第1話④「書き出す、最初の言葉は...」
今日もよろしくお願いします!
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…
ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
グリスは、おそるおそる本に手を伸ばした。
(……なんで、こんな古そうな本、今さら抱えることになるんだ)
カバーはざらっとしていて、使い込まれた革の手触りが妙にあたたかかった。
なんだろう、こういうの苦手だ。やけに“大事なものです”って顔してる。下手なことしたら怒られそうで、手汗すごい。
(いや、怒られねぇけど。別に誰も怒らねぇけど)
そんなことを頭でぐるぐる考えながら、グリスは黒いペンをそっと握る。
緊張で、指が少し震えていた。
「……ボク、字、あんまり得意じゃないけど……」
ぼそっと呟いた声は、自分でもびっくりするくらい小さかった。
言ったあと、ちょっと後悔する。ツカサが「気にすんな」って笑うだろうな、って思ったから。
でも──
「関係ないさ。“書けるかどうか”じゃなくて、“書きたいかどうか”だろ?」
予想外にまっすぐな返事だった。
その言葉は、ひゅっと胸の奥まで入ってきた。あれ、何だこれ。ちょっと温かいぞ。
(……書きたいかどうか……か)
そんなこと、今まで考えたことなかった。
だって、誰もボクに「書いていいよ」なんて言わなかったから。
グリスは、ゆっくりと視線を落とした。
真っ白なページ。
(……まぶしいな。なんか、すっごく)
まるで「おまえ、何か言いたいことあるんだろ?」って、ページが問いかけてくるような気がして、思わず目を逸らしそうになる。
でも、逃げたくない気持ちもあった。
(……書いてみたい。ちょっとだけ)
そっと、ペン先をページに押しつける。
……押しつけて、何か変わるのか? いや、いいんだ。変わらなくても。やるだけやってみるって言ったんだから。
──その瞬間だった。
ギュウゥゥウウン……!
室内に、低くて奇妙な音が響いた。
ページの上に、虹の粒のような光が走った。まるで、どこかで誰かが「よし」って言ったような、そんな合図。
そして──浮かび上がった文字。
《はじめて、温かいごはんを食べた。》
《ぼくは、うれしい。》
その瞬間、空気が止まったように感じた。
誰も冗談を言わない。チャーハンの香りも、湯気も、すべてが止まったような気がした。
ツカサが、箸を持ったままぽつりと呟いた。
「……すげぇな、やっぱり」
レンジも、優しい声で続ける。
「これは記録する本だ。
グリス、お前の言葉や心の旅が──この本に残っていくんだ」
(記録? 旅? 何それ……)
よくわからない。けど、胸の中で、何かが灯った。
これまで感じたことのない、静かで、でも確かな“あたたかさ”。
グリスは、目の前のページをもう一度見つめる。
自分の手で書いたわけじゃない。
けど──それは間違いなく、“ボクの言葉”だった。
そっと、本を胸に抱きしめる。
(……ボクにも、“言葉”があるのか……)
それは、誰にも笑われない──
ボクだけの、“最初のひとこと”だった。
第2話①「神様兄弟のブートキャンプ:サバイバル訓練と、運命の発見」へつづく
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