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独白10 厄介者探査

宇宙にいる何者かへこのメッセージを送る。


我が名は魔王ヨクラトール。神によって生み出され、惑星テアトロンの支配者である。



先程、ガストールがステラへの手紙を持って出て行ったところだ。

右腕が再生され、盾を振るえるようになったガストールであれば、仮にステラと戦闘になっても対処は容易であろう。


ミラリスが死んだ際、ビレアへ死体を運ぶのをガストールに手伝わせたのだが…

その時のことは聞いておらぬ。

ステラの名を出した時にガストールは驚いておったが、あの二人の関係はどの程度のものなのであろうな。


さて、ミーナとデスメロディの問題は一旦は待ちの状況。

我を打倒する候補であるミーナと、候補ではあるが人間ではないために問題があるデスメロディ。

気にはなるが…もう1つの問題が残っておる。

カリスだ。


あやつは目的そのものが見えぬ。

ミーナを殺された上に、我を打倒する気がなかった場合、これ以上ないドラマチックな死をみすみす逃すことになる。

そういう意味で、脅威度はデスメロディの比ではない。


しかも、あやつは尻尾を見せぬ。

魔王軍や執行者に行方を探らせておるが不明のまま。

カメラコウモリで補足もできておらぬ。

我が直接その姿を見てはおるが…さて、あれはあやつの真の姿なのであろうか?

実は変装の類ではないか。

そう思わせる知略さを感じる。

底の見えぬ相手だ。


情報が足りぬな。

本当はガストールを探索に出し、デスメロディの身内として囮にしたいところであるが、ガストールはステラに書状を届けに行かせたところだ。

あの役目ができるのは、ミラリスと因縁があり、デスメロディの近親者であるガストールのみ。

どうにかカリスの件はこちらで対処せねばならぬ。

そうだな…


「誰か、デミデスタを呼べ」


部屋の外にいる見張りに伝達をした。

数分もすればデミデスタが来るであろう。

ここは素直に相談してみるべきかもしれぬ。

我とて、一人で考えて最適な答えがいつも出せる訳ではないのだからな。


「デミデスタ、参りました」


「急にすまぬな。1つ相談がある」


「相談ですか。ガストール殿以外に相談とは珍しいですね」


「今は四天王のトップはお主なのだ。当然であろう」


「そう言っていただけて幸せです。して、相談とは?」


「カリスの件は知っておるか」


「カリス…ゴーマの息子でしたか。ラボール城を滅ぼした犯人で、デスメロディを狙っていると執行者デストーンから聞いております」


「ふむ、おおよそ理解はしておるようだな」


「では、カリスを始末する方法をお悩みで?」


始末、か。

カリスは確かに不穏分子だ。

だが、始末するのがよいのであろうか?


不確定要素というのは不安を生む。

排除すれば安心感が上がるのは事実。

だが、不確定というのは、思いもよらぬ成果を生むことがある。

だからこそ、扱いに悩むと言えるであろう。


「いや、始末するかどうかすら、情報が足りなくて決められぬ」


「であれば、カリスの情報を集めるべきでしょうね」


確かにそうなのだ。

では、我が何故それをしないのかと言えば…


「カリスは底が知れぬ。探れば探っていること自体を察知される可能性が高い」


「察知された際、何をするかも情報が足りず不明。故に動きずらい、ということでしょうか」


「うむ。とはいえ放置もできぬ。せめて居場所が掴めれば…」


「カメラコウモリで探知はできないのですか?」


「補足できたという報告は受けておらぬ」


「カメラコウモリで補足できない…とすれば、その理由は2つですよね」


「補足されないように動いておるか、補足されたカメラコウモリを始末しておるか」


「はい。カメラコウモリはそれなりに数がいます。完全に補足されないように動けるとは思えません。つまり、不自然にカメラコウモリが始末されている経路があるはずです」


成程。

姿を捉えることはできぬが、それ故の痕跡が残っている可能性があると。


「デミデスタよ、素晴らしい仮説だ。至急、カリスが居た付近のカメラコウモリの殺害数と殺害範囲を確認せよ」


「は。今すぐ」


デミデスタは部屋を出て行った。

ガストールの右腕として四天王の3番手を長年勤め、ガストールが引退後は四天王のトップとなったデミデスタ。

ミラリスに敗れたことに負い目を感じ、一度は四天王トップの座を辞退したのだが、ガストールからの説得によって、今の地位を受け入れた。

その忠誠心も、実力も、知性も、バランスの取れた素晴らしい部下であるな。


「戻りました」


デミデスタが思ったよりも早く戻ってきた。

随分と早いな。


「もう戻ったのか」


「はい。コラプティオは私にとっては長年住んでいた故郷のような場所。熟知しております故」


「そうであった。お主はラボール城の城主を長年勤めておったのだったな」


「はい。ですから、カメラコウモリの配置も把握しております。…魔王様がカリスと対面したコラプティオ神殿から、不自然にカメラコウモリが間引かれているルートがありました」


