表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/21

独白11 宝物配置会議

宇宙にいる何者かへこのメッセージを送る。


我が名は魔王ヨクラトール。神によって生み出され、惑星テアトロンの支配者である。



今日は勇者ミーナが水の王国ファクルタスに到達したので、ファクルタス宝物配置会議を行うことになっておる。


宝物配置会議とは、勇者一行が我ら魔王軍と対等に渡り合うために設置することになった重要会議。

以前、最初の勇者バイターが旅をせずに始末された話はしたな。

その教訓から、二番目の勇者ライニィは極少ない資金と武具を与えて送り出した。

しかし、またもや問題が生じた。ライニィがビレア付近のモンスターと戦い続けて先に進まなかったのだ。資金不足の不安、実力不足の不安が原因であった。


そこで、二つの対策が取られた。

一つはモンスターに人間界の金を適正値持たせること。

これにより、勇者は路銀の心配が不要になり、進軍に集中できるようになった。

だが、ライニィは用心深く、ダンジョンや城を攻略しようとしなかった。

そこで二つ目として、ダンジョンや城に強力な武装やアイテムを設置して勇者を誘い込むことになった。

そしてようやく、ライニィは不安解消のためダンジョンに入ってくるようになったのだ。

これはこれで次の問題を引き起こしたのだが…

その辺りは実際の会議を見た方が理解が早かろう。


そろそろ、宝物配置官のクラウンが到着する頃合いだ。


「失礼します」


定刻通り。

相変わらず真面目なヤツであるな。


「クラウン。早速だが、勇者ミーナ用のファクルタス宝物配置案を聞かせよ」


「は、その前に前提を一つ」


「前提?」


「はい。勇者ミーナとデスメロディ様の話を混ぜると複雑になります。まずはそれぞれ個別の話をしますので、その上で最終結論を検討しただければ」


「よかろう。では話せ」


「はい。まずはシンプルなデスメロディ様から」


デスメロディの方がシンプル?

あやつはファクルタスでは実力がありすぎるため、複雑なのだと思い込んでおった。


「デスメロディ様は現時点ではファクルタスでは無双の強さです。ライニィの時のように、宝物の力が強くなりすぎる可能性が高いです」


「ただ、デスメロディ様は学問においては致命的。そこで、魔王軍学書を提供しようかと」


…クラウンは時々、冗談を言っておるのか、真剣に言っておるのか理解できぬことがある。

いや、99%真剣ではあるのだが。


「では、魔王軍上級数学書でも宝箱に入れておけ。ガストールからの指導メモがあればなおよい」


デスメロディのヤツが「うげぇ」と言うのが想像つくな。

この程度の嫌がらせはしても問題はあるまい。


「デスメロディ様については、もう一つ報告があります」


「報告?」


「はい。報告によれば、デスメロディ様は盾を使っていなかったと」


「斬人盾か。そもそも、あのようなものが人間界にあるはずがなかろう」


斬人盾。ガストールが右手に構える、武器としての盾。確かに、デスメロディもガストールと同様、本来は左手に斧を、右手には盾を持っておったな。


「デスメロディ様が使っていた斬人盾はコラプティオの執行者事務所に保管しておりました。今回の会議に際して確認したのですが、何者かに持ち出されておりました」


「執行者事務所!」


しまった。

持ち出した者には当然心当たりがある。

カリスだ。

あやつ、執行者記録を確認するだけかと思っておったが、斬人盾を持ち出すとは!

これは、あそこに保管されておることを知らなかった我のミスであるな。


「クラウン。おそらく持ち出したのはカリスという人間だ。斬人盾の譲渡についてはコントロールできぬ」


「そうですか。いずれにせよ、デスメロディ様については、今の時点で装備強化は考えません」


「それでよい。で、勇者ミーナについては?」


「こちらの方が厄介です。勇者ミーナの実力や行動は不明点や不可解な点が多すぎます」


「ふむ、お主が不可解などと言うのは珍しいな」


「人間の勇者は、数名のパーティーを組むのが普通です。しかし、勇者ミーナは一人旅です」


「一人旅の勇者は今までも居たであろう」


「はい。ですが、私の知る限り、一人旅の勇者は必ず魔法を使うのです。特に癒しの魔法を。ですが、何故か勇者ミーナは戦闘中に魔法をまったく使いません」


言われてみれば。

まるで意識しておらなんだ。

ミーナは常に剣術で戦っている報告しかなく、ガストールと対峙していた時も魔法は一切使っていない。


「ですが、勇者ミーナはビレアでは屈指の魔法の使い手だったそうなのです。この辺りの事実関係がはっきりせず、宝物案を決められませんでした」


魔法の使い手…

我と初めて会ったときは魔法を使わなかったが…

ビレアに戻ってから身につけたのか。

いや、それよりも。


「癒しの魔法は使えるのか?」


「カメラコウモリのデータも見たのですが、いまいちハッキリせず…」


「使える、使えないではなく、ハッキリしないとは?」


「まず、カメラコウモリでミーナを捕捉できる時と、できない時があるのです。そして、捕捉できる範囲では使っている姿は捕捉できてませんが、明らかに癒しの魔法を使ったと思われる状況証拠はあるという具合です」


「ふむ」


「そしてもう一つ。勇者ミーナはミスラ流剣術を使っているですが…殺人斧術を使っているという報告もあるのです」


「それは、デスメロディではないのか」


「人間の姿のまま使っていたというのです。ただ、証言も曖昧で勘違いの可能性も否定はできません」


デスメロディはミーナから何かしら伝授されたようなことを言っておったな。

だとすれば、ミーナがデスメロディから教わっていることも考えられる。

だとして、


「ふむ。勇者ミーナ、実力が読めぬな。厄介だというのが理解できる」


「はい。そして、魔王様から大魔法使いステラを側に置くとお聞きしたので、勇者ミーナにも現段階では宝物は不要と考えました。ただし、モチベーションがゼロでは困りますので、勇者ミーナの好物…特にピチピーチの実あたりを配置しておきます」


「ピチピーチの実か…下手な武具より高く付くな」


「本当に。ですが、だからこそ、宝物として意味を成すのかと。人間は、戦うマシーンではないところに人間たる所以があるものですから」


それはそうであるな。

だからこそドラマが生まれ、だからこそ我はこうして死のうとしておるのだから。


「クラウンよ、提案は理解した。ファクルタスではそのようにせよ」


「承知いたしました」


クラウンは一礼すると部屋を出ていった。



しかし…思いもよらぬ情報があったな。

勇者ミーナと魔法の関係。これは大魔法使いステラが合流すれば、何かわかるかもしれぬ。

そして、カリス斬人盾を奪ったこと。今はまだ泳がせるが、あやつが盾を持っていることは認識しておかねばなるまい。


後は気になるのが、勇者ミーナをカメラコウモリが捕捉しきれていないこと。

デスメロディからカメラコウモリのことは共有されておるのだろうが、捕捉されたり、されなかったり、という不定さが不気味なものよ。

やはりミーナは何かあるな。魔法の使い手という話もあるようだし、何やら妙な魔法を使うのかもしれぬな。

引き続き、監視をしていくとしよう。



ふむ、今日はこんなものかな。


誰とも知れぬ者よ、また機会があれば聞くがよい。

それではな、何者かよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