフラージュはよいのだ。よいのだが、お主の発言に違和感があってな」


「発言に違和感…見た目が悟られないように、でしょうか。見た目だけでは不十分?あるいは見た目が問題ではない?」


こういうときは、持っている情報を整理するのがよい。

無理に急いで結論を出すのは、不安に耐えられぬ愚か者のすることだ。


「デミデスタよ。カメラコウモリの問題は大きく3つある。カリスを捕捉できぬこと、デスメロディに知られていること、ミーナを撮影できないことがあること」


「…デスメロディの問題は見た目のカモフラージュで対応できそうです。ですが…いや、そうか。まず、ミーナの件は、見た目どうこうではなく、撮影できない原因が不明ですね」


「うむ。何やら捕捉できるときとできぬ時があると聞いておる。その中でもクラウンからの報告にあった『ミーナは魔法の使い手』というのが関連していそうだが、詳細はわからぬ」


「であれば、むしろこの件も見た目をカモフラージュして変化があるか観察するべきでしょう。付近のカメラコウモリに気づいて対処しているのか、探知することなく対策されるのか調査が必要です」


「確かに。では、ミーナの件も見た目のカモフラージュでよいと」


「はい。ただ、問題はカリスです。魔王様に言われて気づいたのですが、そもそもカリスはなぜカメラコウモリの存在を知っているのでしょう?」


何故カメラコウモリを知っているのか?

いや、なるほど。ミーナはデスメロディからカメラコウモリの存在を聞き、対策をしているだろうとわかる。

だが、人間でおるカリスがカメラコウモリのことを知っているのは不可解だ。

いや、それだけではない。


「カリスは執行者事務所に潜入しておったな。あやつはそこが執行者事務所だと、どうやって知ったのであろうな」


「カメラコウモリ、執行者事務所の存在、どちらも人間が知り得ない情報です。それを手に入れた方法…すぐに思いつくのは2つです」


「1つは?」


「ラボール城でしょう。あそこのモンスターは全滅しておりました。そこで情報を得た可能性がありそうです」


「もう1つは?」


「…………」


「何だ?話してみよ」


「結論から言いますと、内通者の可能性です」


「内通者?」


「はい。やはり不可思議なのです。ラボール城が1人の人間に全滅させられる…魔王様を傷つけるような人間だったとしても、です。それに……」


何だ、デミデスタが沈黙しやすいな。

ここは黙って次の言葉を待つか。


「……ミッスイが、あのミッスイがみすみす殺されることがあるでしょうか!探知すら困難!鉄壁の守護方陣を操るあのミッスイが!」


そうか。

ずっと気にしておったのだな。

デミデスタはガストールが四天王トップだった時の第三位。つまり、ラボール城の城主だったのだ。

ずっと自らの戦いを見守り、報告してきた、戦友と言える存在。


「デミデスタよ。副官は報告のため、どんな手段を用いても生き残らなければならない。ミッスイはその掟を守れなかった」


「…………はい」


「と、思うか?」


「……と、言いますと?」


「カメラコウモリの件と同じことよ。我らはミッスイからの報告を見落としておるのではないか?と言っておる」


「しかし、城は部下が詳しく調べましたが…」


「その程度で見つかるなら、カリスに処分されるであろう。ふむ、ミッスイはお主と考え方が似ておった。であれば、同じようにカモフラージュするのではないか?」


「カメラコウモリをですか?」


「カメラコウモリにカリスの件は記録されていなかった。だが、それはミッスイなら城が襲撃された時に気が付くはず。となれば?」


「幻影方陣…カメラコウモリを擬態して記録させた?」


「それが今もラボール城にあるのではないか」


「しかし、ミッスイは既に死んでいます。方陣はとっくに…」


「デミデスタよ、続きを言うがよい…我は守護方陣のミッスイ、我が方陣は?」


「我が方陣は永遠、死せども守るべきものを守り通す……死せども……?」


「ミッスイが使命を全うしたのであれば、ラボール城のどこかに幻影方陣を施したカメラコウモリがいるはず。幻影方陣は魔法で探知できぬ。そして、違和感を感じられるとしたら、長年あそこに居たデミデスタよ、お主だけだ」


「……はい」


「いったんカメラコウモリのカモフラージュは後にして、ミッスイの残した報告を見つけよ。それによってカメラコウモリの今後の対策を決めるとしよう」


「はっ!」


「あと、ミッスイのこと、カメラコウモリカモフラージュのことは誰にも言うな。内通者がいない確証もまた、ないのだからな」


「心得ました。デミデスタ、必ずミッスイの報告を持ち帰ります!」


「うむ、では行け」


デミデスタは駆け足で部屋を後にした。


ミッスイ。我もカリスに気を取られすぎて、お主のメッセージを見落としていたのかもしれぬ。

気づいてやれなくてすまぬ。

我も魔王様などとおだてられて油断しておったようだ。

もし報告があれば…いや、何かは必ずあるはず。

その報告、有効に活用させてもらうぞ。


それにしても…内通者か。

確かに、カリスの件は違和感しかない。

そもそも、デスメロディに復讐を考えているだけなら、ラボール城を滅ぼす必要がないはず。

手紙はあやつが書いたようだが…


いや、これ以上は考えても仕方ないな。

とにかく、デミデスタの報告を待つとしよう。



ふむ、今日はこんなものかな。


誰とも知れぬ者よ、また機会があれば聞くがよい。

それではな、何者かよ。

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