「そのルートを進んだ可能性が高いと思うか?」


「…罠の可能性を気にしておられるのでしょうが、それはないです」


「何故そう思うのだ?」


「罠であれば、このような方法をとらず、カメラコウモリに補足させて誘導した方がよいからです。罠というのは、気付かれねば意味がありません」


「それを見越して仕掛けた可能性は?」


「それもないでしょう。それはカリスの向かった先が証明しています」


カリスの向かった先が証明?

つまり、知れてはならない場所に移動をしておるということか?


「ふむ、移動先とは?」


「執行者事務所です」


執行者事務所!

デスメロディの痕跡を探りに来たか。

ミーナの元へ向かってる可能性も考えておったが、その前にデスメロディを洗う気であるか。


「だが、あそこにはデストーンがおるであろう?」


「いません」


「…いないと?」


「はい。デストーンは、カリスの捜索でコラプティオ神殿周辺を探索中です」


「つまり、それを認識したカリスは、今が執行者事務所に忍び込む絶好の機会と捉えたと」


「おそらく。とはいえ、デスメロディの行方に関連する物は何もないはずです」


本当にそうであろうか?

デスメロディの行方に関連した物が目的なのか。

あやつの最終目的はデスメロディにある訳ではない。

あくまで、ゴーマの死と、自分の生存理由を知ることだったはず。

いや、それすらも、何かの目的の通過点なのかもしれぬが。


「執行者事務所には執行記録が保管されておる。カリスの目的はそれであろうな」


「執行記録?ゴーマ執行の記録が目的なのでしょうか?」


「わからぬ。が、居場所がわかれば対処方法もあろうというもの」


「執行者事務所を襲撃しますか?」


「逆だ。放置せよ」


「放置?」


「そうだ。カリスは、まだ自分が補足されたと気付いておらぬ。であれば、次の移動も同じ方法を使うであろう。そうなれば、暫く追跡は可能」


「確かに」


「一番危険なのは、ミーナと…デスメロディとの接触だ。どのような化学反応が起き、我らにどのような影響が起きるかわからぬ」


そう。建前上は。

我としては、ミーナを殺害されては困るのでな。

ドラマチックな死という目的にどのような影響があるかわからぬ以上、少なくとも今のミーナと接触されるのは防ぎたい。


「デミデスタよ。カリスの行方を引き続き監視せよ。お主がやらぬとも、誰かに任せればよい」


「承知しました。諜報軍に探らせておきます」


「頼んだぞ」


「はっ」


「待て」


デミデスタが部屋から出ようとしたので制止した。

不思議そうにこちらを見ておる。


「お主に相談して正解であった。感謝する。これからも頼りにしておるぞ」


「……勿体なきお言葉、ありがとうございます」


「うむ。では行け」


デミデスタは深く一礼をすると部屋から出て行った。


カリス…少しは尻尾を掴めたのか。

それとも罠なのか。

完全に安心できぬ状況ではあるが、デミデスタが優秀なのは事実。

仮に罠であるのなら、この先のカリスの動きを見て、デミデスタなら気付くであろう。



これで、当面の課題は明確になった。

1つはデスメロディをどうするのか。これは大魔法使いステラに見張らせ、その中でどうするか考えればよかろう。

もう1つはカリスの動向。これはデミデスタに監視させつつ、ミーナと接触させないような対策を考える必要がある。

やはりガストールを向かわせるのが良さそうではあるが…


今は結論を焦る段階ではない、か。

ガストールがステラに書状を渡し、戻ってから考えるでも遅くはあるまい。


やれやれ、ドラマチックに死ぬというのも、つくづく大変なものだな。

知られることなく、状況を作るというのは大変なものだ。

ふふ、本当に、厄介であるな。



ふむ、今日はこんなものかな。


誰とも知れぬ者よ、また機会があれば聞くがよい。

それではな、何者かよ。


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